万博来場者の命守る対策を(2025年4月15日/参院環境委・山下よしき議員の質疑文字起こし)

◆山下議員/日本共産党の山下よしきです。4月13日に開幕した大阪・関西万博の来場者の命と安全を守る立場から質問します。資料1に朝日新聞の記事も添付しましたが、万博開幕直前の4月6日、テストランの最終日、会場西側のグリーンワールド工区で、着火すれば爆発する濃度のメタンガスが検知されました。通報したのは我が党の寺本けんた守口市議で、元消防士でもある寺本市議は、携行していたガス検知器で、屋外の電気設備地下ピットの蓋、マンホールの穴に、ガス検知器の測定部を差し込んだところ、メタンガスの爆発下限界を超える100%LEL、5vol%の値を検知しました。政府、国際博覧会推進本部事務局に今日は来ていただいておりますが、まず2点、事実確認をしたいと思います。

一つ、4月6日、万博会場で、着火すれば爆発する濃度のメタンガスが検知された。二つ、それを発見し通報したのは我が党の守口市議、つまり来場者だった。この2点、間違いありませんね。イエスかノーで答えてください。

(→茂木・内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理)委員ご指摘の通りです。

◆山下議員/この記事中ですね、寺本市議が「客側から指摘されて初めて分かったのは本当に恐ろしいことだ」と話しているように、万博来場者の安全にとって極めて由々しき問題だと思います。実は今回、爆発下限界を超える100%LEL、5vol%のメタンガスが検知された会場西側のグリーンワールド工区は、昨年3月にトイレの建物建設工事現場でメタンガスの爆発事故が起こった工区であります。場所も非常に近いです。資料2に添付いたしましたが、その昨年3月の爆発事故を受けて、昨年9月、万博協会は、この「メタンガス対策について」とする会期中の安全確保対策を示しました。ここにはですね、「1.ガス濃度把握と安全確認の徹底」として、「会場内全域でガス安全管理について専門家の指導のもと、ガス濃度の測定方法、安全確認の体制を構築し、安心してご来場いただける環境を確保する」とあります。しかし万博協会は、着火すれば爆発する濃度のメタンガスを把握できていませんでした。ここに書いてあるガス濃度把握と安全確認の徹底が実施されていなかったことは明らかではありませんか。

(→茂木・内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理)お答え申し上げます。昨年の6月24日に博覧会協会が公表しました会期中の安全対策、今委員からもご紹介がございましたが、まずハード対策として、このグリーンワールド工区の建物に、機械換気設備やガス検知器を設置するということ、それから今回ガスが検出されました屋外の雨水排水電気設備等のマンホール等のですね、蓋の有孔化、穴を開けるということですね、こういう対策を実施することとしておりました。こうした対策については開幕前に全て完了しておりまして、人が入る可能性がある建物については、対策後、現時点において、基準値を超えるメタンガスは検知されておりません。

一方で、雨水排水電気設備等のマンホールについては、蓋を有孔化する、穴を開けるという対策を取っておりましたが、これについては、今回のように短時間で濃度が上昇することがあることから、結果的には当該地点においては十分な対策ではなかったというふうに認識をしております。

◆山下議員/はい、そうなんですね。この日も朝検知した時には、高濃度は観測されなかったと。で、昼に、3時ですけども、寺本議員が検知したら爆発下限界を超えているという濃度が検知されたということですが、それでは、そういう点では十分ではなかったということだと思います。ご安心してご来場いただける環境を確保したのは寺本市議だったと、結果的には、なるわけです。

で、さらに重大な問題があります。爆発下限界を超える100%LEL、5vol%のメタンガスを検知した寺本市議は、近くにいたスタッフにその旨伝え、責任者に言うよう要請しましたが、スタッフは「責任者に伝えはしました」という反応で、その後、火器の取扱いを制限する等の対応はなかったと言います。100%LEL、5vol%のメタンガスを検知したマンホールのすぐそばには、キッチンカーがあり、すぐそばのトイレには多くの人が行き交っている状隊で、これは非常に危険だと、このままではダメだと思った寺本市議は、消防がつめていると聞いていた防災センターに駆け込もうという考えに至り、そこに行こうとしましたが、防災センターの入口付近で警備員に制止されました。「これ以上先に進むためには許可証が必要です」と言われ、防災センターに駆け込んで直接消防にメタンガス発生の事実を伝えることができない状態でした。15時頃に高濃度のメタンガスを検知しましたが、非常に多くの時間を浪費して14時(16時)になって、これでは埒が明かない、このまま放置するわけにいかないと119番通報するに至ったと言います。これ極めて深刻な事態だと思います。

万博協会のこの「メタンガス対策について」では、「3.会場内の連絡連携体制の確立及び研修」として、「各施設管理者、事業実施者と、協会との間で、会場内の連絡連携体制を確立するとともに、現場で対応にあたる各施設運営スタッフ等への研修を徹底する」とあります。しかし、元消防士でもある寺本市議の報告は、昨年3月に爆発事故が起こりメタンガス発生の危険が高いこの工区で対応にあたるスタッフに、メタンガスに関する知識を習得し現場で的確な対応ができるような研修がなされていなかった。さらに、消防がつめている防災センターに非常事態を伝えようとした寺本市議が警備員によって遮断された。会場内の連絡連携体制が確立されていなかった。ここに書いてある会場内の連絡連携体制の確立及び研修は十分やられていなかった。絵に描いた餅になっているということではありませんか。

(→茂木・内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理)お答え申し上げます。4月6日のテストランの際の、これ警備員と今ご指摘あった市議さんとのやり取りでございますけれども、こちらについては私どもそういったやり取りがあることは承知をしておりますが、正確なやり取りについては確認ができておりません。ただ、いずれにせよですね、必ずしも適切な対応ではなかった、十分な対応ではなかったということは事実でございます。会場内の安全確保については、今回の事案も踏まえましてですね、現場の警備員やスタッフ等の対応も含めて、博覧会協会において万全な対応が行われるように指導してまいりたいというふうに存じます。

◆山下議員/はい、万全の体制だったらこういうことは起こらないわけですね。やっぱり十分じゃなかったとお認めになりました。私は今仰いましたけど、やはり来場者の安全確認、確保のためにですね、このグリーンワールド工区のスタッフ、それから防災センターの警備員を含め、会場内の連絡連携体制の確立及び研修が、どのようになされていたのか、やはりちゃんと把握する必要があると思います。そしてどう改善するのか。今回の経験を含めて。万博協会に報告を求め指導するべきではないかと思いますがいかがでしょうか。

(→茂木・内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理)今申し上げました通り、今回の検知を踏まえましてですね、博覧会協会が、これ専門家の意見を聞きながらですね、改めて安全対策に万全を期すものと承知をしておりますので、その点についてはしっかりと把握をしてまいりたいというふうに存じます。

◆山下議員/私これから改善するのは当然だと思うんですがね。もう去年の3月に爆発事故が起こった。その周辺でスタッフをしていた方が全く知識を欠いていたと。一体何をやってたんだと。どんな研修をやってたんだと。これやはり報告してもらわないと、ちゃんとした改善はできないと思うんですね。反省と共に。ちゃんとどうやっていたのかと、この研修、あるいは連携連絡体制、それをちゃんと確認する必要がまず前提としてあるんじゃないですか。

(→茂木・内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理)お答え申し上げます。博覧会協会が行っていた研修も含めまして、これまでの対応についてはしっかりと検証してまいります。

◆山下議員/はい。それでですね、私はやはり「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げながらですよ、こうして来場者の命と安全に真剣な考慮をはらい責任ある体制を構築しないんだったら、万博を運営する資格が問われると思います。

で、これまでの万博協会の対応を見ますと、メタンガスの危険性に対する認識が弱い、甘いと言わざるをえません。今日、消防庁にも来ていただいておりますが、「天六ガス爆発事故」について、概要を報告してくれますか。

(→鳥井・消防庁審議官)ご指摘の火災でございますけれども、昭和45年4月8日に大阪市において発生した火災でございまして、地下の工事現場におきまして、ガス配管より多量のガスが漏れ、爆発に至ったものと承知をしております。で、この火災によりまして、死者74人、負傷者411人、焼損面積1707㎡の被害が生じたものと承知をいたしております。

◆山下議員/はい、地下鉄工事に伴って都市ガスが吹き出して爆発したってことですが、確認ですが、都市ガスの主成分はメタンガスではありませんか。

(→鳥井・消防庁審議官)・・・・・・そのように承知をしております。

◆山下議員/資料3、4に、当時の新聞報道を添付いたしました。地下鉄工事現場、この資料4のほうですけども、で、起こった爆発事故ですが、地下鉄工事現場の上にですね、敷き詰められていた1枚の重さが0.4tある鉄板1500枚が爆風で吹き飛ばされて、群衆に大きな被害が出たということで、メタンガスの爆発の威力は凄まじいということが示されています。この都市ガスとは異なりますが、万博会場の夢洲1区は廃棄物最終処分場、2区は浚渫土砂や建設残土の処分場でいずれもメタンガスが発生します。環境省、1区と2区のそれぞれの特徴とメタンガス発生のメカニズムについてご説明いただけますか。

(→角倉・環境省次長)はい、お答え申し上げます。大阪・関西万博会場である夢洲地区は、昭和52年埋め立てを開始した埋立地域でございまして、4つの工区に分かれてございます。このうち今、ご質問いただきました、まず夢洲1区、これはグリーンワールドが位置するところでございますが、この夢洲1区は、一般廃棄物と産業廃棄物の最終処分場でございます。また、パビリオンワールドが位置する、ご質問ありました夢洲2区につきましては、浚渫土砂や陸上発生残土の埋立場所となっているところでございます。

で、また、メタンガス発生のメカニズムでございますけれども、廃棄物が埋め立てられている部分につきましては、埋め立てられた廃棄物は生物学的作用、物理科学的作用により、分解・安定化していく中で、微生物反応により、メタンガスを含む埋立ガスを発生させるものでございます。特に海面最終埋立処分場におきましては、埋立廃棄物の大部分が水没しており、酸素が存在しない環境下においてメタン生成菌により、廃棄物中の有機物が分解されメタンガスが生成されるものと承知してるところでございます。

◆山下議員/2区のメタンガスの発生のメカニズムは分かりますか。

(→角倉・環境省次長)お答え申し上げます。2区は浚渫土砂や陸上発生残土の埋立場所と承知しておりますけれども。基本的にメタンガスが発生する場合には、そこに有機物が存在している場合に、それが分解をされて出てくるものと承知をしております。従いまして、この分に有機物があればそれは出てまいりますし、それは有機物の量にもよりますし、あとはその時の環境によるものと考えております。

◆山下議員/2区は大阪湾に流れ込んだ浚渫土砂を処分する区域ですから、当然有機物含まれておりますし、実際に地下鉄の駅の付近からはメタンガスが発生しております。ですからね、メタンガスがね、確認ですが、こう発生する条件があるんです。このメタンガスは、いつどこで、どれだけの量を発生するかを予測することは困難だと思いますが、いかがですか。

(→角倉・環境省次長)はい、お答え申し上げます。この有機物、中に入ってるものが、安定化するには相当程度時間かかるものと承知をしております。従いまして、いつどこでどのタイミングでということについては、私どもとしてそこのところ正確に予見するのは必ずしも容易ではないと考えております。

◆山下議員/夢洲1区は、今、廃棄物処分場としてはどういう段階にあるか。設置、埋立の終了、廃止、どこにありますか。

(→角倉・環境省次長)はい、お答え申し上げます。夢洲1区につきましては、このパビリオンがあるエリアとは違うエリアで、まだ埋立処分が続行しているエリアでございまして、その廃棄物処分場としてはまだ廃止手続きに至っていないものと承知をしております。

◆山下議員/廃止でないだけでなくて、まだ、埋立が終了もしていないという区域でございまして、当然ながらメタンガスが発生し続けるところなんですね。従って、メタンガスが発生するのは当然でありまして、今、夢洲1区、グリーンワールド工区は、83本のパイプが地中から突き出して、メタンガスを排出しております。しかしそれだけで、全部捕捉するわけでは、できるわけではありません。そこで伺いますが万博推進本部に。マンホールの穴でですね、高濃度のメタンガスが検出された、電気設備のこの大きさですね、どのぐらいのスペースがあるんでしょうか。

(→茂木・内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理)お答え申し上げます。電気設備そのものの、地下ピットの大きさについて、私、今、現時点では、正確な数字を持っておりません。

◆山下議員/後で資料を提出していただけますか。

(→茂木・内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理)はい、確認をさせてご報告させていただきます。

◆山下議員/なんでこんなこと聞くかと言うと、やっぱりね、どれだけのガスが溜まっていたのか、ガスの容量は非常に重要なんですね。今手元に「物質安全の基礎」という論文、これ資料には添付しておりませんが、土橋律さんの「可燃性気体とその危険性」という論文見ますと、やはり「着火後形成された火炎は、爆発限界内の濃度の、混合器の中を伝播していくその時に、高速な体積膨張を伴うため、ガス爆発現象となる。燃焼可能な混合器の燃焼が完了すれば、ガス爆発現象は終了する」と。だからどれだけのガスがあるかによって、爆発の規模・威力が変わってくるわけです。だから非常に大きな空間にガスが充満していたとすると、それこそものすごい威力になりますから、危険度は増すわけなんですね。ぜひこれは公表していただきたいと思います。

兵庫県姫路市網干の「健康増進センター爆発事故」というものがありました。資料5に付けておりますが、「2010年3月25日、姫路市網干区網干浜の建設工事現場から爆発が起き、怪我人が出ていると119番通報があった」「工事作業中の男性4人が瓦礫の下に一時生き埋めになり重傷、男性5人が軽傷」「爆発したのは建設中の健康増進センター鉄骨2階建て1階にある温水プール廊下施設」「作業員80人が建設工事にあたっていた」「半地下の現場に作業員4人が入り配管に断熱材を巻く作業をしていた。断熱材の形を整える作業をするためにバーナーに点火したところ突然爆発したという」「爆発で温水プールの外壁が吹き飛び大幅に崩れるなどの被害があるという」ことで、資料6にはですね、「事故原因は、地中の廃棄物から発生した可燃性ガスに引火したとの見方が強まっている」「市が約80箇所のマンホールや床下を調べたところ、9箇所から高濃度の可燃性ガスが検出された」「濃度は測定機器の最大値で爆発の危険性が極めて高かった」「ガス発生の考えられる原因は埋立地の約2割を占める廃棄物だ。埋め立てた県によると1985年から99年にかけて下水道汚泥や建設廃材、焼却灰などが運び込まれた」ということなんですが、私これ99年までに埋め立てた廃棄物から2010年にガスが発生し、爆発事故を起こしたというところは非常に重要だと思うんですね。今の夢洲の状況に大変よく似ております。

そこで最後に提案があります。こういう教訓も生かしてですね、夢洲の万博会場、今からでもですよ、1つは全ての地下ピットに強制換気装置をつけること。2つ目、全ての地下ピットのメタンガスの常時モニターを行うこと。それから3つ目、会場全体にメタンガスの知識習得と技術を習得して訓練されたスタッフを配置すること、この3点、これはね、万博協会に実施させるべきではありませんか。

(→茂木・内閣官房国際博覧会推進本部事務局長代理)お答え申し上げます。今回の検知を踏まえましてですね、博覧会協会が引き続き専門家の意見を聞きながら、安全対策に万全を期すものと承知をしております。今委員からのご指摘のご提案もですね、博覧会協会に伝えてですね、対応を検討させたいというふうに存じます。

◆山下議員/時間になりました。最後に、環境大臣、この爆発事故がもし起こった場合の責任はね、色々万博協会とか大阪府とかありますけど、最終的には博覧会推進本部、本部長は総理です。環境大臣もメンバーです。本部長、総理にですね、今の議論を伝えていただいて、本部長の開会式の挨拶ではガス爆発のガスの危険性は一言もありませんでした。こういう危険性があるんだっていうことを、本部全体で認識を高めて万博協会指導できるように総理に伝えていただけませんでしょうか。(委員長/時間ですのでお答えは簡潔に願います)

(→浅尾・環境大臣)はい、国内外からですね、多くの方々の参加が、来場が見込まれる大阪・関西万博についてですね、安全安心な開催の実現は極めて重要であるというふうに考えておりまして、そうしたことについてですね、しっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。

2025年4月15日【参院環境委】万博会場でのメタンガス発生について

(更新日:2025年04月15日)