管理者不在の民泊“駆けつけ要件20分”に明確な根拠なし!?京都市答弁できず(2017年11月8日/教育福祉委・保健福祉局・山本陽子議員の質疑メモ)

◆山本議員/新法に向けて「在り方検討会議」でこの間3回検討されてきた。一番の課題は、住民のみなさんの生活とどう調和させていくか。京都市のルールが問われている。検討会議の資料に各種団体の方からのご要望が添付されているが、住民の方からもいろいろご要望や陳情も出されている。住民の思い、新法の条例にこめてほしい願いも多数。在り方検討会議では、どこが住民の意見を受け止めた提案となっているか。

(→中谷・医療衛生推進室長)基本的には「宿泊施設と地域住民の生活環境の調和を確保していく」ということで検討してきた。意見の中では、様々な民泊による迷惑事象があるので、そうしたものをできるだけ起こさないようにルールをつくらしていただいている。どこがということではないが、基本的には「周囲の皆様に営業というのを十分理解していただく」「営業者も宿泊施設の営業にあたって周辺住民の方に十分配慮していただく」ルールをつくっていきたいと考えている。

◆山本議員/具体的に重要なものを考えると、住民のみなさんは営業者との協定書などをつくって、「地域住民の要望を営業の中で取り入れてほしい」というのが、住民との調和を図るうえで機能を果たしてきたと思う。この点についても「地域活動への参加・協力」を「努力義務」として提案され、「協定書の締結」も進めていくという姿勢は示されている。協定書締結がこの間、旅館業のところでは「要綱」という形で京都市は提案されているが、要綱だからあまり重視されないこともお聞きしたことがある。住民の方は「協定書を法的義務として求めたい」というご意見もある。私も住民の方の思いを受け止めれば義務化を求めたい。協定書締結を京都市が引き続き奨励するということであれば、条例上も明記していただきたいと思うがどうか。

(→中谷・医療衛生推進室長)宿泊施設の営業者と周辺住民がしっかりとお話し合いをして、お互い様の気持ちで営業していただくのは非常に大事なことかなと思っている。そのために営業に関して一定のルールをお話しいただいて決めていくことは、円滑な施設運営、地域との調和に役に立つものと認識。住宅宿泊事業法の施設についても、これまで旅館業法の施設について要綱で求めてきた取り組みが行われることは望ましいと考えている。条例の中に明記できるかどうかはまだ検討中だが、努力義務として今回、ルールのほうにはあげているので、そうしたものをできるだけ反映していきたい。

◆山本議員/提案されているルール骨子案の記載の仕方を見ると、「自治会や町内会への加入など地域活動への参加・協力」を「努力義務」と書いてある下に、「自治会等への加入や協定書の締結など参加協力に努める」と書いているので、「協定書の締結」も入れていただいたら一定効果はあるのではないか。住民の方からいろんなところからあがっているのが「協定書の締結をもっと義務化してほしい」という強いご要望。ぜひそれが法的義務ではないにしろ、京都市が独自ルールとして出す時には、条例上に明記されることが市民のみなさんの思いに応える一つの形にもなる。これは求めておきたい。

もう一方、住環境を守るための防衛策、先日配っていただいた京都市の「市民しんぶん」について少し聞きたい。内容見せていただいて、今の時期によく広報していただいたと評価している。住宅宿泊事業法が実施されるまでに「住民の方が自ら住環境を守る方策」、なかなかわかりにくい法律の制度なので、それをまずはわかりやすく大まかに住民の方にお伝えしたということで、何らかの対応ができれば、努力していただければできるのかなと。あとはこれが京都市も一緒になって応援して、地域住民の住環境守るために実現していけばいいなと思う。先日、党議員団のやまね議員も「建築協定」で町内を守るという事例も取り上げ「こういった広報をすべきだ」と言っている。「地区計画や建築協定などのルールがあります」「分譲マンションでは管理規約で民泊を禁止にできます」と、いま考えられる、条例以外の住環境を守る方策を住民の方にお示ししたということは評価している。前に私、「民泊に関する宣伝物を全てください」と言って全部チラシをもらった。そしたらその内容は全て業者さん向けだった。これだけ地域住民の方が民泊について困っておられるのに、住民の方の立場に立った広報物がないということに問題だと思って、「ないんだったら党議員団でつくろうじゃないか」ということで、パンフを作成し多くの住民の方に喜ばれた。本来、京都市が早くすべきと思っていたので、住民の立場に立った広報というのは、私は評価している。地区計画や建築協定、他の部署の管轄になるが、こういった方策で住環境を守るために京都市も支援していくということでいいか。広報を出されたお考えを。

(→中谷・医療衛生推進室長)違法民泊対策、本市は窓口設置をはじめ昨年来積極的に取り組みを進めている。ただ我々だけではなく、地域住民が主体的に動いていただくことも大切。来年6月の法施行を控え、それまでにお取り組みいただける中身を今回まとめてお示しをした。分譲マンションについては、各管理組合には8月に「管理規約の改正を行ってください」というご案内さしあげているが、そうしたものを含めて今回まとめてお知らせした。こうした取り組みについてはそれぞれの部署において行政のほうも支援をしていくということで問い合わせ先も記載している。そちらのほうに問い合わせいただいて取り組みを進めていただきたい。

◆山本議員/この宣伝物は市民しんぶんに折り込まれるだけでなく、区役所でもいただけると思うので、ぜひ目に届くところに置いて、住民の方の参考資料にしていただきたい。この中に京都市が目指す「適正な民泊のあり方」ということで、京都市の姿勢が述べられている。「安心安全は大前提であるため、原則として旅館業・簡易宿所の許可を取得していただきたいと考えています」と書かれている。このような姿勢はこの間答弁していただいているが、これが本当に実効性あるものとして京都市の独自ルールつくられていくのかがポイントになっていく。例えば、新法の中での規制内容見ると、区域を指定して日数制限かかるのは「住居専用地域」だけという提案。それ以外は新法のもとでの届出で営業が始められてしまうことになる。この点だけでは、旅館業許可を取得へ誘導するには不十分と思う。現実にそうなっていくために、京都市はどうしていくのか。その方策はどのように考えているか。

(→中谷・医療衛生推進室長)元々宿泊業というものには、短期で多くの方、不特定多数の方が滞在され、いろんなリスクがある。そうしたものをきちっとコントロールするために、旅館業法、あるいは施設について消防法や建築基準法などの法律で、しっかりとハード・ソフト両面を縛っていくというのがこれまでの法の枠組みだった。そうした中で、宿泊業に伴ういろんなリスクは管理できるということで、できれば従来の法の枠の内でやっていただきたいということで、原則として旅館業の許可を取得して、多くなっていただきたいというのが我々の立場。その中でどうしても旅館業許可が得られないけれども、我々が目指している上質な宿泊環境の整備に役立つようなものであれば、それについては今回の住宅宿泊事業法を活用して営業してただけたらいいかな、その代りそれに対しては一定の安心安全の担保を伴うような措置をしてくださいということで、全体のルールはつくっていこうかなと考えている。どういうってのはないが、いま検討会議のほうに示しているルール案、総体、パッケージとして、こういう方向に向かっていくという取り組みを進めたいと考えている。

◆山本議員/誘導するためにはその条件がつくられなければならない。それがちょっとなかなか見えてこない。区域を指定した日数制限も住居専用地域だけ。いま本当に民泊が問題となっているのは市内中心部の密集したところ。どう誘導されているかを見ると、「管理者の常駐」というところを、旅館業とは違って打ち出されているが、例外を見ると「駆けつけ要件」で例外が満たされる。いまの簡易宿所と同じ。いまの簡易宿所は「チェックインの時に対面で」ということで、それ以外管理者はいなくてもいいと、そしてそこに駆けつけるには「20分」ということで指導されていると、聞いている。新法のもとで提案されている条例の中身で「管理者が常駐」だと言っているにもかかわらず、例外はいまの簡易宿所、不在でいい簡易宿所と同じ20分でいいというのは、論理的な整合性がないと思っているが、この駆けつけ要件の20分というのはどこから出てきた基準なのか。

(→中谷・医療衛生推進室長)ちょっと誤解があるかなと思うが、20分というのは、旅館業法の施設、簡易宿所について「町家を活用した施設については玄関帳場の設置を求めない」、その代りに駆けつけ要件「連絡あれば速やかに駆けつけるように」という形で規制をかけている。その「速やかに」の基準として、いま一応「20分以内に駆けつけられる体制を取ってください」ということで、許可を与えている。この駆けつけ要件については、いまの20分はあくまで本市で取ってる基準だが、この20分をそのまま採用するかどうかというのはまた別の話。

◆山本議員/元々この「駆けつけ要件20分」というのはどこから出てきた基準でしょうか。

(→中谷・医療衛生推進室長)この20分については、宿泊者から「緊急事態である」というような連絡が営業者のところに飛んだ時に、駆けつけられる距離・時間ということで…、明確な基準というのはないが、速やかにということであれば、少なくともこれぐらいでは駆けつけられないといけないだろうということで20分という時間の基準が設けられたものと考えている。

◆山本議員/何か参考にされた「20分」ではないのか。20分で足りるというような判断の理由付けというのがとても曖昧だが。なぜ20分で駆けつければいいという根拠になるのか。

(→中谷・医療衛生推進室長)特に基準というのはないが…、速やかにというものを、きちっと実現するのに適当な基準というのはどれくらいかということで20分になったのかなと。30分では遅すぎる、10分では駆けつける事業者のほうが早すぎるというようなことではないかなと考えている。

◆山本議員/それではとても不十分だ。かなり「原則」と「例外」に差があると言わなければならない。宿泊営業される時に、宿泊者の方が、もし何かあった時に、すぐに対応できるというのが「管理者常駐」という原則の趣旨だと思う。その例外が「20分でいい」というのは、よっぽど常駐と同じくらいの何らかの、常駐でなくても同じくらいの要件でなければ「例外」は認められないと思う。論理的整合性が全くない、理由付けもない例外というのは破たんをしている。ぜひ20分より、少なくとも短くしなければ、不在でいい簡易宿所でさえ20分なんだから、それより短くしなければちょっと整合性が取れないと思うので検討を求めたい。

「無許可営業物件の取り扱い」について。「一定期間無許可営業を行っていない旨の宣誓書提出」を求め、届出要件だが、無許可営業を行っていないかどうかの確認がされるのか。京都市は違法民泊についてこの間調査もされているし、一定無許可営業の実態把握もされている。そういった情報との照合はされるのか。

(→中谷・医療衛生推進室長)今回は新しい制度が立ち上がるということ。住宅宿泊事業法の国会審議の中でも、「この制度が単にこれまでの違法民泊を追認するようなものにならないようにしてほしい」というご意見もあった。本市はこれまでから違法民泊対策、ご承知のように全力で取り組んできた。我々としてもその思いはひときわ強い。無許可対策に今後一層強力に取り組むとともに、そうしたなかで悪質な事業者が新たな制度の枠組みの中に入りこまないように、一つの工夫として、いま制約させるということをルールとしている。これが実効性を持つように、法律の範囲内で様々な工夫をしていきたい。

◆山本議員/ちょっとモニャモニャ言われたのでわからなかったが、法律の範囲内で工夫をするとのことだが、もしこの宣誓書が機能を果たすと言うなら、正直な違法民泊の営業者の方は「自分は宣誓書を出せないから届出の営業はできない」という帰結になる。違法民泊をしてたら届出要件を満たすことができないから営業できないということになる。ただ、違法民泊をしてて虚偽の宣誓を出した方は、その後違法だとわかったとしても営業を続けられるというのは、正直者がバカを見るような内容になってしまうと思う。このことがどうなのか。「宣誓違反にすぎないのであまり重い罰則は問えない」というような議論もされてたかと思うが、そうであるとしても、違法だから宣誓書は出せないと判断された方との均衡を図るべきだと考えるが。

(→中谷・医療衛生推進室長)先ほども申したが、悪質な事業者が新たな制度に潜り込むということがないように、我々としてはこうした取り組みをしっかりと進めていきたいと考えている。

◆山本議員/法制上様々な問題あるかと思うが、しかしこの間ずっと「違法民泊の根絶だ」と言ってきて、違法民泊の営業者が、この住宅宿泊事業法のもとでは、何食わぬ顔で届出さえすれば適法になるというのでは市民感情として納得できないと思う。だからこそ違法民泊の実態をつかんでこれが反映できるような形で対応していただきたいと求めておく。

最後に、条例化にあたって、先日の在り方検討会議でも、京都市としては、「政省令の内容が厳しい」としきりに言われて、条例での規制があたかも「困難」だというふうなお話があったが、しかし北村副座長が指摘されたように、「具体的に法律で委任されたのは制限区域と期間の定めだけで、それ以外の事項については」、何にも法律はこの定めをしなあかんとか「言ってない」と。「規定してはいけないとは言っていない」ということなので、「規定することは他の事項はできる」ということだ。この点、国交省の担当者にも聞いたが、そのように言っていた。「具体的に法律が委任した内容以外のことを国は拘束しているわけではない」とのこと。とすれば、条例の独自ルール、何が大切かということを今一度見直さなければならないと思う。この間、在り方検討会議でも最後に言われるのは、「訴訟を起こされたら対応できない」と、「営業権の侵害と言われた対応できない」と言われて「規制が厳しくできないんだ」と言われるが、守らなければいけない利益は営業権だけではない。住民の方の住環境を守る生存権を守れるかどうかだ。とすれば、「訴訟を起こされたらどうしようか」ということではない。もしこのルールによって民泊に火事が起きて、重要な地域に火事が広がってしまったらどうしようか、もしこの住宅宿泊事業法のもとで営業が規制できなくなって住民が住めないまちになってしまったらどうしようか。もしこの住宅宿泊事業法の営業によって犯罪の温床になる事件があったらどうしようか、そんなことになったら、京都市のまちは壊れてしまう、その汚名がつくられてしまう、こういった結果こそ危惧して、独自ルールをつくっていかなあかんと私は思う。条例化にあたっては、最後確認するが、具体的に委任された内容以外のところでは、国は規制をしているものではないと、住民の住環境守るための独自ルールをつくるべきだということを最後に求めて質問を終わる。ご答弁を。

(→中谷・医療衛生推進室長)有識者会議の最後に市長あいさつをさしていただいたが、その中でも申し上げてたように、本市としてはやはり地域の実情に応じた宿泊環境整備をしていきたい、それでなければ持続可能な観光というものは維持できないということで、法律を条例で補完して京都市の実情を踏まえた使い勝手の良い制度としたいという思いがある。国にもるる要望してきたが、結果として示された今回の法律・政省令については、我々思ってたよりもかなり自由度の低い厳しい、その意味で厳しい制度であったと理解している。その中で、法律の限界ギリギリのところで、しかも実効性をしっかり持てるような仕組みというものを法学者・弁護士、検討会議に入っていただいた委員・先生の方にもご意見うかがいながら、しっかりと検討を進めているところ。「訴訟で負けるのがなんや」ということだが、やはり負けてしまうとその条例の規制であるとか、条例そのものの実効性というのがなくなってしまうという部分もある。その辺り慎重に検討していかなければいけないと考えている。何度もご説明しているが、憲法上、条例は法令の範囲内でしか制定できないので、そうしたいろんな制限の中で、どれだけ我々が地域にの実情に応じた、我々の思いにかなったような条例を、ルールをつくっていけるか、しっかり検討進めるのでご理解いただきたい。

◆山本議員/最後、その法律の限界と言われてることの中身だが、具体的には「制限区域」と「期間」の定めが規定されているということ、それ以外は住民の住環境を守る、「騒音などの影響がある場合に規制できる」と言ってるわけだから、その範囲内では規制できるわけで、これと論理的に結び付けられる事情はすでに京都市にはある。何と言ったって、簡易宿所、違法民泊から生活環境、さらには騒音で被害を受けられている実情はあるので、これを規制する因果関係なり理由は既に存在する。なので具体的な規制はこの法律の中でできるということをあらためて申し述べて質問を終わる。

2017年11月8日【教育福祉委】保健福祉局/一般質問「住宅宿泊事業法と京都市の独自規制について」

(更新日:2017年11月08日)