家父長制を背景にした「ミソジニー」の根絶を(2025年4月8日/衆院総務委・たつみコータロー議員の質疑文字起こし)

◆たつみ議員/日本共産党のたつみコータローでございます。今日は「女性嫌悪」と言われる「ミソジニー」を背景にした暴力や脅迫、そしてそれらに対する政府の認識と対応などについて質してまいります。我が党の吉田あやか三重県議が、津市役所のトイレに生理用品が設置されていなかったことにふれ、「トイレットペーパーみたいに生理用ナプキンをどこにでも置いてほしい」とXで投稿したところ、多くの共感が寄せられる一方で、誹謗中傷も多数書き込まれました。そして、三重県の議会事務局に「いい歳して非常用ナプキンを持ち歩かない吉田あやか議員を殺害します」という文言のメールが、同じアドレスから1分おきに8000件超が送信されました。今も断続的に続いているということであります。日本共産党の三重県委員会にも送られてきている大量の脅迫メールの文言は、ここで紹介するには憚れるほどひどいものであります。病院や法律事務所などのメールアドレスを乗っ取って、なりすまして送り付けているということでありまして、卑劣で卑怯な犯罪行為と言わなければなりません。村上大臣、地方の議員が公共施設に生理用ナプキンの設置を求めて殺害予告される、あまりにも異常ではありませんか。いかがですか。

(→村上・総務大臣)ご指摘の件は報道により承知しております。一般論として申し上げれば、表現の自由のもと、主張は自由に行われるべきものでありますが、主張の是非に関わらず、人を傷つけるような誹謗中傷は許されないと考えております。で、総務省におきましては、今年の4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法の適切な運用に取り組み、引き続きインターネット上の誹謗中傷等の違法・有害情報の対策にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

◆たつみ議員/続けて男女共同参画を担当する副大臣、異常じゃないですか。

(→辻・内閣副大臣)お答えします。現在警察においても捜査が進めておられるものと承知しております。この本件について、一般論でご容赦願えればと思うんですが、こうした卑劣な行為は、いかなる理由であれ許されるものではありません。経済的な理由等でですね、生理用品を購入できない女性がいるという、いわゆる「生理の貧困」については、女性の健康や尊厳に関わる重要な課題と内閣府でも認識しております。地方公共団体が相談支援の一環として行う生理用品の提供を、地域女性活躍推進交付金により支援するとともに、地方公共団体における取組に関する情報提供を引き続き行ってまいります。

◆たつみ議員/吉田議員の投稿はですね、自らの経験に引きつけながら、社会問題として今ありました「生理の貧困」というものを提起したものであります。SNSのコメントには「近くにコンビニがあるので行けばいいじゃないか、買えばいいじゃないか」とか、「なぜナプキン設置に税金を使わなければならないのか」など、的外れなものも多数あります。「毎日」の記事によりますと、民間企業が2428人を対象に行ったアンケート調査によりますと、74%が「ナプキンが手元になくて困った経験」があり、95%が「商業施設や学校などのトイレに無料ナプキンがあれば利用したい」と答えたといいます。また、「生理が予定日と関係なく突然始まってしまう」「生理用品がかさばる」などの困り事も多く寄せられたとしております。

杉田水脈・前衆議院議員が「ナプキンを持ち歩くことは女子の嗜み」などとして自己責任論に転嫁をしたのも首をかしげざるをえないと私は思います。しかし「生理の貧困」というのは、国や自治体も取り組んでいく課題であります。政府も行政機関への生理用ナプキンの設置について調査をしております。拡大への支援も含めて紹介いただけますか。

(→辻・内閣府副大臣)はい、内閣府ではですね、地方公共団体が不安や困難を抱える女性に寄り添った相談支援の一環として行っている生理用品の提供を、地域女性活躍推進交付金により補助しています。令和6年10月時点で「生理の貧困」にかかる取組を実施している地方公共団体は926団体にのぼり、その中には独自の取組を進められている自治体も数多くあると承知しています。引き続き、地方公共団体が地域の実情に応じて、創意工夫をこらした取組を進められるよう、内閣府としても地域女性活躍推進交付金の一層の活用を促すとともに、地方公共団体における取組の横展開に向けた情報提供にも取り組んでまいりたいと考えています。

◆たつみ議員/今ありましたように、政府も推進している政策、これを言及してもバッシングをされたということであります。国際機関であるIPUの調査によりますと、「40歳未満の女性、少数民族出身の女性、未婚女性など、特定のグループが不釣り合いに高い割合で暴力に直面をしている」、また、「野党の女性議員は精神的暴力や性的暴力の発生率も高い」と報告をしております。これ内閣府の委託調査で「女性の政治参画への障壁等に関する調査研究報告書」というのが出されているんですけれども、ここでも議員活動や選挙活動において「ハラスメントを経験した」地方女性議員の割合は57.6%であり、これ男性32.5%よりもかなり多いわけです。で、その際、女性が受けた最も多かったハラスメントは、「性的もしくは暴力的な言葉(野次を含む)」、こういう嫌がらせなんですが、26.8%、つまり4人に1人の女性議員が、性的もしくは暴力的な言葉による嫌がらせを受けています。2番目は、「性別に基づく侮辱的な態度や発言」、これが23.9%です。ちなみに男性への「性的もしくは暴力的な言葉(野次を含む)」による嫌がらせは8.1%。男性への「性別に基づく侮辱的な態度や発言」は0.7%ですので、ほとんどないと言ってもいいわけです。

しかしそれにしても、なぜ、生理用ナプキンをトイレへ設置するべきだと、これを掲げることぐらいで殺害予告をされなければならないのか。私は背景には「ミソジニー」があると言わなければならないと思います。日本政府の文書の中に、この「ミソジニー」という言葉は見当たりません。しかし「ミソジニー」という概念は、今や女性差別や女性への攻撃激化を考える上で避けては通れないと思います。ちなみに「ミソジニー」というのは「女性嫌悪」などとも訳されております。本年3月10日に第69回国連女性の地位委員会における国連事務総長のリマークで「ミソジニー」という表現を使った部分っていうのを紹介していただけますか。

(→山本・外務省大臣官房参事官)お答えいたします。今年3月にアメリカ・ニューヨークで開催された国連女性の地位委員会開会式におけるスピーチの中で、国連事務総長は2回、この「ミソジニー」に言及しております。1つは、日本語で申し上げますが、「人工知能を含む新しいテクノロジーは暴力と虐待のための新たなプラットフォームの存在を許す余地を生み、ミソジニーとオンラインリベンジを常態化させている」という発言でございました。で、もう1つは、「世界中でミソジニーの達人たちは、力、自信、影響力を増している」という発言でございました。

◆たつみ議員/先日、イギリス内務省は、「過激なミソジニーを過激主義の一形態として取り扱う」と発表されたという報道もありました。このように「ミソジニー」に着目した暴力、性暴力、差別、これの分析と対策、この取組っていうのが、各国では始まっているわけであります。差別や暴力を作り出してるもの、そしてその背景にあるものを直視しない限り、処方箋は出てこないと思います。「ミソジニー」による脅し、暴力、差別の目的は、女性を男性の従属的な存在として置く、家父長制に基づいた社会システムに疑義を唱えて声を上げて行動しその規範を壊そうとする者を黙らせる、処罰するというものではないかと思います。ゆえに、「女性差別感情」とか「女性制裁感情」と「ミソジニー」が訳されることもあるわけです。ですから全ての女性が嫌悪の対象にはならずに、今申し上げたような、家父長制に基づいた社会システム、これに対して声を上げる、そういう者に対して女性嫌悪の対象になる。しかし逆に、そういう社会システムを温存させるそういう言動に対しては、女性であっても称賛の対象になっていくということであります。

内閣府に提案したいと思います。日本政府自身も、この「ミソジニー」に着目した研究・分析、そして対策が今もう必要になってきてるんじゃないですか。いかがですか。

(→辻・内閣府副大臣)お答えします。内閣府が昨年実施した男女共同参画社会に関する世論調査があるんですが、その結果では、社会全体における男女の平等感について「平等」と回答した者の割合は16.7%に過ぎませんで、男女共同参画を推進する様々な取組が未だ道半ばにあることが示されてます。委員ご指摘の「ミソジニー」に関しても、その背景には長年に渡り人々の間に抱かれている固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込みなどがあると想定されまして、その対策にあたっては、そうした思い込みへの対応が重要と考えてます。引き続き、固定的な性別役割分担意識等の解消に向けて、粘り強く取り組むとともに、男女共同参画社会を実現する上では、人々の意識に関わる問題が重要との問題意識のもと、効果的な調査・分析・対策のあり方について、今後とも委員のご指摘も参考にさせていただきながら、不断の検討を重ねてまいりたいと思っています。

◆たつみ議員/今問われてるのは、彼女を黙らせてきた、やはり家父長制であり、ここに未だにしがみつこうとしている政治だと私は思います。そこに目を向けない限り、本気の対策とはならないということも言っておきたいというふうに思います。

続いて、フジテレビの問題を取り上げます。フジテレビの元アナウンサーが中居正広氏から性暴力を受けた事案に関して、総務省は4月3日、フジテレビに対して厳重に注意した上で、フジが公表した人権コンプライアンスに関する対応の強化策について、実施状況を3ヶ月以内に報告することを求める行政指導を行いました。大臣、行政指導に至ったのはどのような問題があると判断したからでしょうか。

(→豊島・総務省情報流通行政局長)お答えをいたします。今ご指摘ありました今回の事案につきましては、フジテレビ及びフジメディアホールディングスが放送事業者及び認定放送持株会社として、本来有すべき公共性に対する自覚を欠き、社会的使命を十分果たすことなく、広告によって成り立つ民間放送事業の存立基盤を失いかねないばかりか、放送に対する国民の信頼を失墜させたものと考えております。また、今回の事案は、放送事業者による自主自立を基本とする放送法の枠組を揺るがすものであり、放送法の目的に照らしても極めて遺憾であると考えております。こうした背景から、4月3日付で、委員ご指摘ありました通り、両社に対して厳重注意を行い、その中で同社の人権コンプライアンスに関する対応の強化策の具体化については、4月中に国民・視聴者及びスポンサー等の関係者に対して、その内容を明らかにするとともに、総務省に報告を求めることとしたものでございます。

◆たつみ議員/この行政指導の法的根拠を示していただけますでしょうか。

(→豊島・総務省情報流通行政局長)今回行いました行政指導は、放送法第1条の趣旨に照らし、総務省設置法に規定されております、「放送業の発達改善及び調整に関すること」に基づき実施したものでございます。以上でございます。

◆たつみ議員/放送法第4条ではないということなんですね。で、女性を接待要員として扱う、そのありえない文化、性被害にあっても自らの社員の側に立たずに加害者の側に立つ卑劣さ、会社が守ってくれない、加害者が出世していく、本当に被害者はどんなに辛かったのか。しかし、こういう実態はフジだけではないと思います。大臣、第三者委員会報告書にもある通り、メディア業界自らがハラスメント・暴力は許さない、ジェンダーの視点で業界のあり方を見直ししていくべきだと考えますけれども、いかがですか。

(→村上・総務大臣)今回の事態は、委員言われるようにフジテレビのみならず、ネットワーク協定を締結している系列地方局の経営にも影響を及ぼしかねないばかりか、放送に対する国民の信頼を失墜させたものでありまして、ご指摘についてはこれまでの一連の人権問題も踏まえ、放送業界全体として取り組むべきものと考えております。で、そのため、日本民間放送連盟及び日本放送協会(NHK)に対しても、人権尊重、コンプライアンスやガバナンスに関する施策の実効性を確保するよう取り組むことを要請したところであります。で、同様の事態が再び生ずることのないよう、放送業界全体を上げて取組を進めてもらいたいと考えております。以上であります。

◆たつみ議員/この第三者報告書はですね、再発防止に向けた提言の中で、「被害者の多くは、加害者や周囲から自分のことを詮索され、特定され、報復を受けること、SNS等で誹謗中傷されることにも強い恐れを抱いてる」として、二次被害から被害者を守り抜くことを求めています。実際、中居氏から性暴力を受けたとネット上で特定されている女性への誹謗中傷は、目を覆いたくなるほど本当にひどいものであります。ここでもその背景には、私は「ミソジニー」があると言わなければならないと思います。

同時にですね、そもそもこの間の政府のハラスメントに対する姿勢も問われてると思います。ハラスメントや性犯罪は、人間の尊厳や人権を侵害する重大な犯罪であります。セクシャルハラスメントに対する刑事罰、民事救済の規定を持つ、そういう法律がない国は、OECD加盟国の中で今や日本とチリの2カ国とされているわけであります。日本では男女雇用機会均等法や労働施策総合推進法において、企業のセクハラ防止の対策、あるいは労働施策総合推進法においては、パワハラの防止対策を企業にも義務づけてはおります。しかし、ハラスメントを禁止する規定がどの法律にもないということが、こうした事態を繰り返してしまう要因になってるのじゃないかと、国連の女性に対する暴力撤廃宣言は「女性に対する暴力は、女性を男性に比べて従属的な地位に追いやるための社会的な仕組みとして最も決定的なものの一つ」と指摘をしております。ハラスメントや性暴力は、個人間のトラブルではなくてジェンダー不平等という社会の構造にこそその根があると言わなければなりません。政治の責任で、このハラスメントや性暴力の根絶を真剣に取り組む必要があります。

そこで確認します。ILOは2019年、「労働の世界における暴力とハラスメント禁止条約」を採択をして、ハラスメント禁止規定を含む職場でのハラスメント防止のために実効ある施策を含む法整備を求めています。これ一刻も早く、日本はこの条約を批准すべきではないでしょうか。いかがですか。

(→大隈・厚生労働省大臣官房審議官)お答えいたします。ご指摘のILO第190号条約につきまして、その趣旨は概ね妥当であると考えておりまして、その締結にあたっては、国内法制との整合性を確保する観点からの検討を進めてきているところでございます。

今国会に提出しております労働施策総合推進法の改正法案では、職場におけるハラスメント対策の強化として、職場におけるハラスメントを行ってはならないことを法文上明確化し、規範意識を醸成するほか、カスタマーハラスメント対策の強化、就活等セクシュアルハラスメント対策の強化などの内容を盛り込んでおりまして、このILO第190号条約の締結に向けた環境整備に資するものと考えております。

その上で、この条約の締結にあたっては、条約で定められている内容と今回の改正法案を含めた国内法制全般との整合性につきまして、さらに詳細に検討していく必要がございます。引き続き、関係省庁とも連携しながら、締結に向けた検討をしてまいりたいと考えております。

◆たつみ議員/だったら批准して国内法の整備を急ぐべきだということを申し上げたいと思います。家父長制を背景にした「ミソジニー」、これの根絶、性暴力の根絶、これを求めて、あるいは決意をして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

2025年4月8日【衆院総務委】生理の貧困/ミソジニー/フジテレビ問題について

(更新日:2025年04月08日)