「デジタル化」「マイナカード普及促進」に巨額の予算を投じながら、市民しんぶん配布は市民まかせ⁉(2024年3月12日/予算特別委・文化市民局・やまね)

◆やまね/区役所業務の関係を主にお聞きしたい。そもそも自治体の窓口業務は、日本国憲法に基づく様々な権利を保障するために大切な役割を担っている。つまり、区役所や支所の窓口を訪れる住民の中には、自分や家族の抱えている問題が十分に整理されないまま来られる方も少なくない。中には、貧困やDV、病気や介護、いろんな事情を抱えていても「自己責任」ということで行政に相談しようとしない方もおられる。そういった中で、窓口業務は、住民の話を直接聞いて状況を把握し、抱えている問題を発見し、該当する制度や手続きを説明し、関連する窓口、その方に必要とされる支援策の利用につないでいく役割がある。この点の認識は。

(→長谷川・地域自治推進室長)今ご指摘いただいた通り、区役所窓口は市民と直接接するということで非常に重要な役割を果たしている。今ご指摘されたような困難な問題を抱えておられるケースであるとか、問題が複雑に入り組んでいて、それを細かく聞きほぐすというか、確認をするなかで、行政の職員が持っている知識で、その方を適切なところにつなぐ役割は職員にしかできないものであると考えているので、そういった分野に対してはしっかり職員を配置していくということで考えている。

◆やまね/今おっしゃっていただいたように、市職員だからこそ持っておられる知識や経験で最適なところにつなぐことは非常に大事な仕事。ところが、この窓口業務、区役所・支所の職員が、門川市政16年で市民に一番身近な区役所・支所の職員が大量に削減された。税業務をはじめ、衛生課、保険年金課、介護保険認定給付業務など。2008年度は3066人いたが、2023年度には2044人で、1022人減。区役所・支所で働いていた3人に1人がいなくなった。京都市は今後も区役所・支所の人員削減を考えているのか。市長が変わったもとで、新年度もまだ削減するつもりか。

(→長谷川・地域自治推進室長)区役所・支所も本庁も、他の行政機関も同じことだが、事務事業のあり方は、時代の流れに合わせて的確に変えていく必要がある。その中で、業務量の変化に応じて常に効率的な執行体制の構築を追求していくことは、行政機関である以上、いずれもしっかりと取り組む必要がある内容ではないかと考える。今ご指摘いただいたように、これまでから、戸籍事務の電算化であるとか、保険年金業務であるとか、税務センターの集約化、証明輸送サービスセンターの設置といった形で、業務の効率化・集約化によるスケールメリットを生かした組織改革を推進している。人口減少社会において、定型的業務のデジタル化、ICT を活用した業務の効率化等は時代の要請するところであり、本市においてもスマート区役所構想の下、デジタル化により定型的な業務については着実に効率化を進めたうえで、それによって生み出した人的資源や財源を、まちづくりや市民との対面相談・支援など、真に職員でなければならない業務にしっかりと振り向けていく、配置する必要があると考えている。今後とも社会情勢であるとか、市民ニーズ、新たな課題に的確に対応できるような体制を構築してまいりたい。

◆やまね/「時代の流れに合わせて変えていく」と話されたが、出発点は市民の暮らしだ。市民の要請に応えていかなければならない。単純に人員削減、窓口をなくして非正規化を進めれば、住民の暮らしを守るセーフティーネットの機能が失われる恐れがある。区役所・支所における職員削減は改めるべき。

いまお話のあった「スマート区役所」の問題についても聞く。昨年12月26日、デジタル庁が「地方公共団体におけるアナログ規制の点検・見直しマニュアル 【第2.0版】」を発表。そこでは「目視」「実地監査」「定期検査・点検」「常駐・専任」「対面講習」「書面掲示」「閲覧・縦覧」など7項目の規制の点検・見直しのほか、「アナログ的な行為を求める各種規制についても積極的に見直しを期待」「特に、書面規制や対面規制の見直しを更に推進することが望まれる」と強調。それだけでなく、「Step1組織の意思統一・推進体制の構築」「Step2点検・見直し方針の策定」「Step3規制の洗い出しと類型・フェーズの当てはめ」「Step4見直しの検討」「Step5見直しの実施」と、見直しの手順まで示し国は見直していこうと旗を振っているが、現在、京都市において、この7項目の規制について、何か見直し作業をしている項目が実際にあるのか。

(→長谷川・地域自治推進室長)これまで当然のように市民の皆様に来庁を求めて交通費や時間の負担を求めていたが、それを不要なものについてはオンライン上で手続きできるように、というのがそもそもの出発点で、市民の利便性向上のための取組と認識。これまでから書面や対面については、京都市においても印鑑をはじめ、様々な見直しをおこなっているところで、不要な市民負担は軽減するということで進めてきているし、今後も引き続き、不要な市民の負担を求めているものがあるのであれば、見直していく必要があると考えている。

◆やまね/「スマート区役所の推進」には前年比で約10倍近く3億4675万円を計上されているが、これが業務効率化、職員の負担軽減という点ではどうなのか聞いておきたい。一部の区役所でおこなっている「混雑状況の表示」については、実際に職員さんに聞いて驚いたが、自動で表示されるのではなく、実際には職員が目視で確認し、手作業で表示させており、「余計な仕事が増えた」と聞いているが事実か。

(→長谷川・地域自治推進室長)これは極めてシンプルな仕組みのシステムで、システムが、カメラで撮ってるが、その下にサイコロ状の、混雑状況を表示するための、あのこう、まさにサイコロが置いてあり、それで待ち時間が何分とか、混んでるとか、空いてるというようなことを、表示するという形。市民の利便性向上のためにやっているので、その作業については職員の方にお願いしているのは事実。

◆やまね/シンプルなシステムとおっしゃったが、システムというか非常にアナログなやり方でやってらっしゃるということ。今回の予算の付き方を見ていても、結局、国のデジタル関連予算に振り回され、業務量が増えているのが実態ではないか。市民・住民の側から見た時に、デジタル技術によってこれまでできていたことに加え「選択肢が広がる」なら利便性向上だと言えるが、証明書発行コーナーの4ヶ所廃止に見られるように、マイナカードを持たない方の行政サービスが後退し、区役所・支所の職員が削減されて不便になり、現場職員の業務量が増えるということでは本末転倒。デジタル庁「アナログ規制の点検・見直しマニュアル」では「民間における設備投資の促進」「日本経済全体の成長に繋がると考えられる」と、あからさまに民間企業の利益が強調するような中身になっている。ここに引きずられていくことは大変危険ではないか。

次に、マイナカードの問題についても一点だけ聞きたい。マイナカードの普及促進については、昨年いただいた資料で、平成27年度の制度発足当初からの決算、令和5年度予算も含め、総額約92億円以上、うち市の一般財源も約13億円投入されている。来年度も11億円以上と巨額の予算計上。この予算の額はもちろん問題だと思っているが、加えて日本では、諸外国と比べ、プライバシー・個人情報保護のための規制が大変遅れている。EUの一般データ保護規則では、自分のデータの完全削除・消去及び利用停止を求める権利、個人情報の扱いを自分で決定する権利、プロファイリングに異議を唱える権利、アルゴリズムを念頭にした自動処理による決定の対象にならない権利などが確立されている。法違反の企業への罰則も、日本は最高1億円の罰金にとどまっているが、EUでは昨年Facebookを運営するMeta社が「個人情報を海外に持ち出した」として12億ユーロ(1800億円)の制裁金を科されたとの報道もあった。カナダ(社会保険番号を個人番号として使っている)では政府HPで「財布に入れて持ち運ばず、安全な場所に保管してください」と厳しく指示。台湾は免許証等との統合計画を停止。G7の国々も日本のようなやり方はどこもやってない。日本の動きは世界から逆行しているのでは。むしろ個人情報保護という観点で遅れているのではないか。この点の認識はいかがか。

(→長谷川・地域自治推進室長)すみません、スマート区役所の取組で業務量が増えているのではないかというところについて、ご説明をさせていただく。スマート区役所については市民の利便性向上と…(やまね/そんなこと聞いていない、聞かれたことに答えてください)

(→臼山・マイナンバー業務改革推進担当部長)マイナンバーの制度について、他国から遅れているのではないかというところ。マイナンバー制度については、これまで法定外のマイナンバー収集・利用提供等は禁止されており、収集する場合も、マイナンバーが正しいかどうか確認とか、マイナンバーの正しい持ち主であるかを確認することになっており、マイナンバーが見られたり、漏れたりしたとしても、マイナンバーだけで各種手続きできないようになっている。また、マイナンバーだけでは、各種いろんな情報、基本4情報や税情報等を見れるものではないので、決して個人情報の保護ができていないというものではない。情報自体が芋づる式に抜き出せるものではない。現在、マイナンバー制度自体、国のほうでも制度上の個人情報保護の措置がしっかり講じられていると認識でおり、引き続き法令に則った手続きをしていきたい。

◆やまね/「大丈夫」かのような答弁だったが、とてもそんな状況になっていない。どれだけのトラブルがこれまで起こってきたことか。議員団要求資料「マイナンバーカード返却状況と主な理由」によれば、京都市においても令和5年6月~令和6年1月末の間に、本人希望に基づく返納件数208件。主な理由は「マイナンバー制度に対する不信・不安」107件、「使用しないため・必要ないため」60件など、重大な問題を抱えるマイナカードの普及促進も改めてやめるべきと言っておきたい。

最後に、自治会・町内会等の負担軽減についてお聞きしたい。議員団要求資料「行政区ごとの世帯数に対する市民しんぶん配布数の推移」によると、令和4年4月1日時点で73万435世帯に対し配布数は60万1404世帯だが、令和5年4月1日時点では74万243世帯に対し配布数が59万7521世帯。世帯数は増えているのに配布世帯は減。これはこの間の傾向なのか。配布世帯減の理由は配布そのものが負担となっているからか。地元でお話を伺うと「各種団体の役員のなり手がいない中、役員を兼任される方も多く、市民しんぶん配布の負担が軽減されれば、高齢者訪問や防災の取組など、より地域活動に力を入れられるのに」との声もある。過去には「市民しんぶん配布を事業者委託してはどうか」との陳情も出されている。

少なくとも市民しんぶんの配布は、京都市が責任をもって全住民に届けなければいけないのではないか。また、マンションへの配布もかなり苦労しているという話をよく聞く。たとえば、部分的にマンションで市民しんぶんを業者配布しているような場所がないのかどうか。

(→平井・地域コミュニティ活性化・北部山間振興部長)本市においては、市政協力委員のみなさんに市民しんぶん配布いただいている。核家族化とか、高齢者の単身世帯が増えたり、未婚晩婚化など、ライフスタイルの変化により近年人口減少している。その中で世帯数は増加する状況で、配布率も減少傾向にある。

市民しんぶんの配布は、元々ずっとやってるが、顔と顔の見える関係、近所の見回りをしながら新聞を配ることで、安心・安全のまちづくりや地域コミュニティの活性化に繋がる、意義深いものと考えているので、そういう重要な役割を市政協力委員のみなさんに担っていただいているということで、これまで重要な取組としてお願いしており、引き続きやっていきたいと思っている。

「マンションごと配れない」などがある場合についても、そこは我々とかに区役所が話をし、マンションの管理人にお願いしたりという形で、地域に応じて状況を聞きながら配っていただけるように対応を考えている。

◆やまね/マンションの関係は「管理人に相談したり」ということもおっしゃったが、事業者に委託して配布しているところもあるのか。

(→平井・地域コミュニティ活性化・北部山間振興部長)その辺りは私のほうは把握していないが、地域の方と話す中で、マンションの管理人であるとか、戸建て世帯の学区の町内会の方が配っていただいたりということで、また、そこを配っていただける方ということで、手をあげていただけるような相談をする中で、新たに市政協力委員が立つとか、立っていただいて配っていただく形で、対応しているということは聞いている。

◆やまね/事業者委託して配布している場所があるか知らないとのことなので、もしあるならまた教えていただきたい。少なくとも市民しんぶんは、自治会の状況によらず、京都市の責任で全住民に届けられるよう改善が必要と訴えておきたい。

「デジタル化」と名がつけば億単位の税金を投じながら、市民に一番身近な区役所職員を減らし続け、市民しんぶんは地域のみなさんにご苦労いただいている、各区に配分される予算も極めて不十分。その中で「市民の心意気」「自分ごと」と言われても、というのが市民の皆さんの率直なところじゃないか。京都市の公共の責任が問われている。

2024年3月12日【予算特別委】文化市民局/区役所・支所の職員削減やマイナカード推進はやめ、住民に寄り添った仕事を

(更新日:2024年03月12日)