未成年(16歳・17歳)の個人情報も⁉自衛隊への若者名簿提供はやめよ(2024年9月26日/文教はぐくみ委・文化市民局・やまね)

◆やまね/私からは京都市が18歳22歳になる市民の個人情報を自衛隊に提供している件について改めてお聞きしたい。昨今、個人情報保護の観点から、学校の卒業アルバムなどにも住所などはもう載せられていないと思う。京都市が提供しているのは名前・住所・性別・年齢の4情報だが、これは個人を特定するための個人識別情報と言われる極めて重要な個人情報。まず確認したいのは、京都市がこれまで名簿提供した人数についてだが、2年前の決算議会での質疑では「平成30年度2万6601名分、令和元年度2万6596名分、令和2年度2万6345名分、令和3年度2万5858名分」との答弁があった。その後、令和4年度、5年度はそれぞれ何人分提供したのか。

(→長谷川・地域自治推進室長)令和4年度については2万5679人、令和5年度については2万5951人。それとちょっと補足だが、いま「4情報の提供」というふうにおっしゃったが、本市で提供しているのは住所・氏名の2情報だけなので、その点ちょっと訂正させていただく。

◆やまね/「4情報ではない」ということだが、しかし18歳・22歳になる方の名簿を提供してるわけだから4情報だ。男女も分かれてるわけだから。

それで今お答えいただいたが、延べ15万7000人ほどの名簿が提供されている。防衛大臣の依頼文書では「紙媒体や電子データ」という文言があり提供を求められている。ただ、自衛隊京都地本の依頼文書では「紙媒体(ラベル用紙)」で提供を求めておられる。そこで2点聞きたい。京都市が提供した名簿はラベル用紙だけで、これまで電子データでは提供されていないという理解でよかったか。もう一つは、電子データで提供していないとすればその理由は何か。

(→長谷川・地域自治推進室長)電子データではこれまで提供はしていない。ラベル方式で提供をしているのは、電子データよりも適切に情報の管理としては、より安全性が高いというか、管理の方法も定めて自衛隊とは協定を結んでいるところ。また、4情報については、生年月日と性別が残りの2情報だが、この情報については一切提供していないので、ちょっとその辺ご認識をしていただければと思う。

◆やまね/「生年月日は提供していない」とおっしゃられた。ただ、18歳22歳になる方の名簿を提供するわけだから、生年月日はなくても生まれた年は分かるわけですよね。そういう指定があるわけだから。何年何月~何年何月に生まれた方という指定があるわけだから、その情報を提供してるということは間違いないことだと思う。

いま「安全性」が、このやり方のほうが、ラベル用紙のほうが高いんだというお話だったと思うが、ただ、やはりラベル用紙で提供している限り、コピーされたら自衛隊の手元にデータとして残すこともできるじゃないかという点では、我々はその危険性はあると思っているが、ただやはり電子データで提供する危険性については一定お認めになっておられると思う。

京都市が名簿提供を行う以前は、自衛隊は住民基本台帳法に基づく「閲覧」を行って、手書きでそれを書き写していた。ところが、住民基本台帳法では「閲覧」はできても「名簿提供」はできない。個人情報保護法69条では「行政機関の長等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し又は提供してはならない」と定められているし、本人の同意がある時など以外はそれを「やってはならない」ということになっている。それでは自衛隊への名簿提供の法的根拠は何かということだが、よく言われるのが「自衛隊法97条1項」それから「自衛隊法施行令120条」とされている。それでお聞きしたいが、それぞれの条文のどこに、「市民の個人情報を自衛隊が取得できる」あるいは「名前」や「性別」や「年齢」、そういう「名簿提供」という具体的な文言があるのか。それともないのか。この点いかがか。

(→長谷川・地域自治推進室長)今まさにやまね議員ご指摘いただいたが、個人情報保護法第69条第1項に「法令に基づく場合を除き提供してはならない」と、こういう規定になっており、この「法令に基づく場合」というものに、この自衛隊法施行令120条、これが該当するということ。

◆やまね/私お聞きしたのは、自衛隊法97条1項や自衛隊法施行令120条が法的根拠とされているが、「その条文の中に『個人情報を取得できる』とか、あるいは『名簿提供をしてもらえる』とか、そういう具体的なことは書かれていますか」ということだが、いかがか。

(→長谷川・地域自治推進室長)もう一度法的な建て付けについてご説明させていただくと(やまね「書いてあるかどうかを聞いています」)・・・そもそもの考え方として、法令に基づく提供については認められるという、個人情報保護法の考え方があり、で、施行令120条はその法令に基づく場合に該当するということ。これについては、国の個人情報保護委員会からも、それに該当するという見解を示されてるところ。

◆やまね/もう1回お聞きするが、「法令に基づく」と、で、その法令が「自衛隊法97条1項」「自衛隊法施行令120条」と。その条文の中に、市民の個人情報を自衛隊が取得できるとか、あるいは名前とか年齢とか名簿提供とか、こういう具体的な文言があるかどうかを聞いている。いかがか。

(→長谷川・地域自治推進室長)自衛隊法施行令120条については、「防衛大臣が市町村長に対し必要な報告又は資料の提出を求めることができる」というふうになってるが、これが個人情報保護法に「法令に定める場合」というところに該当すると、そういう法的な建て付けになってるということ。

◆やまね/つまりね、書いてないんですよ、具体的には。今おっしゃっていただいたように、「防衛大臣が、必要な報告又は資料の提出を求めることができる」とあるだけ。自衛隊法97条1項のほうは「募集に関する一部の事務」とあるだけ。そこには「個人情報」という文言も、あるいは「自治体は求めに応じなければならない」ということも一切書いていない。国の通知のお話もしていただいたが、これも「可能である」とか、あるいは「特段の問題は生じない」という結論は書いてある。結論はね。しかしなぜそれが可能になるのかという、法の理屈、解釈については全く書かれていない。名簿提供について具体的な法的根拠はないということを我々改めて指摘をしておきたい。

それで次にいくが、京都府内では今年8月時点で、名簿提供している自治体が10、提供していない自治体が16。6割以上の自治体が名簿提供していない。和束町や井手町は以前は名簿提供していたが、住民から抗議があり、議会でも議論があり、現在は「閲覧」のみに変更されている。お隣の長岡京市では個人情報保護審査会が提供拒否を決めた。そこでお聞きしたいが、仮に自衛隊に名簿を提供しなかった場合、国から何か罰則や不利益を被ることはあるのか。

(→長谷川・地域自治推進室長)国からの罰則とか不利益ということについては、罰則はないが、不利益もないと思うが、ただその法的根拠はないということについては、法体系の中で定められていくものなので、一つの法律に全て記載されてないからといって、それが違うということにはならないということはご指摘をさせていただきたいと思う。

また、近年、大規模災害が頻発している中で、自衛隊、能登半島地震、それに続く水害とか土砂災害などについても迅速に派遣されており、9月に一旦引き上げて、また9月、水害発生した時には再度、速やかに送られてるという状況も見ると、市民の生命・財産を守る担い手の確保ということについては、そういう事務については、適切に実施するものであると、必要があるというふうに考えている。

◆やまね/今お答えいただいたように、罰則や不利益を被ることはないということ。日本共産党が7月に行った政府交渉でも、防衛省が正式に文書で回答している。「地方自治法により、国の職員は、普通地方公共団体が国の行政機関が行った助言に従わなかったことを理由として、不利益な取り扱いをしてはならないとされています」と。そして「防衛省としては、自衛隊法及び自衛隊法施行令に基づき、都道府県知事又は市町村長に対して資料の提出を求めていますが、これを強制するものではございません」ということなので、不利益な取り扱いをしてはならない、そして強制ではないということを、防衛省自身がこれは認めているということ。

それで、市民のみなさんの中には「自分の個人情報を渡してほしくない」という方もおられる。憲法13条で保障されるプライバシー権の中には、自己情報をコントロールする権利も含まれているとされているが、京都市では、名簿への記載を望まない方については「除外申請」の期間を設けておられる。そこでお聞きするが、名簿が提供される当事者の方には、除外申請ができること、そして、その除外申請の期間について、どのように周知をされているか。で、対象者全員に直接お知らせにはなっているのか。

(→長谷川・地域自治推進室長)現在、周知の方法については、本市のホームページ上において周知を図っているところ。個別に通知をするということは行っていない。

◆やまね/「ホームページ上での周知」で「個別にはしていない」とのこと。我々議員団の要求資料によれば、これまで対象者による除外申請は、平成30年度8件、令和元年度5件、令和2年度5件、令和3年度5件、令和4年度1件、令和5年度19件。「ホームページで周知」とのことだが、それでは除外申請について周知しているホームページはどれだけ閲覧されたのか。アクセス数は分かるか。

(→長谷川・地域自治推進室長)除外申請に係る受付期間が、例えば令和5年度なら、令和6年度1月23日~2月21日ということだが、月単位のアクセス数であれば分かる。1月2月の2ヶ月間のアクセス数は1202件となっている。

◆やまね/1月2月のアクセス数が1200件ほどとのこと。提供されている名簿は毎年2万5000人以上だ。ホームページで周知はされてるが、閲覧数は1200件ほどということなので、実際には対象者ご本人の方にはほとんど周知されていないということにならないか。

(→長谷川・地域自治推進室長)ま、1200件、多いと見るのか少ないと見るのかということだとは思うが、ホームページについては、私どもとしては1200件というのは、ある程度のアクセスが来てるのかなというふうにも思ってるところ。

◆やまね/いやいや、「ある程度のアクセス数」って言っても1200件でしょ。名簿提供してるのは2万5000人以上ですよ毎年。ということはほとんどの方は見られてないということじゃないか。

(→長谷川・地域自治推進室長)まあ、あえて見る意思がなくて見られていないのか、そこら辺の事情についてはちょっと把握をしていないところだが、1200件のアクセスがあるということについては、そのうちの先ほどご紹介いただいた数字としては19件の方が除外申請に結びついて、されてるということだが、必ずしも、その何て言うんですかね、見られた方が、全て申請されたいということでもないのかなというのはその数字からは見えてくるのかなと考えている。

◆やまね/政令市の状況を調べてみた。他都市ではどこでもこの除外申請の期間が4月1日以降まで。どんなに短くても次年度まで設けている。我々はそもそも名簿提供はすべきでないという立場だが、京都市はあまりに除外申請の期間も短すぎるのではないか。最低限、他市と同様、3月末まで、4月超えるぐらいまでは除外申請期間とするべきじゃないか。この点どうお考えか。

それから京都市自身が、この議会のやり取りの中で、「名簿を提供したくない、そういう人に案内を送っても応募はされないだろうから非効率」だというようなことも言われてきた。ならば、私は「個人情報を提供してもいいですよ」と同意された方の名簿だけを提供すればいいのではないかと、こんなふうに思うが、この点いかがか。

(→長谷川・地域自治推進室長)除外申請の期間については、本市においても1ヶ月ないし1ヶ月半の期間を設けて実施しているし、また、令和5年度からはオンライン申請という簡便な方法も導入をしているところ。

本人の同意については、法律に基づく適正な情報提供なので、本人同意というのは必要とされていないと認識をしている。

◆やまね/ホームページの閲覧数から見ればほとんどの方は知らないまま。「提供したくない方に案内を送っても応募されない」「非効率だ」と京都市自身が言ってきたので、事務の効率性という点からも、きちっと同意された方だけに送ればより効率的になるんじゃないかと私は言っている。

少なくとも、名簿提供の対象者全員に「あなたの個人情報が自衛隊に提供される」ということ、そして、「もしそれを望まない方がいるのであれば除外申請ができますよ」ということ、これを必ず通知、連絡、案内ぐらいはすべきじゃないのかと思うが。この点はいかがか。

(→長谷川・地域自治推進室長)本人への周知については、本市ホームページにおいて周知を図ってるところであり、引き続き適切にその方向で周知をしていきたいというふうに考えている。

◆やまね/「本市ホームページで周知」とくり返しおっしゃるが、見られてないわけだから。2万5000人の名簿を提供して1200件しかアクセスがないということは、周知できてないんですよ。これ非常に問題だと私は思う。

個人要求資料で頂いた京都市と自衛隊が交わした「個人情報の扱いに関する覚書」という文書がある。そこには、「募集にかかる啓発物を募集対象者(18歳及び22歳の市民)に配布する」とある。ここでちょっと気になったのは、「当該年度に18歳22歳になる方」ではなくて「18歳及び22歳に配布する」とあること。ということは、この啓発物は、誕生日が来た人に送られてるということなのか。でないとおかしいですよね。先ほど冒頭の質疑の中で「京都市は自衛隊に生年月日の情報までは渡していない」とおっしゃった。ということは、自衛隊の側ではこの人がいつ誕生日になるのかは分からない。ということは、郵送物が送られてくる時点では、17歳あるいは21歳、こういう方がいるのではないかと思うが、この点いかがか。

(→長谷川・地域自治推進室長)「覚書」のほうでは、募集対象者が2種類ありますよと、で、18歳対象者と22歳対象者がいるということで、そういう書き方になってるが、実際の提供の「依頼文」のほうにおいては、「何年何月何日生まれの方~何年何月生まれの方まで」と明確に指定されている。「覚書」のほうについては、個人情報の取り扱いについて定めるというところが主眼で、その前段として、その配布する業務を特定するためにそういう書きぶりをして、要は対象者がありますというような書きぶりをしてるということ。ここの覚書の建て付けとして主眼ではないところなんで、ある程度こう簡略に書かれてるのかなというふうには理解するが、より明確に書くんであれば、文言整理というような形で、翌年度の4月2日~翌々年度の4月1日まで、というような文言整理というのはあり得るのかなと思うが、この覚書の本体の趣旨には、なんですかね、それをこう左右するものではないというふうには理解している。

◆やまね/覚書の趣旨のお話もされたが、やはり覚書には明確に「18歳及び22歳の市民に配布する」と書いている。ところが実際には17歳や21歳の段階で郵送物が送られてくるとしたら、これは覚書に書いてあることとは違うことが現実に行われてるということなので、これはきちっとしていただく必要があるのではないかと思う。

それでもう一つ。国や自衛隊京都地本からの依頼文書は、毎年だいたい12月~2月頃に届いてると思うが、それを受けて京都市が名簿を提供しているのは、毎年いつの時点になるのか。平成30年度以降全てお答えいただきたい。

(→長谷川・地域自治推進室長)名簿の提供だが、平成30年度は(平成31年)4月8日、令和元年度は(令和2年)3月23日、令和2年度は(令和3年)3月23日、令和3年度は(令和4年)3月8日、令和4年度は(令和5年)2月20日、令和5年度は(令和6年)3月11日。

◆やまね/今お答えいただいたが、初めて名簿が提供された平成30年度、(平成31年)4月8日は、4月7日が統一地方選挙で、その翌日なので私もよく覚えてるが、その時を除けば、いずれも年度が変わらないうちに、早ければ2月中に、次年度に18歳22歳になる若者の名簿を提供してるということになる。するとどういうことが起きるか。「翌年度18歳になる方」については、名簿が提供される時点では少なくとも17歳以下、未成年ということになる。さらに今お答えいただいた2月20日に提供した令和4年度の場合だと、誕生日が2月21日以降に来る方は、その時点では16歳ということになる。つまり京都市は、16歳17歳、未成年の方の個人情報を、本人だけでなく保護者の同意も取らずに自衛隊に提供してる、この事実は間違いないか。

(→長谷川・地域自治推進室長)法令に基づいて適切に提供しているところ。

◆やまね/否定はされなかった。もう答弁は求めない。最後に問題提起的に申し上げて終わりたい。

厚生労働省は新規学校卒業者に対する職業紹介の意義について、次のように説明している。「新規学校卒業者の就職は、その将来を左右する重要な問題であり、学校における教育や、家庭、地域社会における社会的啓蒙の過程において十分な配慮が必要である。また、その職業紹介にあたっては、新規学校卒業者が職業に対する知識経験の乏しい事から、新規学校卒業者に対し適正と能力に応じた職業選択ができるよう職業指導を計画的に行う必要がある」(職業安定行政手引)。こういうように、高校卒業予定者に対する求人活動というのは、社会的にやはり未成熟である、そして未経験な生徒に対する保護や援助というものに大変教育的な配慮が行われてるということ。自衛官の募集事務についても過去にそうした趣旨の通達が1982年に出ている。ところが実際には、当事者も保護者も知らない間に個人情報が提供され、しかも学校も保護者も通さずに未成年の方に郵便物が届くということになっている。

もう一点指摘したいのは、自衛隊法52条では、隊員に「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努める」ことを求め、53条では「服務の宣誓」を行わせている。つまり、自己の生命、命を国家のために犠牲にするように、場合によっては命じられるということ。「服務ハンドブック」では、規律の基礎が「戦闘」にあることが記載されている。しかも自衛隊というのは24時間服務し所定労働時間という概念・観念もない。民間企業や一般の官庁とは全く違う勤務条件。こういう情報がきちっと未成年の方、あるいは若者に伝えられてるのかどうかという問題もある。

さらに加えて、自公政権のもとで安保法制が成立した、あるいは集団的自衛権の行使容認、そして安保3文書、こういうものが閣議決定をされる中で、日本の防衛とは直接関係のない海外の戦闘、戦争に動員される危険が今現実のものになっている側面もある。災害の問題いつも言われるが、こうした問題点は全く言われない。海外派遣から戻った方の中には自殺者も多数出ている。2年前の委員会で私は、自衛隊内部のセクハラ・パワハラ・隠蔽問題を取り上げたが、その際文化市民局は、「性暴力は基本的人権の侵害であり、許されるものではないと認識している」と答弁もされた。

今回の質疑で明らかになったが、京都市では保護者の同意もなしに未成年の名簿を提供しているという点もやはり重大だ。奈良県では訴訟にも発展している。これはやはり憲法13条で保障されたプライバシー権の侵害だと私は重ねて指摘したい。京都市として自衛隊への名簿提供は行うべきではない。私どもの考えを述べて終わりたい。

2024年9月26日【文教はぐくみ委】文化市民局/一般質問「自衛隊への名簿提供について」

(更新日:2024年09月26日)