ネーミングライツは「通称」を付けるだけの権利?その実態は・・・(2017年2月7日/くらし環境委・文化市民局・井坂博文議員&赤阪仁議員の質疑メモ)

2017年2月7日【くらし環境委】文化市民局質疑「美術館再整備工事の契約とネーミングライツの契約の締結」について

【井坂博文議員(日本共産党)の質問】

◆井坂議員/最初に工事落札者の決定について聞く。最初の入札が失敗して再入札した。京都市としては100億円の規模でと言われていたが、今回の再入札の予定価格はいくらか。

(→北村・文化事業担当局長)今回落札された入札予定価格は、税込みで101億5500万、税別で94億300万円。

◆井坂議員/松村組が93億でギリギリのところで落札した。第1回目の入札で130億から30億、3割も違うということで、見通しがどうだったのかという指摘をした。「基準を下げるということではないが、可能な限り、美術館の本来の在り方からいくらまで絞れるのか」ということでやられたが、今回外れた清水・岡野JVとの落札における決定的違いは何か。

(→北村・文化事業担当局長)質問の意図が十分くめないが、清水・岡野特定共同企業体は、108億という入札で予定価格を超過ということで、松村組が落札した。

◆井坂議員/金額はそうだが、落札にあたって金額だけを判断基準にしたのか、プレゼン的なものを踏まえて、京都市の描いている図面、絵柄との関係で何か違いがあったのか。

(→北村・文化事業担当局長)詳細は分析していないが、2社から入札があり、1社が価格超過ということで落札者が落札したということ。

◆井坂議員/予定価格よりも下で入れたところに落とすのは当然だが、安けりゃ安いほど良いということではない。結果そこに落札したが、京都市が描いていた美術館の基本設計の関係で、後で不具合が出てはいけない。最終的には2月市会で議決になるが、松村組の93億で確信をもっているのか。

(→北村・文化事業担当局長)1回目の入札に大きな開きが出たということで、契約課等と協力しながら、入札価格と本市の予定価格のかい離の原因を応札者等にヒヤリングをやったと報告してきた。そのなかで、文化財指定に向けたところや特殊な建物であるとか、「DB」ゆえにリスクを見込むようなことがあったと分析したなかで、2回目はそういうリスクをできるだけ排除して、応札していただけるような設計等をして応札、落札いただいた。この金額で工事していただけるもの。

◆井坂議員/それでは詳細は契約議案のときに行う。参考までに教えてほしい。松村組が本市の事業、公共施設で行った実例、あるいは全国的に美術館・博物館での実績はどういうものがあるのか。

(→北村・文化事業担当局長)松村組は大阪に本店を置く中堅のゼネコンで、これまで、京都の国立近代美術館、東京の国立新美術館、大阪の国際会議場等、最近では京都市第二卸売市場も受けている。

◆井坂議員/2月市会に間に合うよう、今答弁された中身、松村組の実績の資料をいただきたい。次に、京セラのネーミングライツの契約について聞く。美術関係者が先日、京都市宛に申し入れをされた。そして、京セラの社長は年頭の新春インタビュー・京都新聞の記事で「反対を押し切ってまでやる考えはない」「あとは京都市の判断だ」と言われた。この発言は重い。そういう発言や、美術関係者のこの間の発言を踏まえた上で、正式に契約を締結したのは、「反対を押し切ってまでもやる」ということを京都市が判断したと受け止めてよいのか。

(→平竹・文化芸術政策監)引用された京都新聞の年初の記事、京セラに確認すると、「京都市民を二分するような」と社長は発言されたが、「新聞記事にはそこがなかった」と聞いている。したがって、京セラさんとしても我々と同じように「市民を二分するような」意見が分かれているという認識ではなくて、そういう意味で粛々と契約を締結したということ。

◆井坂議員/「粛々と」とおっしゃったが、「二分している」ときに、2月の予算市会に契約として議案を出さないといけないので、その財源の裏打ちとして50億が必要だということで正式契約がやられたのが実際だ。「二分している」のであれば、もう少しそういう意見や声にも耳を傾けて、最終的な判断をすることも必要なのではないか。そういう思いはなしに、粛々とやられたと理解してよいのか。

(→平竹・文化芸術政策監)いろんなご意見の方がおられることは十分承知している。反対されている方が申し入れとか来られたときには、ちゃんと対応している。ただ、私どもの理解では、「ネーミングライツの撤回」という請願が市議会に提出され、この委員会に付託になったが、結果的には取り下げになったと、そのプロセス等を拝見していると、基本的には市民の代表である市会の先生方の間では基本的には「撤回すべきだ」という請願には賛成でない方がたくさんおられたと理解している。基本的には私どもは、全体として二分しているとは理解していない。

◆井坂議員/今の発言は重い。京セラの社長は「二分している」と言ったが、政策監は「二分していると思わない」と。議会は「ネーミングライツの撤回を求める」請願を否決はしなかったが、全体として状況を見て、請願者のみなさんが取り下げられたということで、議会としては「撤回」という方向ではない、それは少数だからと言われたが、そう言うと何も物事は始まらないし、動かないという点はしっかりと指摘しておく。

具体的な中身について。契約書のなかで、「通称」を本館、大展示室、中庭、新館、スロープ広場、日本庭園まで、すべての敷地のなかの施設を対象にして、なおかつ、「企業活動を情報発信するスペースとして提供」し、「展覧会、レセプション等のために施設を使用し」、「展覧会を鑑賞する機会を設ける」となっているが、言い方を変えたら、京セラの企業活動のために京都市美術館のすべての施設を使ってもかまわない、差し出すということになると受け止めてよいのか。

(→北村・文化事業担当局長)契約書の中で「情報発信スペースの提供等」とあり、大きく3つ「地域貢献活動、その他の企業活動を情報発信するスペースの提供」「展覧会、レセプション等のための施設の使用」「展覧会を鑑賞する機会」とある。あくまでも条文にもあるが前提として、「ネーミングライツの目的に基づき」「美術館の設置目的」「法令その他施設の管理」「来館者の安全の確保」「美術館に相応しい仕様等を勘案して」という大前提がついているので、「京セラのために美術館すべてを差し出す」という表現をされたが、そういったことではなくて、冒頭申し上げた3つのようなことをしようというのが今回の契約の趣旨だ。

◆井坂議員/京セラの社長が新春のインタビューで言ってるのは、「これだけのお金を出すからには、株主に理解してもらわないといけない」と、その分については京セラにとって役に立つように使わせてもらうということだ。それをせず50億出すのは背任になる。これは企業の論理で、ある意味当たり前かもしれない。しかし、今度の契約の中で、第8条でいうと、新しい美術館に「必要な範囲内で」「表示した看板及び案内標識その他物件等を設置する」と、「この場合にその費用は甲」つまり京都市が持つ。第9条では、京都市は「乙」京セラが新しい「美術館のネーミングライツの取得者であることの周知を図り、本件通称等の普及に努める」と。京都市が京都市京セラ美術館、京セラがネーミングライツをしたよというのをもっともっと積極的に宣伝すると。全部京都市の負担になっていく。そして、「展覧会等の催し物」において、「積極的に本件通称等をチケット及び広報媒体へ使用させるよう」にすると、「京都市京セラ美術館」という名前をいろんなところで使うというのが次々と出ている。これに含めて「レセプション」や「展覧会」をやるときに、優先的な特権を京セラが持って、京都市美術館を使うことができる。このことを、どれだけ市民に周知されているのかが大事な点だ。本館や新館、展示室だけではなく、日本庭園も対象になる。審査会が最終的に結論を出すというが、例えば日本庭園も京セラ日本庭園となるのか。そうやって全部京セラの名前が使えるということが今度の契約の中にある。そういうことが市民のみなさんに伝わっているのか。政策監は「二分してない」と言われたが、そういうことがきちんと市民に伝わったうえで、そういう反応として返ってきていると理解されているのか。

(→北村・文化事業担当局長)今回のネーミングライツパートナー募集に対して、京セラの応募趣旨のいの一番には、「創業の地である京都の文化への貢献とその地域に発展をしたい。日本を代表する文化芸術拠点のシンボルとして京都の発展につなげていきたい」という京都市美術館をはじめ、京都の文化芸術、地域振興に貢献、寄与したいのだということを強くおっしゃってる。一方で、株式会社という性格だから、株主等々への説明責任もあるということで、情報発信スペース等のこともあるが、その辺は京セラさんとして地域貢献と株式会社を十分バランスをもって臨まれるというのが、我々交渉しているなかで、肌で感じているところだ。

また、8条の看板とか、9条の周知は、ネーミングライツの契約と極めて本体の部分で、名前を付けた限り、そうした名称を付けた看板を付けるとか、周知、普及に努めるということなので、これはネーミングライツ契約の根幹のところかと理解している。

最後に、個別の施設名称はどうなるかわからないが、審査会にもかけて、ネーミングライツの募集要項でも「市民の皆様の御理解をいただきながら」「美術館の歴史的経過」市民のみなさんの「愛着を踏まえながら」進めて行くと、募集要項の段階でもうたっているので、そういうことも十分踏まえていただいて、個別施設の名称をご提案いただけるものと考えている。

◆井坂議員/今回の契約は2月1日付けでやられた。もう一方で、京都市のネーミングライツの実施要綱については、改正案が経済総務委員会に報告され、議論されている。改正案が決まるのはどういうプロセスで決まるのか。この新しい実施要綱と今回の契約というのは、後先でいうとどちらが先なのか。

(→北村・文化事業担当局長)今回のネーミングライツは、平成20年に策定された現の要綱に基づき進めている。今、行財政局で制度の見直しがされていることは承知しているが、今回の2月1日付けの契約は現在の実施要綱での契約だ。

◆井坂議員/今度の改正案で出されているのは、美術館のネーミングライツを検討する際の前提にはなっていないと。それでは角度を変えるが、この実施要綱の改定は、何が原動力で改正案が出てきたかというとこの美術館のネーミングライツのやり取りをめぐって、このままいったら、際限なくいくのではないかという懸念なども含めて議会で議論になってそこからされた。だが、その改正案を待つまでもなく美術館のネーミングライツを市長が決定し、今回契約した。それは古い制度要綱のもとでやるのだったら、この制度要綱は、何のために改正案を議論しているのか。

(→北村・文化事業担当局長)ご紹介の通り、この美術館のネーミングライツに関わって、議会の関与の問題等々が議会から指摘されたことに端を発して、今、行財政局で 要綱の見直しがされていると承知している。ただ、見直しの途中ということなので、現在は現要綱に基づいてネーミングライツを進めているが、要綱の見直し内容がまだ確定していないので、明確に申し上げられないが、現時点において2月1日付けのこの要綱は、現在の要綱に基づいて契約した。

◆井坂議員/それでは「ネーミングライツの基本的な考え方」は、現要綱と改正案とどう変わっているのか。

(→北村・文化事業担当局長)一つは、現要項は現行制度の目的が、主として「財源確保」にウエイトがおかれているが、現在の見直しの中では「施設の魅力向上」だとか、「京都の品位、品格、歴史性等を考慮するということを明確化」する。「対象施設」「対象企業」がどうか。「通称に使う名称にどういった条件を付けるのか」「審査の明確化」「市会の関与」「契約が長期の場合の不測の事態の対応」を視点に見直されている。

◆井坂議員/第3条、基本的な考え方はどう変わっているのか。

(→北村・文化事業担当局長)京都の歴史性やまちの品位、品格の考慮、市民の理解が得られるようにという条文が3条には加わっている。

◆井坂議員/旧要綱では何が消えたかというと、「本市の財産、事業等の本来の目的に支障が生じさせない方法により実施する」ということだ。これが削除され、先ほどの「京都の歴史性やまちの品位、品格の考慮、市民の理解が得られるように努める」となった。美術館の今度のネーミングライツと照らし合わせてみて、ここがなぜ変わったのか。

(→北村・文化事業担当局長)確かにそういう表現になっている。一方で、導入するにあたり、やはり美術館に寄せられる市民の愛着や歴史性を大事にしたいと思い、要綱の中にしっかり書き込み、「市民の皆様のご理解をいただきながら進めて行く」ということを要綱にはなかったが、美術館の募集要項には書き込んだので、そういったことを含めて新しい3条に反映されているものと理解している。

◆井坂議員/私はここに注目した。従来はいろんな問題点はある要綱だ。広告の機会を拡大するということで、文字通り企業のもうけのためにネーミングライツをやると受け取られかねないもので、これは削除された。しかし、第3条の「本市の財産、事業等の本来の目的に支障が生じさせない方法により実施する」という考え方から、実に抽象的な「京都の歴史性やまちの品位、品格の考慮、市民の理解が得られるように努める」となったのは、今、問題にされている京都市公有財産のあり方とは何なのか、この従来踏み込んでいた中身が、はしごを外されていると危惧する。「本市」を「美術館」に換えたら、「美術館の財産、事業等の本来の目的に支障が生じさせない方法により実施する」となる。これが外されて、「歴史性やまちの品位、品格」、非常に抽象的な概念で基本的な考え方、ネーミングライツの目的に位置付けられることはいかがなものか。これについての考察はあるのか。

(→北村・文化事業担当局長)第3条の改正の趣旨は、私も深く理解しているわけではないが、「本来の目的に支障を生じさせない」というのは当然のことであって、さらに加えて歴史性、まちの品位、品格、市民のみなさんの理解ということを大事にしていこうということ。新たな第3条においても、本市の施設等の公共性を考慮し、社会的な信頼性、事業推進における公平性ということも書いているので、より前向きに歴史性だとか、市民のみなさまの理解ということを書き込んだものと私自身は理解している。

◆井坂議員/今度の美術館の契約はどの要綱に基づいてやっているのかと聞けば、現要綱だというが、みなさんの思いは、この美術館の契約の取り組みを通じて、新しい要綱にも思いが反映されていると言われる。だとしたら、第4条で新たに「対象外とする施設」で、「市役所、区役所などの庁舎、学校、病院、市営住宅の他、ふさわしくないと判断した施設等」は、「事業の対象外とする」となっている。その具体的な中身で3つあるが、「市民生活に混乱を招くおそれがあるもの」「公平性・中立性を損なうとの誤解を受けるおそれがあるもの」ということで、「庁舎、学校、病院、市営住宅」「二条城」を対象から外しておいて、なぜ、美術館は対象になるのか。どこが違うのか。

(→北村・文化事業担当局長)第4条、新設されている項目で、対象外。深く第4条の策定趣旨を理解していないが、美術館のネーミングライツが、これにあたるものではないということで第4条が策定されているのではないかと私個人では思うが、一度、制度担当に意図は確認したい。

◆井坂議員/ここは経済総務委員会ではない。それは聞いてもらったらいいが、この実施要綱に基づいて今回のネーミングライツはやっているというのであれば、いま私が疑問を呈したのは、市民的にもそういう声なのだ。「市役所や学校、病院、市営住宅は対象外とするのに、なんで美術館は対象になるのか」と聞かれたときに、「私はわからない」と担当局長が言われたら、私はそのまま、そういう疑問を呈した市民の方に答えるしかない。美術館を責任持って管理しているのはあなたでしょう、みなさん方でしょう。なぜ、どこが違うのかは、きちんと説明を。

(→北村・文化事業担当局長)私がわからないと申し上げたのは、第4条の策定経過なり意図の部分で承知していないということを申し上げたわけで、京都市美術館のネーミングライツについては一義的に私が責任者なので、この間、経過、目的等々申し上げた通り、再整備を確かなものとするために、実施していくということで、京都市美術館についてはネーミングライツを対象として現在の要綱に基づいて進めているということ。

◆井坂議員/逆説的に言えば、美術館のネーミングライツは市民生活に混乱を招かない、公平性や中立性を損なうとの誤解を受けないと、みなさん方は言っているということだ。あらためて、なぜ、そのように言えるのか。

(→北村・文化事業担当局長)美術館のネーミングライツ導入について、さまざまな意見を聞く。昨日も団体の方と美術館とで意見交換の場を設けた。団体でなくても個人的にも周りの方から意見、感想を聞く。反対の方もあるし、賛成の方もいる。井坂先生から、過去の美術館への寄贈者にしっかり説明するようにとご指摘を受け、順次さかのぼって説明してきている。現在で11年間分までさかのぼることができ、平成17年度までの寄付者にこのネーミングライツの導入について説明しているが、「寄贈品を返してほしい」とおっしゃる方はゼロだ。こういったことも含め、一定お考えがあって反対の方もおられるが、丁寧に説明する中で寄贈品を返してほしいという方はゼロという状況も含めて、美術館のネーミングライツ、大きくは市民のみなさんに理解されていると認識している。

◆井坂議員/あなたの説明をうがって聞くつもりはないし、言うつもりはないが、ネーミングライツを推進するあなたが説明して、それに対して返せという人が一人もいなかったというのは、「はあ、そうですか」というようにしか聞こえない。申し訳ないけど。私らのところには、「返してほしいくらいだ」というふうに言った方の話が入ってきている。それは、出るところ、入るところで違うのかなと率直に思う。あらためて、今度の改正で抽象的だと私は言ったが、「京都の歴史性やまちの品位、品格を考慮し、市民の理解を得られるように努める」と、これは押しなべて、美術館のネーミングライツがこのようにちゃんと受け止められるようなものでなければならない。二分している反対のほうは少数だと言われるかもしれないが、本当に市民理解が得られるかどうかというのは、もっと真剣に時間をかけてやるべきではないかと、80数余年の歴史がある。これは京都の歴史性だと言える。3200点を超えるコレクションのなかで8割が寄贈品。これも品位であり品格だ。こういうものにしっかりとこたえた京都市美術館の名前が必要だ。私は今回のネーミングライツの正式契約の締結は、あらためて見直して、時間をかけて検討すべきだと指摘する。

【赤阪仁議員の質問】

◆赤阪議員/私自身が疑問に思ってること。ネーミングライツに関する契約書を見ると、「ネーミングライツとは何か」と表記しているのが、結局「通称名を設定することができる」ということ。そういう契約なのに、契約書の中身が、実際問題これはいかがなものかというものがある。いくつか指摘したい。

初めに、「通称名の設定」なので、一般的な契約は普通あまりないことだが、第4条2に「乙は本契約で合意したネーミングライツを第三者に転貸し、譲渡し、使用若しくは収益を目的とする権利を設定し、又は抵当権若しくは質権を設定してはならない。」と書かれている。一方で第8条の3、「乙は乙のグループ会社に対し」ということで、いろんな業務に関連して、「京都市新美術館のネーミングライツを有する旨を記載し」ということで、「前条及び前項において乙が許容される行為と同様の行為を行うことを承認することができる」と。乙が、つまり京セラが、全てどういうふうに使うかについては、子会社、グループ会社に対しては、全て許容することができるとなっているが、これについてはどのように考えているか。

(→北村・文化事業担当局長)京セラの募集要項に対する応募のなかで、「京都市美術館への貢献」「京都の文化芸術の振興」「青少年の健全育成」にも貢献していくということで、具体的に提案があったのが、「京セラのグループ会社が世界約40カ国に7万人の従業員」「この従業員を介して京都市美術館の周知や京都の文化芸術の振興に努める」といった提案もいただいた。そういったことを踏まえて契約書の中でも、4条の2項は第三者にということだが、第8条ではグループ会社は一体として京都の文化芸術の振興に寄与いただくということで定めたという経過だ。

◆赤阪議員/「契約者と第三者のグループ会社とは別」だと、これが通常の考え方だ。契約者を超えて、グループ会社、世界を股にかけて、その問題を利用することができると権利譲渡したといっても過言でないような状況が生み出される可能性がある。この点は疑義があるので見直していただきたい。

2点目に、第8条と9条の5。第8条には「京都市新美術館に必要な範囲内で本件通称等を表示した看板及び案内標識その他物件等を設置するものとする」「費用は甲が負担する」、京都市が負担するということだ。これは「必要な範囲内で」と書かれている。ところが、第9条の5には、「京都市内の道路標識及び京都市内を通行する交通機関の駅名・路線名並びに地図等のうち、甲が所管するものの表示における京都市新美術館の表記に本件通称を含めるものとし、」ですよね。なんで甲がそんなことをせなあかんのかなと。「甲が所管しない道路標識等についても関係機関に申し入れを行う等、本件通称が含まれるよう努めるものとする。この場合における費用については、乙は負担しない」と。だからなんでもかんでも、全部通称名の記載、道路標識、そういうものをすべて京都市の責任でやるということか。

(→北村・文化事業担当局長)8条の「必要な範囲内で」「通称等を表示した看板」「案内」等々、これは基本的に美術館の建物や敷地のなかに、「ここが京都市京セラ美術館ですよ」と表示する看板を指す。ただ、「たくさん付けてくれ」という声があってもいけないので、あくまでも京都市が判断する「必要な範囲内で」という表記を8条の1項では書いている。

9条5項は、京都市が道路管理者等として設置する道路標識、交通機関の駅名、路線地図、こういったもので京都市が管理するものについては、ネーミングライツ普及の一環、また、実際に利用される市民の方、観光客にも便宜をはかるという意味で京都市の負担において整備するということ。第三者等の設置されるものについても、そういったことがされるようにお話しかけをしていくということが9条5項なので、ネーミングライツの契約と一体となっていると理解している。

◆赤阪議員/これが「通称名の契約」と言えるのか。百歩譲っても、美術館の中の関係の名称については、サービスでちょっとは京都市がやりましょうというのはわかっても、関係の道路や、関係のない京都市の所管しない道路標識等についても「努める」、「甲及び乙の義務」の事項のところに入っている。こうしたものを義務付けされるということが、どうして一般的な契約内容として対等平等の契約になるのか。これはおかしい。この点は、京都市民の財産権の処分に関わることでありおかしい。このことはあえて指摘しておきたい。

3つ目に、5条の2、京都市美術館の「展覧会の開催状況等の概要について、乙に報告を行うものとする」と。これが対等平等なのか。それと、9条の6、「乙(京セラ)は、」ということで、先ほど、京都市の子どもたちの育成や、美術館の繁栄をはかるのだとおっしゃったが、だいたい、この9条6を見たら、京都市美術館への「来館を促進するための催し等」と書いてあり、もう企画も入っているわけや。こういうものも企画することも含めて、「環境やスポーツ等を通じた将来を担う青少年の育成に向けた取組」ということまで、この「通称名」を変えることによって、こんな中身まで入っていくのか。こういう具体的な京都市美術館の管理運営というのは、本来、京都市が行うと聞いてきたが、いかがか。

(→北村・文化事業担当局長)あくまでもネーミングライツ契約は、「通称名を付与する権利」ということ。京都市美術館の運営は京都市が責任を持ってこれからも続けていく。そういうなかで、5条2項で「開催状況等の報告」というのがある。その1項に、当然だが、努力義務として「著名な展覧会等を実施する」とか、京都市美術館に「相応しい機能水準」「評判」「名声」を「確保するように努める」と、ここに書かなくても当然私ども努めていくが、契約書上そういうったことを掲げたので、それを検証するためにそういったことの「報告」を掲げたということ。

9条の6項は、逆に京セラさんに対する努力義務で、グループ会社を通じた広報をしてくださいよとか、京都市美術館に来館者が増えるような取組をしてくださいよと、京セラさんに対する義務ということなので、何かこれでまたプラスして京セラさんに特典があるかのようなことではないので、ご理解いただきたい。

◆赤阪議員/京都市が独自にやるものだとおっしゃる、これは大事なことだ。企画や美術館のこれからの運営については京都市が、先ほどの契約時の京セラさんの言葉の中からすれば、すばらしい、世界に名だたる美術館をつくってほしいと、そういう企画をやってほしい、今まで以上に美術館が使われるようにしてほしいと言っているにもかかわらず、こういう形で京都市が企画したことについては報告する。乙の京セラのほうが情報発信で企画したら、それについては「事項等に努めるもの」となっているが、「これは京セラさんの努力の中身だ」という。それでは7項を見てほしい。「甲は、前項に掲げる事項に関し、乙の要請に応じて必要な協力を行うものとする」と。結局、京セラさんがやることについて、まずそれについて話を聞いて、協力して、企画をしてという形になってしまうのではないか。これが対等平等な一般的な契約関係なのか。「通称名」の契約が、こういう形で京都市美術館の中身や利用についてどんどん発展していっている。いわば、京都市民の財産であるものが「財産処分」につながっているのではないかと危惧する。こういう点でこの契約内容は見直してほしい。最後に、この間申し上げてきた美術館の工事中の団体や一般の美術館利用者の「代替え利用の保障」は、最終的にはどうなっているか、把握しているのか。

(→北村・文化事業担当局長)来年の4月から本館を3年間閉鎖せざるをえないということで、市民のみなさま、美術団体のみなさまにご迷惑をかけることは、非常に心痛く存じている。議会でも請願が全会派一致で採択されているということもあるので、現在申し上げることはできないが、引き続き代替施設、何らかの形で少しでも確保できるように、鋭意検討を進めている。

◆赤阪議員/具体的な状況がわかるものを資料なり、報告していただきたいが。

(→北村・文化事業担当局長)今、議会でご報告できる段階に至っていないので、そういう段階が来ればご報告する。

◆赤阪議員/この委員会で北村さん自身が「全力をあげて」この代替え利用については、保障するために「頑張ります」と決意表明をされたわけだから、工事期間中に美術館は閉鎖されても、実際に美術館を利用していた美術家の方たちや団体のみなさん、子どもたちも、そういう学校の関係者も含めて、日常的に活動しているのだから、その活動を止めるようなことはあってはならない。この点、何としても代替え利用施設については、きちんと保障していただきたい。(別館の)抽選会のときでも全年度落選したのが、一部欠席を含めて14団体あったのだから、最後の結末はどうなったのか、北村さんの決意はどう生かされているのかがわかるようなものを報告していただきたい。途中計画も含めて、団体のみなさんに、まもなく契約が終わったらなっていくわけだから、きちんと同時並行で進めていただきたいし、地元の足元が、京セラさんが言うように、市民のみなさんがこれまで以上に活動できる場所、そういうものを保障していただきたいということもおっしゃっているわけだから、しっかりとやっていただきたいが、最後に決意を求めたい。

(→北村・文化事業担当局長)本館工事中の代替施設の確保は、非常に大切な問題だが、くらし環境委員会で、全会派一致で採択されているという重みも踏まえて引き続き鋭意検討する。

◆久保議長/資料について理事者提出できるか。

(→北村・文化事業担当局長)今回は出せる状況ではないので出せる段階になれば、出すということで、今回、提出は見合わせていただきたい。

◆赤阪議員/じゃあいつ頃になったらそれが報告されるのか。

(→北村・文化事業担当局長)関係機関等々との調整もあるし、さまざまな調整もあるので、そういった調整ができて、ご報告できる段階になればご報告する。

◆赤阪議員/団体のみなさんは、井坂議員が8月の段階で申し上げたが、たいへん(値段が)高いところで利用せざるをえないという事態になっていることもあり、それが、団体の運営や美術家のみなさんの負担に関わっているということで、これは死活問題なのだということを認識していただきたいし、そういう点でのこの報告をしっかりと求めていきたい。

◆久保議長/井坂議員からの資料提出についての確認。

(→北村・文化事業担当局長)提出する。

◆久保議長/赤阪副委員長から要求された資料については、出せる時期になったら、出していただきたいということだがどうか。

(→北村・文化事業担当局長)今回は出せる状況にないので、資料の提出はできないというふうにご理解賜りたい。

◆久保議長/それは先ほど言っていただいた。出せる時期になったら出していただきたいという要求だが。その点どうか。

(→北村・文化事業担当局長)出せる時期になったら、資料という形がいいのか、報告か、何らかの形で情報を報告するようにする。

2017年2月7日【京都市会・くらし環境委】文化市民局/理事者報告「美術館再整備工事の契約とネーミングライツの契約の締結」についての質疑メモ

(更新日:2017年02月09日)