請願審査:美術関係者に渦巻く怒りの声!京都市美術館のネーミングライツは撤回を(2016年11月15日/くらし環境委・文化市民局・やまね)

◆やまね/えーと私はですね、あのーあらためて市民や、えー美術関係者のみなさんの声を紹介させていただきたい、というふうに思います。あのこの間たくさんの方がですね、意見を表明をされています。えーたとえば、市内で最も古いと言われている画廊のオーナー・男性ですが、「京都市美術館の一番の特色は、市民が寄付して作った市民の美術館ということです。その美術館に特定の企業名を冠するとは驚きです。その上、市民も芸術家も、作品を美術館に寄贈した人たちも知らない間に、事は決まってしまう。市民合意は大前提だと思います」、こういうご意見です。それから別のギャラリーのオーナー・女性の方ですが、「市内には芸術系大学をはじめ美術家団体や芸術を愛する市民が多数います。なぜ、その意見を吸い上げようとしないのでしょうか。経過もやり方も透明性に欠けます」、こういうご意見であります。それから市主催の公募展「京展」に関わっておられる日本画家の方ですけれども、「命名権売却は、公共の公立美術館として、またコレクションを持つ美術館として、日本全国でも皆無であり、恥ずかしい限りです」「関係する京展の委員会でも、美術館改修計画の資料を提示されましたが、命名権のことは何一つ説明がありませんでした。突如この問題が浮上し、あっという間に決まったことにあぜんとしています」。それから彫刻家の方です。「今回の問題で一番感じているのは、市民不在だということです。唐突に市が命名権を売却すると発表し、あれよあれよという間に相手先企業が決まってしまう。まず、美術館に関係している芸術家や市民、作品の寄贈者などに意見を聞くべきではないでしょうか」と、ま、こういったですね、怒りの声、それから「市民の声、芸術関係者の声を聞くべきだ」という意見が、いまも、後を絶ちません。このことをどう受け止めておられるでしょうか。

(→北村・文化事業担当局長)はい、あのー京都市美術館へのネーミングライツの導入につきまして、あのいま先生からご紹介がありましたとおり、あのー市民の皆様、あるいは関係者の皆様から、あのー賛否、たくさんのお声を寄せていただいてます。あのーいま先生からご紹介いただいたような、お声もいただいてますし、またやはりあの、市民の税金が安くなると、いうことで、あのー、賛成の声を寄せていただいている、いうこともございます。あのーこの間、えー、えー、くらし環境委員会、あるいは決算委員会で、あのーご説明申し上げてるとおり、この美術館、いま非常に老朽化して、新たな、えー、機能求められてると、いうなかでどうしてもこの再整備進める必要があろうかと、いうことがありますので、あのこれからも引き続き、あの丁寧に、みなさんにこのネーミングライツの、えー導入の趣旨を説明してまいりたいと、いうふうに考えております。

◆やまね/あのー、「賛否をたくさんいただいている」と、おっしゃられましたけど、「否」の部分が私は大きいと思います。で、何度もこの間指摘をしましたように、あのー京都市美術館はですね、昭和天皇の即位を記念して、当時の市民と企業がお金を出しあい建設されたという歴史的経緯があると。そして所蔵品の8割が市民・芸術家のみなさんからの寄贈品。で、この歴史と多くの方々の思いがつまった美術館に、一企業の名前を冠することが許されるのかと。市民によって作られて、市民、芸術家のみなさんの寄贈品によって成り立っている美術館ですよ。その当事者のみなさんが、納得をしていない。そして議会の関与なしに、名前を変えるというのは、やはり私は許されないと思いますがいかがでしょうか。

(→北村・文化事業担当局長)はい、あのー、ご指摘のとおりあのー、昭和天皇の、えー即位の記念と、いうことで、えー大変あの本市にとっても我が国にとっても大事な美術館というふうに思ってます。あのー皇室の歴史等々に詳しいお方からも、あの「よくぞ大切な美術館の再整備に踏み切ってくれた」と、いうふうな非常にあの賛同のお声も頂戴しておりますし、あのー寄贈者の方には、えー引き続きですが、あのこういった制度の趣旨も、えーしっかり説明をして、この私どもの大切な美術館をまた今後も、えー京都の、日本の美術館において、存在感を発揮するように、しっかり再整備を進めてまいりたいと、このように考えております。

◆やまね/あのね、何度もそういう話をされてもですね、あのーそういう話を聞いたうえで、市民や芸術家のみなさんが納得されてないんですよ。そこが、重大な事態だと私は思うんです。批判の声が、日増しに強まっている。で、私はですね、市民や芸術家のみなさんが、このみなさんのおかげで成り立っている美術館がですね、その当事者のみなさんが納得していないのにその名前を変えていいのかと、こんなこと本当に許されるんでしょうか。どうでしょう。

(→北村・文化事業担当局長)はいあのー、このことも何度かご説明申し上げてますが、あのー、正式な名称は京都市美術館のままでございます。えー美術館の運営も、私ども京都市が責任を持ってまいります。えー愛称として、50億円をいただく、えー代わりに、ネーミングライツという制度で、愛称としての、えー名称であることの十分ご理解を、関係者の皆様にも、えーご理解をいただきたいというふうに考えております。

◆やまね/ま、「正式な名前は京都市美術館だ」と、で、まあ先ほどは「よくぞ踏み込んでいただいたという声もある」と、おっしゃいましたけれども、それだったらなぜこんなに批判の声が渦巻いているのかと。で、私はいまの、もう何度も同じこと言われるんで、もうこれはいいですけども、あの結局ですね、市民や芸術家のみなさんが納得をすることよりもですね、結局「お金をどうつくるか」ってことが優先されていると。で、これは、私は京都市が、文化・芸術に対して、どういう姿勢で見ているのかと。このこと決定的な、私は問題だと思うんです。で、強く言っておきたいんですけれども、市民や美術関係者のみなさんが納得をされない、批判が渦巻いている、そんな文化政策がありますか。私信じられませんよ。あの再整備のね、「スピード」っていうことも言われますけれども、あのー工事の入札は不成立になってますから、その説明ももう破たんしてるんです。で、結局、ネーミングライツを何が何でもやろうと、こういうことで説明されてきた理由はですね、「11月議会に議案を出すためだ」ということで説明をされてきた。しかし工事契約がうまくいかなかったと。で、これだけ大きな声が上がっているわけですから、当然このネーミングライツをこの美術館でやるということの是非そのものをですね、数か月前の議論にもどして、やるということだって当たり前じゃないかと。なぜそれができないんでしょうか。

(→北村・文化事業担当局長)はいあのー、本件に関わりまして、あのー議会の関与の問題でありますとか、私どもどうしてもあの、11月議会に工事契約を提案したいと、いうことで、あのその見通しが甘かったと、こういったことについては先ごろ9月の議会で、全会派、えー、一致で、決議をいただいているところでございます。えー今後議会と十分な議論を行って、えー市民の信頼を回復するように求められております。えー十分そういうことを心して、えーこの美術館再整備を進めてまいりたいというふうに考えております。

◆やまね/やはり文化・芸術の問題というのは、私は、思想信条、政党・会派関係なくですね、あの、多くのみなさんがやっぱり心配されていることだと思うんです。ですからいまおっしゃっていただいたように、9月議会において全会一致でですね、「京都市のこれまでのやり方について、反省を求め、信頼回復を求める決議」が上がったと、思います。しかし、先ほどのお話も聞いておりましたら、本当に反省をされているんだろうかと、信頼を取り戻す決意があるのかと、疑問に思わずにはおれません。

で、先ほどから、ま、この間もですね、京都市美術館の歴史をね、「未来へ引き継いでいきたい」という話を、何度もされますので、その点で、関係者の声を紹介したいと思います。これもあのギャラリーのオーナーのお話ですけれども、「京都市は100億円の改修工事費のことをさかんに口にします。しかし、市はこれまで京都市美術館をどう扱ってきたでしょうか。学芸員は数人で企画展もままならず、作品の購入費も微々たるものと聞いています。こうしたことへの具体的な改善策は示されないまま、建物の大規模改修だけが先行しています。肝心の文化や芸術家を育てるという魂が入っていないのではないでしょうか」。あるいは、大阪教育大学名誉教授で国立国際美術館評議員の田中恒子という方がおられますが、この方はですね、現代美術の作品を約1000点コレクションされて、2009年に和歌山県立近代美術館にそれを寄贈されました。で、この方はですね、大阪市出身で京都府内に在住をされている。で、その方がなぜ、遠く和歌山の美術館に寄贈されたか。その理由をこう語っておられます。「信頼できる学芸員の体制があり、充実した企画展が重ねられてきたことなどが理由です。残念ながら、京都市美術館を寄贈先に選ぶことはできませんでした」「美術館にとって、今を生きる、これから出て行くだろう若手芸術家を育成し、作品を展示していくことは大事な役割です。京都市美術館にはそうした視点はありません。内実は伴わないまま、100億円の建物改修だけに追われて、命名権を売却するなど百害あって一利なしです」と、痛烈な批判です。学芸員も少なく、企画展もままならない、若手育成の視点もない。それなのに100億円で改修という話だけが先行して、歴史ある、市民がつくった美術館の名前が変えられようとしていると。こんなことで未来へつながっていくのかという批判なんですよ。この声をどう受け止めておられるんでしょうか。

(→北村・文化事業担当局長)はいあのー、先生ご指摘のとおり、そのーハードが老朽化してる、あるいは機能が足りないということに加えてですね、私どもやはり美術館非常に、あのー学芸員の体制が脆弱であると、えーいうこともあります。えー作品の購入予算も毎年微々たるもので、えー、という非常に、えーソフト面においても問題を抱えているというふうに思ってございます。あのー今回の再整備を機に、あのー当然京都市の財政状況等々もございますが、あのー現代美術も新たに、えー展示スペースつくります。えー学芸員の体制も、作品購入のえー予算も、何とか増やして、えー、ソフトもハードも冠たる美術館にしていきたいと、このように考えております。

◆やまね/えー、ある現役の美術館長の声も聞いております。「京都市美術館は昭和天皇も関わる美術館です。その美術館にネーミングライツを考えるということだけでも行政の質の悪さを世間にさらけ出すものです」と語っておられました。それからまた別の方は、「フランスの国立美術館、ルーブル美術館の命名権を売却するという話が出たら、フランスは世界中の笑い者になるだろう。京都市がやろうとしているのはそれに匹敵することだ」という声もございます。これだけ多くの批判が寄せられている。私は、このままではですね、手を上げていただいた企業にもマイナスの事態になるのではないか。このことも大変心配をしております。たとえば私、ルーブル美術館のホームページも見てみました。で、そうしますと、ルーブル美術館もですね、企業の支援を受けているわけですよね。で、しかし、これは、「より幅広い企業に支援してもらおう」という努力をされてるんです。企業名を冠するのは「基金」について。「基金について名前をつけてもいいですよ」ということになってる。それから「美術館の中に名前を刻む」ということをやっておられる。ですから、「美術館そのものの名前を変える」なんてことは、やっておられないわけです。で、大阪府ではですね、中之島にある国立国際美術館をダイキン工業が、財団をつくって支援をされています。それから兵庫県では、兵庫県立美術館を伊藤ハムが、これも財団をつくって支援をされてる。で、どちらもですね、企業名が付くっていうやり方ではありません。ですから私は、あの先ほど運営の、問題も言われたわけですけども、あの芸術、それから美術の分野をですね、企業のみなさんにどう支えていただくかということは、その方法についてはですね、今一度考える必要があるんではないかと、思いますが、いかがでしょうか。

(→北村・文化事業担当局長)はいあのー、ルーブルの例でありますとか、大阪や兵庫の例を先生から、おー、お示しいただきました。あの確かに、えー、企業が文化芸術を支える手法として、いろんな寄付であるとか、えーいろんな協賛とか、いろんな形があろうかと思います。ただ、今回私どもの場合、あのー見通しが甘いということでお叱りを受けまして、あの工事契約、不調ということになってございますが、非常にスピード感を要するなかで、えー100億規模の、えー工事、えー50億円の財源を集めたいと、こういうなかで、寄付・協賛等も募ったなかでの、えーネーミングライツと、いうえー選択でございます。えーそういった事情についても、十分ご理解賜りたいと思います。よろしくお願いします。

◆やまね/えーもう一つ、美術館の学芸員の方の声です。「たとえ愛称であっても、その名称に企業名などが含まれることになれば、市民の財産である収蔵作品を私企業の占有物として恣意的に利用することを自治体が認めるかのような印象を広く与えるものとなり、地方自治体の財産管理並びに運用責任に対して大きな疑義を広く一般に抱かせることになる」、こういう危惧を表明されています。こういう美術の現場におられるみなさんの声を、やはり真摯に受け止めていただきたい。えー横浜市ではですね、2008年2月に、横浜港に関する資料を収集・公開する博物館「横浜開港資料館」とですね、「市歴史博物館」への命名権導入方針が見送りとなりました。で、これは、資料の寄贈者から「公の施設だから寄贈したのに。一企業が運営していると勘違いされるような施設には提供したくない」と反発が出たためであります。芦屋市立美術館も市民の反対で導入がとん挫を致しました。こういう事例もあるわけですから、今一度考え直すべきではないでしょうか。どうでしょう。

(→北村・文化事業担当局長)はいあのー、再整備の必要性でありますとか、あの必要なスピード感等々、もう先生にもご理解賜ってると思います。あのーそういったなかで、やはりこれ私どもの京都市美術館、岡崎の美術館を何としても早く、えー再整備をして、えーまた新たな機能も付加して、えー美術愛好家のみなさん、えー市民のみなさんに、えー愛される美術館であり続けるよう、えー再整備を進めていきたいというふうに考えております。よろしくお願いします。

◆やまね/まあよろしくお願いしますと言われてもですね、あのー何度言われてもおそらく、この姿勢では、市民のみなさんは、美術関係者のみなさん納得されないんではないかと思います。あのーいま、見直しの決断をすればですね、これは私は大変勇気ある行動だと、京都の見識を示したと、大変大きな私は評価をいただくことになると思います。で、そうではなくて、市民や美術関係者のみなさんが、納得されていないにもかかわらず、この歴史と伝統ある美術館の名前を企業に売り渡せば、京都市政の文化行政に大きな汚点を残すことになると。絶対に私は許されないと思います。あらためて京都市美術館へのネーミングライツは撤回を求めて終わります。

*請願の取り扱い→全会派「留保」

2016年11月15日【くらし環境委】文化市民局/請願審査「美術館の命名権売却の撤回」

(更新日:2016年11月16日)