選択的夫婦別姓の導入を(2025年3月12日/衆院法務委・本村伸子議員の質疑文字起こし)

◆本村議員/日本共産党・本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。選択的夫婦別姓について質問させていただきます。苗字と名前がセットの氏名は、人格権、人権の問題です。そのことは最高裁の判決の中でも明確になっているというふうに考えます。1988年2月16日の最高裁の氏名に関する判決をご紹介いただきたいと思います。理由の二行目「氏名は」から四行目「~と言うべきである」までご紹介をいただきたいと思います。

(→福田・最高裁判所民事局長)委員ご指摘の部分を読み上げさせていただきます。「氏名は社会的に見れば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時にその個人から見れば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するものというべきである」このように記載されております。

◆本村議員/はい、今の最高裁の判決のように、苗字と名前がセットの氏名は、人が個人として尊重される基礎、その個人の人格の尊重、象徴、人格権の一内容を構成するものと指摘をされています。名前だけよりも苗字だけよりも、高度に個人を識別する機能を持っているのが氏名です。で、苗字と名前は個人にとって別々のものではなく一体のものだというふうに考えますけれども、大臣のご認識を伺いたいと思います。

(→鈴木法務大臣)今ご指摘ありました、昭和63年の最高裁判決、ま、これ氏名を正確に呼称される利益に関する判断を示したものとしておりますが、氏と名について、夫婦同氏制度が合憲であると判断した平成27年の最高裁判決においては「氏が名と相まって個人を他人から識別し特定する機能を有するほか、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格を一体として示すものである」とされていると同時に、他方で、氏に名と同様に個人の呼称としての意義があるものの、名とは切り離された存在として夫婦及びその間の未婚の子や養親子が同一の氏を称するとすることにより、社会の構成要素である家族の呼称としての意義がある」と、判上されていると、承知をしてるところであります。

◆本村議員/はい、個人にとって苗字と名前がセットである氏名は、苗字だけよりも、そして名前だけよりも、より高度な個人識別機能を持っておりますし、人が個人として尊重される基礎であると。で、2015年の最高裁の判決も言われましたけれども、そこでは苗字だけを取り出してですね、多数派意見は書かれているわけです。で、苗字と名前セットである氏名に関する人格権の議論は、土俵の外に置かれてしまっているのが2015年の最高裁判決だというふうに思います。

で、2015年の最高裁判決は、「家族の呼称として合理性がある」ですとか、「強制されるというものではない」というふうに言いますけれども、生まれ持った苗字と名前で生きたいと思う方々にとっては、夫婦同じ苗字は、そうやって自分の生まれ持った名前で生きたいと思っている方々にとっては、夫婦同じ苗字ということをとることは真の同意とは言えないわけです。ですから事実上の強制であると。で、一方だけが人格的な不利益を被る、犠牲を強いられる、これは平等とは言えません。泣く泣くアイデンティティの喪失感を伴いながら苗字を変えている現実があります。その多くが女性が背負っていると。

で、「法的な保護を受けたいなら苗字を変えるように」国が迫っているわけです。で、あるいはですね、名前・苗字を変えたくないということで、事実婚で法的保護がないままに過ごしておられる方々もいらっしゃいます。で、事実婚での不利益ですけれども、NPO法人のエムネット民法改正情報ネットワークの皆さんのシンポジウムの資料の中に、第2次の選択的夫婦別姓の訴訟の原告の方の資料がありましたけれども、そこには「事実婚では配偶者控除がない」とか、「結婚お祝い金の不支給」ですとか、「パートナーの生命保険の請求人になれない」ですとか、「不妊治療による助成金の対象外」ですとか、「医療の同意ができない可能性もある」「海外赴任の場合、パートナーは配偶者ビザを取得できない」ですとか、「住宅を購入する時ペアローンが組める金融機関が限定的で金利が上乗せされてしまうということもある」と。で、そして「法定相続人にはなれない」、そして「配偶者の死去後の様々な手続きができないこともある」んだと。事実婚ではこういう不利益が今はあるわけです。そこは是正するべきだというふうに思いますけれども、今あると。

で、カップル2人とも生まれ持った氏名で生きたいというふうに考える場合、法律婚を選んでも事実婚を選んでも不利益があります。法律婚を選べば自分が自分でなくなってしまう、そういう喪失感があります。そして事実婚を選べば法的保護がないと。こういう不利益を被ることはおかしいというふうに思います。選択的夫婦別姓を実現すれば、こうした問題は解決できます。

で、今年3月8日の国際女性デー、私も愛知のですね、ウィメンズマーチに参加をさせていただきましたけれども、今年は特にですね、選択的夫婦別姓を求める声が本当に大きかったんです。大臣への期待もですね、大変大きいわけです。「あすには(一般社団法人)」の皆さんや「新日本婦人の会」の皆さんや、個人の方々、選択的夫婦別姓を実現してほしいという女性たちの声が、本当に多かったんです。で、この法務委員会にもですね、本当に大きな、西村委員長にもかなりの期待が寄せられているというふうに思いますけれども、この法務委員会への大きな期待の声が寄せられて注目をされております。

で、資料お配りをいたしましたけれども、3月8日、国際女性デーの日本経済新聞の記事です。「結婚している働く女性の半数以上が別姓を選択したかった」と、調査結果が出ております。生まれ持った氏名で生きたいという方は、もちろん働いている方々だけではありません。こうした願いを踏みにじっていることに関して、大臣はどういうふうにお感じになっておられますでしょうか。

(→鈴木法務大臣)今資料で提示をいただきました、こちらの調査結果、こちらについて、報道は承知をしておりますけど、そのそれぞれの調査結果についてのコメントということは控えたいと思いますが、ま、こうした様々なご意見、実際の不利益等々もある、そういったことも私も十分承知をしております。そういった中で、ま、一方で、逆の立場からの様々なご意見もあるのも事実でありまして、そこは私どもとしては、この国会を中心にですね、国民の多くの皆様方で様々な情報も共有いただきながら、しっかりとした議論が進んでいくことを、我々としては期待をしたいと思っております。

◆本村議員/はい、日本は「世界最後の夫婦同姓強制国だ」というふうに言われております。女性差別撤廃条約16条では「締約国は婚姻及び家族関係にかかる全ての事項について、女性に対する差別を撤廃するための全ての適当な措置を取ること」とし、「特に男女の平等を基礎として次のことを確保する」というところで、「夫及び妻の同一の個人的権利、姓及び職業を選択する権利を含む」ということで書かれておりまして、明確にですね、この女性差別撤廃条約16条に反しているというふうに思います。だからこそ、女性差別撤廃条約の委員会、撤廃委員会からですね、4回も勧告を受けているわけです。ここも真剣に受け止めていただきたいというふうに思っております。で、加えてですね、女性差別撤廃委員会に関しまして、加えて一言申し上げておきたいのは、日本政府が1月29日ですね、国連の女性差別撤廃委員会の事務を担う国連高等弁務官事務所へ毎年拠出をしている、日本の任意拠出金の使途から女性差別撤廃委員会を除外すると、そして2024年度に予定されていた女性差別撤廃委員会の委員の訪日プログラムを見合わせるということを発表した。このことを私は撤回するべきだというふうに思っております。で、勧告の内容が日本政府の意に沿わないからと拠出をやめることは、国連の人権理事会の理事国として本当に恥ずべきことだというふうに思います。そのことも強調したいと思います。

で、次に、先ほども議論がありましたけれども、「夫婦が別の苗字だと子どもがかわいそう」という論についてです。まず確認ですけれども、日本社会の中には親と子、苗字が違う、そういう子どもさんは多くいらっしゃるということを先ほども議論がありましたけれども、親と子で苗字が違う子どもさん、どのようなケースがあるというふうに認識をしているのか、大臣に伺いたいと思います。

(→鈴木法務大臣)親子の間で氏が異なるケースということでありますけども、これ例示になりますが、例えば、父母が婚姻をしていない場合、あるいは、父母が離婚しその一方が婚姻前の氏に復氏をした場合ということもありますし、あるいは、氏の継承、氏の継承のために、例えばその養子に入ったとかですね、そういったケースについても親子の間で氏が異なるということで言えばあげられるかと思います。

◆本村議員/はい、先ほどもありましたけれども、外国籍の方と日本国籍の方が結婚するケース、事実婚のケース、未婚のケース、離婚したケース、再婚したケース、こういうことで様々な子どもたちが親子で苗字が違うという現実があります。で、大臣はこういう親子、子どもさんに関して、「苗字が違うということでかわいそう」という認識なんでしょうか。

(→鈴木法務大臣)あのま、そのま、これ一般論ってことで申し上げることになろうかと思いますけれども、個々のご家庭で当然状況というものは違うと思います。そういった中で、選択的夫婦別氏制度の導入に反対をする意見の中では、「家族が同氏となることで、夫婦家族の一体感が生まれ、この利益にも資する」ことを理由とするものがあるといったことも承知をしております。ま、ただ、その今のご質問にお答えをするとすれば、それは個々の家庭家庭で状況は異なると思っております。

◆本村議員/親と子どもが苗字が違う子どもさんはこの日本社会の中にすでに多くいらっしゃいます。その子どもさんを「かわいそう」と蔑む、侮辱する、その見方、感覚こそ問題であり、是正をされなければならないんじゃないでしょうか。大臣いかがでしょうか。

(→鈴木法務大臣)あのもちろん、その感じ方というのはそれぞれあると思いますし、一概に、その外からですね、そのかわいそうだとか、そういったことを言うつもりはありませんけれども、それは当然個々のケースということで、おそらく違うのであろうというふうに思います。

◆本村議員/家族が親子が同姓であろうと別姓であろうと、まず前提となるのは、その身体的、精神的、経済的、性的暴力を受けることなく、個人として尊重され、個人の尊厳が大切にされること、これが子どもにとっての幸せの大前提だと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。

(→鈴木法務大臣)もちろんその点はご指摘の通りだと思います。ま、一般論ということになりますけども、子どもにとって、暴力を受けない生育環境、あるいは個人の尊厳の尊重等といったことから、これ極めて大事、重要なことであります。

◆本村議員/はい、ここのところが基礎で考えなければいけないというふうに思っております。で、新日本婦人の会の皆様が「選択的夫婦別姓に関するアンケート」を取られ、予算委員会でも質問させていただきましたけれども、今年1月の2週間の間に3979人の方の回答がありました。予算委員会の中で紹介したのは、30代の方「色々な場面で自分の名前を新しい姓で呼ばれることが続き自分が自分でないような気がして精神的に不調をきたすようになりました」「現在結婚13年になりますが、未だに自分が夫の姓であることに違和感があります」という声をご紹介をいたしました。で、今日は子どもの立場からの声も書かれておりましたのでご紹介をさせていただきたいというふうに思います。

20代の方です。「私の両親は私が生まれる前から事実婚の関係を築いていました。しかし数年前私が大学院に進学をする際の学費を工面するため、父が姓を変更し、法律婚を選択するという苦渋の決断をしました。この経験を通じて私は改めて夫婦の絆や家族のあり方について深く考えるようになりました。世間では選択的夫婦別姓制度に反対する理由として、夫婦が同じ姓を名乗らなければ絆が薄まりやすいといった意見がよく聞かれます。しかし、私の両親は事実婚の間も法律婚に移行した後も私自身や周囲から見ても理想的で仲の良い夫婦と評され続けています。一方で、法律婚で夫婦同姓を選んだ方々の中にも、離婚に至るケースや夫婦関係が良好ではないケースが少なからず存在します。もし夫婦同姓が必然的に絆を深めるものであるならば、夫婦間で深刻な対立やDV、離婚といった問題は起こらないはずです。事実、夫婦の絆の強さや関係の質は、姓の統一といった形式的な要素よりも、お互いの信頼や尊重、コミュニケーションといった本質的要素によるものではないでしょうか」というふうに言われております。こうした意見について、大臣どのようにお感じでしょうか。

(→鈴木法務大臣)あのま、今ご指摘のようなですね、本質的な様々なとおっしゃいましたけれども、色々そういったことが、夫婦の絆であったり、家族の絆ということに寄与している、ま、それは当然そういった面があるのは、これ当然のことというか事実だろうと思います。で、その一方で、家族の一体感、あるいは子どもへの影響などの観点から、家族の間で氏が異なり得る制度に懸念を持っていらっしゃる方がいらっしゃるのもまた事実であろうと思います。まさにそうした双方の考え方、これはあるのは事実でありますから、そういった中で、ぜひ国会を中心にですね、あるいは国民の幅広いところでご議論いただきたいというのが、今の政府の私どもの立場でございます。

◆本村議員/はい、もう散々議論はずっとされ続けているわけですけれども、やはりそうしたいろんな疑問をですね、払拭しなければいけないというふうに思っております。日本弁護士連合会の皆さんの資料の中にも、選択的夫婦別姓全国陳情アクションによる座談会の際にですね、両親・親子の姓が異なる家庭の子どもさんから「いじめられた経験もありません」という声や、「家族の一体感もあって幸せです」という声、「かわいそうという意見は的外れです」というような声が紹介をされております。

また、「選択的夫婦別姓制度が導入されれば、両親、親子は同じ姓が当たり前という意識も変わっていくでしょう」ということも書かれております。で、選択的夫婦別姓の導入は、個人の尊重を大切にする社会への一歩ですから、このことは子どもの将来に渡る幸せにつながるというふうに思いますし、カップル双方がアイデンティティを喪失することなく、いろんな不利益を被ることなく、1人1人の可能性を花開かせることにつながるというふうに考えます。選択的夫婦別姓制度、ある方は「夫婦同姓別姓選択制度と言ったほうが分かりやすいんじゃないか」というふうにおっしゃっていましたけれども、結婚する2人どちらの思いも尊重し、個人の尊厳と本質的平等を保障する、それが選択的夫婦別姓だというふうに考えますけれども、大臣いかがでしょうか。

(→鈴木法務大臣)あのま、ご指摘のようにいわゆる選択的夫婦別氏制度は、現行の夫婦同氏制度に加えて、夫婦が望む場合には結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認めている、そういった制度であります、と象徴しております。まさに我々として考えていかなくてはいけないことは、やはり、それぞれの1人1人がしっかりとこう活躍をできる、そういった社会をしっかり作っていかなくてはいけない、そのために当然、障害となるようなことについては解決をしていかなくてはいけないと思いますし、そういった様々な困難がある実態もあろうと思います。ただ、先ほど来申し上げておりますように、一方で、家族の一体感、子どもへの影響などの観点から、夫婦の間で氏が異なりうる制度に懸念を持ってらっしゃる方がいるのもまた事実であります。必ずしも私は氏の問題が子どもが可哀そうだという話にならないと思いますけれども、ただ、そういった中でぜひ議論いただきたい、それが我々の立場であります。

◆本村議員/はい、最高裁の判決ではですね、選択的夫婦別姓制度について、「そのような制度に合理性がないと断ずるものじゃない」と。「この制度のあり方は国会での議論で判断されるべき事柄に他ならないというべきである」というふうに書かれております。

で、もう1つ最後だけ申し上げたいんですけれども、この法制審のですね、選択的夫婦別制度の案はですね、戸籍を壊さないですよねっていうことを確認をさせていただきたいと思います。大臣。

(→鈴木法務大臣)この戸籍ということでありますけれども、戸籍を壊すのかどうかということでありますが、戸籍については、その本質的な機能、これは真正な身分変動の登録呼称であるところでありまして、平成8年度の法制審の答申に基づく選択的夫婦別氏制度が導入された場合でも、その機能あるいは重要性が変わるものではなく、そのことによって大きな問題が生ずるものではないと考えております。

◆本村議員/ありがとうございました。個人の尊厳が何よりも大切にされる制度の実現のために、ぜひ委員長も、そして大臣もご尽力いただきたいということを重ねて申し上げ、質問とさせていただきます。ありがとうございました。

2025年3月12日【衆院法務委】選択的夫婦別姓について

(更新日:2025年03月12日)