企業の寄付に頼り切る「文化予算」でいいのか⁉(2024年9月25日/予算特別委・文化市民局・やまね)

◆やまね/「社会全体で文化芸術を支える」という「京都・文化ファンドレイジング戦略推進事業」全体の財源について。令和3年10月に「Arts Aid KYOTO」の制度が創設され、令和5年5月に「Kyoto Art Donation(文化芸術に関するオンライン寄付ポータルサイト)」が開設された。その他にも美術オークションもあると思うが、これらの取組で、京都市の一般財源は使われているのかどうか。あるいは、全て寄付で賄われているという理解でよかったか。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)いずれも一般財源の負担はない。寄付で財源を確保している状況。

◆やまね/いずれも寄付で財源を確保し一般財源は入っていないとのこと。私どもも企業等による文化芸術への寄付について否定するものではないが、ただ行政が、それを前提にした施策を展開するということは、企業等から寄付を集められる、あるいは集金力のある団体・個人にしか行政の支援が届かないということにならないか。「社会全体で支える」とおっしゃるが、行政の支援に大きな偏りが生まれるのではないかと危惧する。

文化芸術というのは、すぐに結果が出るものばかりとは限らないし、単純にお金を稼ぐことに繋がらないものもある。だからこそ文化行政の役割というのは、その底辺をどれだけ広げられるか、市民のみなさんの文化芸術活動をどうやって継続させていけるか、その活動の場をどう保障していくかが非常に大事なところだと思う。

そこで聞くが、この「Arts Aid KYOTO」導入後、文化財保護も含めて、文化芸術の関連予算について、一般財源での支出は増えているのか、減っているのか。この点はいかがか。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)ご承知のように、「京都市行財政改革計画」を策定した経緯もある。非常に厳しい財政運営の中で、一般財源をどう抑制していくかは、市全体の大きなテーマだった。この中で我々は、外部資金を活用することも含めて、予算の水準の維持確保に努めているということ。ですので、大きなトレンドとしては、一般財源の割合は低下をしているので、例えば、このご寄付だけではなくて、国の補助金、あるいは、ふるさと納税、京都全体としてやっている。ふるさと納税、外部資金の活用を図ってきている。

◆やまね/「大きなトレンドとしては一般財源は低下している」とのお話。国の話があったが、私もやはり国の補助金というか、国庫負担というか、それはすごく大事だと思っていて、やはり京都市の文化財だとか伝統産業というのは、京都市のみならず、この日本全体、国全体に関わることなので、もっとしっかり国が文化予算を充実させて、そういう京都の文化財を守っていくことができるようにすべきだという思いはもちろんあるが、やはり京都市独自の努力もいると思う。

いま「大きなトレンドとしては低下している」との話があった。これまでの予算にプラスして文化芸術予算が、このファンドレイジング、「Arts Aid KYOTO」によって、プラスされていくなら、まだあれだが、逆に一般財源は低下しているという話なので、文化芸術予算がやはり寄付頼みになって、そういう形で一般財源での予算が削減されていくということは、本来あってはならないのではないかという点は指摘しておきたい。

「Arts Aid KYOTO」における事業認定型の補助交付額の実績について、先ほど総額の話はあったが、年度ごとについてお聞きしたい。昨年9月の予算特別委員会では、令和3年度1158万円、4年度1億5074万円という答弁があった。令和5年度の実績と、令和6年度の見込み額、申請額がどうなっているのかお聞きしたい。それから、そのうち3割は京都市に入るので、この令和3年~6年度の事業認定額の交付額・申請額を合わせた額がいくらで、そのうち市に入るお金がいくらになるのか。この点お聞きしたい。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)事業認定型の令和5年度の実績だが、認定事業数は10件、補助金交付は約1億1400万円。令和6年度、現在進行形だが、先ほども答弁させていただいたが、支援予定、認定しているのは14件、今後事業者によって寄付獲得に努めていかれるので、支援総額は、当初予算1億4000万円に今回の2億3000万円加え、3億円を超える支援を最大で予定している。

それと今回寄付を獲得している令和6年度、これもちょっと中途の金額になるが、総額としては6億2000万円の寄付が積み上がってきている。6億2000万の寄付をいただく予定なので、大枠でこの3割相当が我々の文化施策に対する財源ということで位置づけているが、これも先ほど答弁した、例年、通常支援型に1000万円ほど予算を割いているので、各年度1000万円ほどはこの3割の中から確保させていただいている状況。

◆やまね/総額で今後の見込みも入れるとだいたい6億2000万円ほどの額。その3割なので、だいたい1億8000万~9000万ぐらいの額が京都市に入って、その中から通常支援型、他の伝統文化、相談窓口なんかにも使われてるということ。事業認定型の交付実績をおっしゃっていただいたが、それではこの中で交付実績や交付申請額が1000万円を超える事業について、事業名・交付額・申請者名を教えていただけるか。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)1000万超えるのは、令和4年度は「NAKED GARDEN ONE KYOTO」がある。株式会社ネイキッドが実施主体。実際、実行委員会を構成して実施するものだが、決算額は1億3797万円の支援を実施した。令和5年度も同様にネイキッドの「NAKED GARDEN ONE KYOTO 2023」。これは1億17万円の支援を実施した。6年度も申請ベースでいくと、このネイキッドのほか、一般社団法人インバウンド観光総研が実施主体となる「The Bounty of Japan GALA in KYOTO」が1億4000万円ほど(申請ベースの金額)。先般閉幕した「村上隆展」で「大学生以下を無料化する」という事業を実施。村上隆展実行委員会が6000万円を超える申請をいただいている状況。1000万円超に限定すると以上の事業となる。

◆やまね/令和6年度分の「NAKED GARDEN ONE KYOTO2024」はいくらになるか。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)「NAKED GARDEN ONE KYOTO2024」は、現時点で交付申請額は1億4000万円。

◆やまね/今おっしゃっていただいたように、事業認定型については、交付実績、交付額・交付申請額が1000万円を超える事業は数件しか存在しない。それが全体の寄付額の大部分を占めているのではないかと思う。令和3~5年度だけに限ると2億7641万円、そのうち株式会社ネイキッドが申請したものが2億3814万円、86.1%という数字になる。今年度の申請額を入れるとだいたい6億5000万円ほどになると思うが、そのうち3億7814万円ほど、半分以上が株式会社ネイキッドによる申請になる。私はやはり、京都市が行う文化芸術支援の施策で、これだけ額に大きな偏りがあるというのは問題ではないかと、通常支援型の拡充の補正こそ必要ではないかと思うが、今回なぜ通常支援型の補正がされなかったのか。今後される予定はないのか。この点はいかがか。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)全体として、ご寄付の獲得には勤めてまいりたいと考えていつ。今回は、事業認定型でもうすでに認定させていただいているものが14件あって、当初予算で不足するであろうということが明らかなので、事業認定型にかかる補助金について増額補正を計上させていただいている。通常支援型については、基本的には今年度のご寄付の最終的な実績も踏まえ、また、来年度予算の中で編成していくべきものかと考えている。最終的にそのご寄付がどう獲得できるかということでいくと、本当にタイミング的には、その年度末まで見極めるという非現実的なことにもなるので、そこは明らかに見込まれるものについて、今回補正させていただいたという状況。

◆やまね/通常支援型については「今年度を踏まえて、来年度どうするかまた検討」ということだが、「Arts Aid KYOTO」について今年度、私、代表質問や予算特別委員会の局別質疑とか、常任委員会でも議論させていただいて、その議論を踏まえて、改めて文化芸術関係者の方に、演劇や美術作家の方にお話を伺ってきたが、言っておられたのは、やはり「枠をもう少し拡大をしてほしい」「額を増やしてもらえればありがたいけれども、それよりも通常支援型の枠をもっと増やして、支援を受けられる方を増やしてほしい」「多くの関係者が希望しているのに、支援を受けられる人が少なすぎる。落とされてしまうというのが問題ではないか」ということ。

この間、文化市民局の中では、例えば少額の枠を作ったり、あるいは若手を対象にした枠を作ったり、この1000万円の中で、どうすればよりニーズにあった施策になるかという点では、かなり努力をしていただいていると思っている。そこは私は頑張っていただいていると思っているが、やはりその通常支援型の総額が1000万円に留まっている状況では、なかなか工夫しても、必要としている方に届かない、届かない人がかなり多く生まれてしまっているのではないか。ここを変えなければいけないんじゃないかと思っている。大変ニーズの高い施策で、当たっていると思う。多くの方が求めていることはわかっているし、先ほど、草木政策監から「裾野を広げる」というお話があったが、まったくその通りだと思う。なので、この通常支援型の予算規模を拡大することがどうしても必要だということで、ぜひ、来年度に向けて検討をいただきたい。求めておきたい。

最後に申し上げて終わるが、「Arts Aid KYOTO」の事業認定型で集まるこの寄付額、先ほどもあったが、今年度の申請額を合わせれば6億円超える。そのうち3割が京都市に入るとなると1億8000万~9000万、2億円近くのお金が入ってくる。少なくともそれだけの収入があるのであれば、年間1000万円に留まっている通常支援型はぜひ拡充していただきたいと思う。

過日、京都会館(通称・ロームシアター京都)で行われた「日中韓芸術祭2024」に参加させていただき、日中韓のオペラ歌手のみなさんの本当に素晴らしいパフォーマンスを体験させていただき、本当に国境を超える力というか、文化芸術・音楽はそういう力を持ってることを改めて体感させていただいた。やはりこうした取組、あるいは市民レベルでの文化活動による交流が広がっていくことによって、ヘイトスピーチなどの差別を許さない、あるいは、平和な社会につながっていく、そういう力をやはり文化芸術は持っていると思う。その文化の底辺を拡大していく、そして若手アーティストを始め市民のみなさんの文化芸術活動継続のために支えていく、活動の場を保障していくという、文化行政の役割をぜひ果たしていただきたい。そして、これまでも求めてきたが、コロナ禍で2回に渡って行われた文化芸術関係者への幅広いアンケートであるとか、あるいは芸術系学生のみなさんへも以前アンケートが行われていたわけで、こういう活動にもぜひまた力を入れていただきたいと求めて終わりたい。

2024年9月25日【予算特別委】文化市民局/補正予算「Arts Aid KYOTOによる文化振興の推進」2億5400万円

(更新日:2024年09月25日)