万博関連に5000万円でなく、1000万円にとどまる文化芸術支援予算の増額を(2024年6月6日/予算特別委・文化市民局・やまね)

◆やまね/文化芸術に関わってお聞きしたい。今回の文化市民局の第2次編成予算の新規・充実事業を見ると、「アート市場活性化事業(充実)780万円」の事業概要の説明の結論部分では「大阪・関西万博を見据えた更なるアート市場の活性化」と書かれている。「京都の伝統文化ブランディング(新規)1000万円」では「大阪・関西万博のレガシーを目指す」と書いてある。「京都の若者が世界の多彩な才能と交流する仕組みづくり(新規)1700万円」では「大阪・関西万博を契機に」と書いてある。「美術館の夜間活用による新たな価値創出(新規)2100万円」では「大阪・関西万博に伴う需要拡大を見据えたコンテンツ造成に~」など。大阪・関西万博についてふれられているものがいくつもある。合わせると総額5580万円。これらは万博関連事業という位置付けなのか。万博がなければこういう予算は計上されていないのか。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)基本的な考え方としては万博の有無にかかわらず取組が必要なものと考えている。万博がないから事業行う必要がないとは考えていない。ただ、来年、万博がある。国外・国内から多くの方がいらっしゃる中で京都が持っている文化の価値にふれていただく、ふれていただくことで京都の文化がさらに磨かれる、こういう大きなチャンスであると考えている。万博に合わせてやることで事業効果が増すと考えている。万博のために行う事業ではないという意味で、関連事業、万博事業というような認識はないが、当然関連する、あるいは連携する、そういったことはあろうかと考えている。

◆やまね/「万博の有無にかかわらず必要なものである」とのお答え。私もそうでなければならないと思う。「京都の価値にふれていただくチャンスでもある」ともおっしゃったが、例えば、「京都の伝統文化ブランディング」ではこういうふうにも書いてある。「期間中350万人のインバウンド来訪が見込まれる大阪・関西万博は、国内外の新たなファン層を獲得する絶好の機会であるが、誘客のためのノウハウや資金が不足」とあるが、しかしすでに、私たちの京都ではオーバーツーリズムが問題になっているわけで、さらに人を呼び込もうというのか。ここがちょっと疑問だ。この点の見解を聞きたい。

それから今もおっしゃっていただいたが、万博のあるなしに関わらず、万博のあるなしに関わらず、地に足を付けて、京都の伝統文化を守り継承していくための予算組みが必要と考える。そこで改めて聞くが、京都の伝統文化は万博がなければ立ち行かなくなるような存在なのか。そういうことではないと思うが見解を聞きたい。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)「さらに多くの観光客を京都に呼び寄せるのではないか」というご懸念に関しては、今すでに予算の広報の中でもふれているが、例えば、伝統文化を、主にインバウンドに対してふれていただく「祇園コーナー」というのがあるが、大変人気で、ある意味ここに集中してるという側面はあろうかと思う。一方で先日行われた京都薪能とか市民狂言会は、実はコロナ禍を挟んで低迷している部分もある。プロモーションが足りていないという課題認識はあるので、そういったものをしっかりアピールしていく。メニューがあるのにそこに来ていただけてないという意味では、一極集中してるものを分散する、そういった側面もあろうかと思うし、例えば「夜の公園」ということもある。観光の時間の分散化、こういったことに資することも当然あるのではないかと考えているので、今あるメニューをしっかりアピールしていくということで、観賞いただく、体感いただく、そういう機会を創出してまいりたいと考えている。

万博がなければ立ち行かない状況なのかどうかということだが、そういうことではなくて、やっぱり、しっかり日本人の方にもそういった文化の価値、伝統文化の価値をお伝えしたいと思っているし、海外の方にもふれていただく。海外の方の評価をもって、実は足元の日本人が改めて気づく側面も当然あろうかと思っている。顧客目線で磨き上げることによって価値を向上させ、そのことでさらに伝統文化にふれていただく方を増やしていく、こういう大きなところも見据えて事業を展開してまいりたい。

◆やまね/やはり今のお話を聞いていても、聞けば聞くほど思うが、やはり万博のあるなしに関わらず、京都の文化政策というのはなければならないと改めて感じた。

私どもこの前、伝統ある京都の芸術家団体のみなさんと懇談させていただいた。今回の新規・充実事業についてご意見をうかがうと、「外から人を呼び込むことや交流に重きが置かれているが、京都で活動する芸術家を支援するものになっていないのではないか」「京都市美術館のリニューアル後、会議室も含め大変料金が高くなり、展示会の開催にも非常に苦労している。美術館を市民が財政面でも使いやすいようにしていただくことが文化の発展につながる」とおっしゃっていた。こういう声にこそ応えなければならないのではないか。

それからもう一つは、「京都市美術館西側の元々の玄関部分、素晴らしい装飾・設えとなっている部分、本来ならそこを階段を上がることで美術館に来たという感情が高まっていく場所であったところが、今はデッドスペースになってしまっていて、これは文化的な損失ではないか。以前のように使えるようにしてほしい」という声もいただいている。こういう声に応えることが必要ではないか。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)今回、第2次編成予算については、文化市民局予算概要でもお示ししているように、多彩な才能、人材の集結、交ざり合い促進ということで、多くの人を呼び込むことを主眼に置いた予算編成をしているが、一方で第1次編成では、しっかりと若手芸術家も含め支援を継続している。こういう予算編成としている。厳しい財政の中でもしっかりと予算としては確保したうえで、今回第2次編成として新たにお示しするものなので、交ざり合いによって先ほど申し上げたように、文化の価値を向上させていく、磨き上げていく、こういったことが、例えばアート市場の活性化につながっていく、そういったことが芸術家の活動を支えるサイクルになっていくかと考える。ですのでトータルで評価いただければと思っている。

(→小林・美術館担当部長)美術館運営についての美術団体の皆様の様々なご意見について。我々美術館においては、いろんな美術団体の方に日々、展示会で利用いただいており、当然その都度、その時に様々なご意見いただくこともあるし、京都で活動されている美術団体で集まっておられる美団連(京都美術団体連合会)という団体さんと、定期的に意見交換の場も設けさしていただいて、これまでそういった美団連さんのご意見もうかがいながら、例えば展覧会の入場者数を増やすために美術館のホームページ・SNS等でのその情報発信とか、館内での掲示の充実、そういったできることから取り組ませていただいているし、これからも引き続きご意見を伺いながらできることからやっていきたいと考えている。

◆やまね/ぜひ関係者の方々の声に応えていただきたいと改めて私たちからも要望しておきたい。

それでいま答弁の中で「1次予算編成で若手支援もしっかり継続している」「その上での第2次編成。トータルでぜひ評価を」という話があった。そこで改めてその点、代表質問でも指摘したが、Arts Aid KYOTOの「通常支援型」が、年間の予算規模がわずか1000万円、毎年たくさんの申請があるにもかかわらず多くの方が落とされている。その理由を質疑した際には、応募された事業の良し悪しではなく「予算の範囲内でやっているので優先順位を付けてそうなっている」とのお答えがあったかと思うが、現状は少ない予算を多くの文化芸術関係者で取り合う状況になってしまっているんじゃないか。冒頭指摘したように、「万博を契機に」として今回第2次予算編成で5000万円を超えるような予算が組まれている。私はその前に、Arts Aid KYOTOの通常支援型にこれだけニーズがあるのだから、第2次編成予算で、むしろその予算を抜本的に増額するというか、補正するというか、そういうことがされるべきだったんじゃないかと思うが、この点いかがか。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)Arts Aid KYOTOのとりわけ通常支援型について。令和3年に創設した制度。我々Arts Aid KYOTOも含めて大きく「文化ファンドレイジング戦略事業」ということで推進させていただいているが、この事業そもそも、ふるさと納税制度を活用したもので、寄付を財源に実施するもの。文化を社会全体で支える、そういう流れの中核をなす事業。代表質問の答弁でも政策監申し上げた通り、いわゆるその、「事業認定型で確保したもので7割はその当該事業に補助として渡し、残りの3割で我々の文化政策の振興に使わせていただく」、こういうスキームとさせていただいているが、この寄付集まるのは大半が事業認定型による寄付なので、それで集まった財源を通常支援型に充てているという実情。そうした中でも1000万は4年度も5年度も、そして今年度も確保させていただいてるという状況。寄付の財源が今後大きくなればそういったことも十分考え得るかとは考えているが、今現状だと1000万しっかり確保させていただいてる、その中でできるだけ例えば少額でもいいから支援してほしいと、そういうお声に応えるために、毎年細かな修正も行いながら、ご利用いただきやすい、そういう制度にしているところ。

◆やまね/要は「Arts Aid の事業認定型は寄付で集めたお金なので」と、つまり寄付頼みだからそうなるっていうお話だが、私は一般財源も入れてやるべきだと思っている。やはり「万博関連」「契機に」とか言って5000万円以上使いながら、Arts Aid KYOTOの通常支援型は1000万円だ。これ倍にしても2000万円ほどの額。これが充実できないっていうのはやはりおかしいと言っておきたい。

もう一つ、「美術館の夜間活用による新たな価値創出」だが、岡崎地域はやはり文化的側面と合わせて大変静かで良好な住環境があると思う。これがこの地域の魅力だと思うが、そこで二点お聞きしたい。今回の事業は地元の皆さんから「ぜひ美術館を使って夜の賑いを作って欲しい」という要望があったのかどうか。二つ目に、この夜間の賑いを作り出すっていう時に、それが静かな住環境を壊すことにつながらないかも危惧する。この点の認識は。

(→吉岡・京都芸大文化連携推進部長)美術館の夜間活用について。今回の事業については、文化庁の補助金を活用しながら、京都市京セラ美術館をコアに、京都文化博物館や滋賀県立美術館、関西経済連合会をはじめとする団体で実行委員会を組織して取組を展開していくもの。この事業を進めるにあたっては、予算をご議決いただいてから企画検討を進めていくことを検討しており、また企画内容が具体的に進めば地元や関係団体にも情報共有させていただきながら、丁寧に事業を進めていこうと考えている。現時点で地元のほうから「夜間の美術館を開けていただきたい」という要望を受けてこの事業を企画した、発案したということではないが、今後丁寧に説明させていただきたいと思っている。

それから、「静かな場所なので地元のほうからそれが非常に危惧されるのでは」ということだが、こちらについてはやはり産業観光局で実施されているマナーや観光モラルの啓発というところとも合わせて、市民生活に配慮した事業を進めていくというところにも、産観局とも連携しながら進めてまりたいと思っている。

◆やまね/やはり今もお話があったように、地元から何か要望があって進めていることではなくって、事業を推進する実行委員会に関西経済連合会が入っている。つまり今回のやはり出発点が、もちろん文化庁の政策もあるかもしれないが、営利企業の儲けを生み出すために夜の賑いを作り出したい、そのために公的な美術館や環境の良い岡崎地域を利用したいということじゃないのかと思う。私は公的な美術館の役割というのは、美術品の保存・展示・厳格な管理、学術研究、それを市民がお金のあるなしに関わらず享受できる、そのために頑張るのが公的な美術館の役割だと思っている。

最後に申し上げておきたい。「文化で稼ぐ」ということがよく強調されるが、やはり市民の芸術活動、京都の芸術家、若手アーティスト、こういう人たちの活動の場所をきちんと保障していくことなしに文化は育たないと思う。他会派の議員も取り上げておられたが、若手の登竜門的存在だった「京展」もストップしたまま。行財政改革計画の中では、いきいき市民活動センターの料金が値上げされ、非常に負担が増えて困ってるという話も聞いている。やはり文化活動、社会活動の場をしっかり保障する、そのことによって文化の草の根、底辺を広げることに重きを置くべきではないかと申し上げる。

2024年6月6日【予算特別委】文化市民局/文化芸術支援について

(更新日:2024年06月06日)