新規制基準に適合した高浜原発が事故をくり返す事態。どこに安全性があるのか。(2016年3月7日/予算委・行財政局・くらた共子議員)

京都市の防災危機管理に責任をもつ「行財政局」への質疑。高浜原発でくり返される事故について京都市の姿勢をくらた市議が追及しました。質問と答弁要旨を文字に起こしたメモ。

◆くらた議員/原発再稼働の問題について。高浜原発4号機で2月20日、ボルトがゆるんでいたということで、放射性物質に汚染された冷却水が漏れる非常に重大な事態が起こった。ところが総合的な点検をすることなく再稼働が強行され、わずかその3日後の2月29日に、発送電の作業中に緊急停止するという異常事態が発生。本会議では市長答弁で「原発を再稼働する場合、世界最高水準とされる新規制基準を厳格に適用して万全の安全性を確保するよう国に求める」と、おっしゃった。いまのこの事態というのが、万全の安全性が確保されているという認識か。

(→川崎防災危機管理室長)高浜原発4号機における冷却水漏れ、原子炉の自動停止、いずれも調整運転中だが、放射性物質を含む冷却水の漏えい、また、緊急停止にいたる事象が発生したということについてはまことに遺憾であると考えている。この放射性物質の放出量がわずかであったとか、あるいは放射性物質が放出されなかったとか、そういった問題ではなくて、関西電力はこういったトラブルがあったこと、そういった事実を厳粛に受け止めて、徹底した原因の究明、再発防止の対策に真摯に取り組んでいただく必要があると考えている。緊急停止については現在原子炉を停止し調査中だが、とくに冷却水漏れについてはボルトの締め付けが不十分だったと、極めて初歩的なミスであったと考えられる。こういった原発のように多くの人が運転に関わる巨大な施設での事故を防止するためには、組織としてはもちろんだが従業員一人ひとりにまで安全意識を浸透させることが必要であり、従業員教育の面からもしっかりと今後取り組んでいただきたい。再発防止に向けた取り組みを続けていただきたい。

◆くらた議員/るるおっしゃったが「万全の安全性確保」というものができているのかいないのか、はっきりと認識をお答えいただきたい。

(→川崎防災危機管理室長)「万全の安全性確保」として、世界でも最高水準と言われている新規制基準に適合すること、これを京都市としては、万全の安全性のまず一つとして考えている。何よりも優先して考えている。この基準は、福島の原発事故の教訓、あるいは国際基準をふまえて策定されたもの。すでに許可を得た原発に対しても最新の基準への適合を義務付けるバックフィット、また、シビアアクシデント、テロ、そういった場合に対処するための基準も新設した。これに加えて、厳しい我が国への自然環境への適合も求めている点などで世界最高水準と、原子力規制委員会で評しているもの。今回の4号機の事故にかかっては、原子力規制委員会が関西電力から原子炉が停止した際の詳細な状況、また、原因の報告を受けたのち、安全対策などを含めてさらに確認するとされている。まずはその結果を待つ必要があると考えているが、安全性を確保する基準としては、現在の原子力の規制基準によるべきものと考えている。

◆くらた議員/これだけ重大な事態がいま起こっていることに対しての答弁だが、実際に4号機を再稼働する際に、その基準とのかね合わせで合格点、お墨付きが出たということでゴーサインが出たと。ところがいまこういうふうな冷却水漏れが起こった上に、緊急稼働停止という事態が起こった。そもそも稼働の前提条件であった基準そのものがまったく信頼できないものだと考えるのが当然ではないか。いま市民の命・くらしを守るという立場に立つ京都市行政として、いまのこの事態に対して、安全確保されているという認識か。

(→川崎防災危機管理室長)たしかに4号機で相次いで事故が発生している。ただ原子力の規制基準については、先ほど申し上げたように大規模な放出、福島の事故をふまえての災害対応、または、国際的な基準をふまえての基準の策定となっている。今回の事故は放射線の放出量に関わらず重大なものではあるが、基準そのものの信ぴょう性が失われるものではないと考えている。

◆くらた議員/たとえば、原子力規制委員会はすでに寿命が40年を超える高浜1・2号機について、いまおっしゃった新規制基準に適合しているとの見解案をまとめている。動かしていいと。このことが、実際に基準というのが、いまどのようにあるのかということに対して、行政としてしっかり意見・見解を述べるべきだ。この間、規制委員会の田中委員長は「費用をかけたら技術的な点は克服できる」などと述べ、これまでまがりなりにも、過去に「40年というのは一つの技術の寿命としてはそこそこの長さだ」と言っていたにも関わらず、ここにきてまったく姿勢を転換している。これまで原則40年を超えて稼働させてはならないと言ってきたその基準そのものを形がい化させる、何とかして高浜原発1・2号機を動かそうという考えにのったもの。こういうことをやっていて4号機では先ほど言ったような事態になっているにもかかわらず、こういう規制委員会の規制基準に対して信頼がおけるという考えか。

(→川崎防災危機管理室長)原発の安全確保、これを第一として、私どもは新規制基準の合格を考えているが、原発の安全確保はハード面・ソフト面、両面にわたるもの。ハード面の基準に合格すればそれで終わりとは考えていない。ハード面・ソフト面、両面での基準、これが基準通り正しく運用されることで安全が確かなものになると考えている。事業者の関西電力はもとより、安全面での規制を担当する国においてもより高い安全性を目指して、さらに努力が必要と考えている。

◆くらた議員/安全が可能だとおっしゃる言葉はまったく理解できない。先ほども指摘した40年ルール問題。なぜこのようなことになってるか。その背景は現政権が定めた「エネルギー基本計画」にある。このなかで2030年の発電比率の目標値は「原発は20~22%」。ところが実際には40年を過ぎた原発を動かしてはならないと定められてきたこれまでの基準を徹底すれば、2030年代での原発の発電比率はせいぜい15%程度にしかならないというのが専門家の指摘。そうすると、この事実とのかね合わせでいけば、いまのルールの形骸化は、2030年の目標と定めた方向にどうしても持っていかなければならない、だから40年ルールは邪魔になっている、それを何とか乗り越えるために、新たな基準で特例を設けることができるというようなことが組み込まれてきたということ。しかしやっぱり今ここで、何かが起これば琵琶湖の水が即汚染される、そういう事態を含めて市民のみなさんが「どうなってるのか」と非常に不安を抱えている。京都市としてこの事態の中で、はっきり国や関西電力にモノは言われたのか。

(→川崎防災危機管理室長)老朽原発の再稼働に関して。関西電力は運転期間の延長を目指すにあたって、他の40年に満たない原子力発電所とは別に原子炉等の劣化状態を把握する特別点検を実施している。ただ、運転期間の延長というのは、あくまで通常の40年という制限を超えた特例。そういったことから国においてはいっそう厳格な審査をおこない、期限ありきで認可していくということではなく、安全の確保を第一として、万全の上にも万全を期すとともに、安全と判断した根拠、これを住民等にわかりやすく説明していただきたいと考えている。原発の再稼働については、本市では平成24年の市会決議を重く受け止め、原発のできる限りの早期の全廃にむけたエネルギー政策の抜本的な転換を国に求め、中長期的には脱原発依存を強く主張し続けているところ。この考えにはいささかも変わりはない。そのうえで、原発に依存しない電力供給体制が構築されるまでの間、やむを得ず再稼働される場合には、その必要性を明らかにし、新規制基準を厳格に適用し安全性を確保し、なおかつ、住民のみなさまにわかりやすく説明して、理解を得るよう国に求めている。

◆くらた議員/いまの答弁は、いま起こっていることの危機感との関係でも非常にかい離している。再生可能エネルギーへ転換をと言うが、それなら、特例であったはずのルールを固定化する動きに、はっきり意見を言うべきではないか。しかもすでに4号機がこういう事態になっていることからしても、京都市本体として関西電力にもはっきりモノを言い、国に対しても「こういう動きの中で市民の安全を守れないから自治体としては反対だ」という声をはっきりあげていただく必要がある。とりわけ小さな子どもさんなどをお持ちのお母さんたちからも、飲料水の安全はどうなのかという声がある。これも本会議で「浄化処置の強化をする」という答弁があったが、京都市のいまの浄水機能はセシウムと放射性ヨウ素だけを除去できるというもの。一番危険だと言われるストロンチウムなどすべての核種に対応できるものではないと認識しているがそれは事実か。

(→川崎防災危機管理室長)現在の水道水の浄水処理について。厚生労働省通知、こちらでは「放射性セシウムを除去する」とされているが、本市についてはそれに加えて放射性ヨウ素を本市の判断で追加して監視している。したがって、今ご指摘あったようなストロンチウムとか、そういったセシウムとヨウ素以外の他の核種についての浄水処理というのは想定していない。

◆くらた議員/それでは「除去機能がある」と言っても、まったく安全を担保できるものではないということ。合わせて、「いざという時の飲料水の確保についても真剣な対策を京都市はうってるのか」、そこまで市民的には厳しい批判の声がある。やはりいまこういう緊急事態が起こっていることに対して、国に対して、関西電力に対して、はっきりモノを言うと、このことをしっかりやっていただく必要がある。今の事態はけして安全などということはできない、異常な事態だということを指摘して終わる。

2016年3月7日【予算特別委】行財政局質疑メモ

(更新日:2016年03月09日)