陳情審査:京都市立芸大跡地にアートセンターを(2023年9月25日/文教はぐくみ委・文化市民局・やまね)

◆やまね/よろしくお願いいたします。まずですね、この沓掛キャンパスに移転したのが1980年ということで。私どもも先日、現地視察もおこないまして、非常に緑豊かなキャンパスで、高低差を活かした建物がある。ゆったりとしたそういう空間が、これまで様々なですね、美術家・音楽家・芸術家のみなさんを輩出してきた場所なんだなというのを感じてきました。それでまず現キャンパスが京都市の芸術文化といった分野に果たしてきた役割についてですね、感じておられることをまずお聞かせいただきたいということと。

それから陳情者の方がここで述べられているのが、今の時代の特徴として「通信、映像の文化やインターネットの普及で今まで富裕層しか享受できなかった芸術・文化を幅広く市民が享受できる機会が増えた」ということで、「芸術・文化を鑑賞し楽しむ時代から、市民が自らの手で作り上げられる時代になり、創作したいという要求が高まり、創造する市民が今後多く誕生するだろう」ということを述べておられます。私もなるほどなと思いましたけれども、そういったこれからの時代に、この求めておられる「市民が総合的にアートに親しめる施設」「様々なアトリエや教室、アートラボなども備え、作品の発表や発信が行える施設」が必要とのご指摘について、文化市民局としてどう受け止めておられるか。改めて聞かせていただきたいと思います。

(→長谷・京都芸大・文化連携推進部長)はい、まず沓掛キャンパスでの、京都市文化芸術の位置付けというか、感想めいたことをというあのお話でございましたので、ちょっと私のほうからお答えさせていただきます。沓掛のキャンパスにおきまして、ご指摘の通り、非常に緑豊かなキャンパスで、学生のみなさん伸び伸びと文化芸術活動に愛しんでおられた、活動をされておられたという場所でございます。そこでこれまでからも、文化芸術を学生の手で、大学からの発信と、京都の文化芸術の発展にこれまで寄与されてきた学生が、思う存分その力を発揮できる場所であったと考えてます。移転先の京都駅東部エリアにおきましても、鴨川に隣接する、高瀬川の流れが学内に取り込まれる、またそういう自然環境についても恵まれている、あるいは東山地域が近くなる、そういう場所に移転することになるわけでございますけれども、これまでここで学んできたことについては、決して忘れることはない、ここで学んできたことを、今後新しいキャンパスでしっかり生かしていこうと、そういう文化芸術の、少しでも学生たちのために役に立つ場所にこれまで貢献してきたものだというふうに考えております。

(→平賀・文化芸術都市推進室長)時代が経つにつれ、様々な技術が生まれ、で、そうした中でその市民の皆様が文化芸術に触れるスタイルも当然変わってきてる、この点ご指摘の通りかと思います。で、従来ですと何か観劇をしようとかいうことであれば、当然その拠点に行っていただくしかなかったわけですけれども、近年、動画での配信ですとか、そういったデジタルでもって文化芸術に触れるということも可能になってまいりました。当然、映像で見るのと生で見るのとはまた違った当然趣きがあるものとは思いますけども、ある意味、居ながらにして文化芸術に触れるっていうことは非常にやりやすくなった、こういう時代かと思いますし、あと、例えば、アプリですとか、そういったものでいわゆるデジタルアートですとか、そういったものに親しまれる方もたくさんいらっしゃいます。で、私の知り合いにも当然そういう方いらっしゃいます。子どもの時からそういうデジタルでもって絵画を描くということをされてる方も承知をしております。こういった形で、様々な形で、文化芸術に親しまれる方が増えてきてるということは、これは当然もう我々としては喜ぶべきことというふうに考えております。

で、一方で、やはりそのリアルで発信をしたい、何か表現をしたいというような方々に対しては、例えば、先ほどご説明しましたけど、芸術センターでありましたり、あるいは文化会館・創作活動室というような機能も備えております。そういった機能を有効にご活用いただくことで、文化芸術に、一層親しんでいただけるような環境を確保してまいりたいというふうに考えております。

◆やまね/今お答えをいただきましたけども、私もやはりこれまで学生のみなさんが、思う存分そういった活動をされてきた場所であるということ、それから今の新しい時代に新たな表現の場というか、そういうものが求められている、このことをしっかりと受け止めなければいけないなと今回の陳情を読ませていただいて思いました。

そこで、行在政局からも今日は来ていただいてますのでお聞きしたいんですけれども。8月31日に行われました「京都市立芸術大学移転後跡地活用に係る優先交渉事業者選定委員会」第1回目が行われていますが、その摘録を読ませていただきました。跡地活用の対象としてはですね、グラウンドなど敷地の全てが対象で、建物はそのまま引き渡されるということだと思うんですけれども。陳情者の方が、アートセンターのためにということですが、「耐震補強やバリアフリー化を行いつつ、今ある施設を再利用し経費を抑えた活用を」ということを求めておられます。私たちも現地を見て感じたことなんですけれども、例えば、音楽棟に隣接するように野外音楽堂のような形でですね、地形を生かしたそういうスペースがありましたし、中には比較的新しい建物もあるということで、やはりそれらも含めて全て何か取り壊してしまうということではなくて、既存の建物を活かすような、そういうSDGsの観点からも、そういう取組が必要じゃないか。使える建物は残し、できる限り芸大の面影も感じられるような形での活用というのが望ましいんじゃないかなあと思ったんですが、その点はどんなふうにお考えでしょうか。

(→大八木・イノベーション推進室長)はい、跡地活用にかかります公募型プロポーザルを今週から始めさせていただきます。特にあの事業形態等問わずに幅広に、提案を募ってまいる形にさせていただきます。で、先生のほうからございましたその既存建物の活用につきましては、私ども今回の活用にあたりまして、芸大の跡地については「建物も含めて現状有姿でお渡しする」という条件でプロポーザルさせていただきますので、その後、事業者において、そのまま活用される、もしくは除却されるということについては、事業者の判断で進められるものというふうに認識してございます。

◆やまね/その、現状でお渡しされるということなんですけど、この選定委員会の資料にもですね、「SDGs」の問題は強調されてるわけですよね。ま、なので私はいくらその「選定された事業者が判断される」と言っても、やはり使えるものはしっかり使っていくという、そういうスタンスが非常に大事じゃないかなと思ったんですけど、もう一度いかがでしょう。

(→大八木・イノベーション推進室長)はい、募集要綱の中でSDGsについて、しっかりと念頭にというお話をさしていただいてございます。当然その、既存建物を使う使わないというところもございますけれども、当然その新たに何か建物を建てられるとか、もしくは既存の建物を解体除去されるっていう、そういう開発なり工事なりっていうのが伴ってくる場合がございますので、基本的については、仮に除去するというような場合であってもそういう工事の手法等については、しっかりとそういう、ま、エコと言いますか、そういう再利用と言いますか、そういうような観点も含めてやっていただきたいと。それと、それぞれの事業者が、活用を進めていく中においては、当然その、環境に優しい、そういうような配慮を持って事業を進めてくださいというような趣旨で書かしていただいてるものでございます。

◆やまね/あの先ほどのご答弁の中で、「特に事業形態は問わずに幅広に」という話がありましたけれども、今回「公募型プロポーザル方式」により選定とのことなんですけども、応募者や売却条件については特に限定されてないわけですけれども、跡地活用の何か方向性を決めてるってわけではないんでしょうか。

(→大八木・イノベーション推進室長)はい、冒頭でのご説明にもございましたけれども、洛西の跡地活用につきましては、「洛西地域、西京区の魅力的あるまちづくりを推進をしまして、引いては京都市全体の活性化に寄与する」ような形で進めていくと、で、とりわけですね、洛西地域におきましては、「人口減少や少子高齢化が進んでいる」ということを踏まえまして、新たに人を呼び込んで、賑いや雇用を生み出していく、そういうことで「若者・子育て世帯の定住につながるような活用を進めていく」こととしております。それの実現のための、業種・業体を何か限定をするということではございませんけれども、頂いた提案については、そういう視点の下で審査をおこなっていきたいというふうに考えてございます。

◆やまね/これもですね選定委員会の資料に、今お答えいただいたようにですね、洛西地域の課題として「高齢化と人口減少」ということがあげられてると。で、「働く場の創出、移住・定住の促進、子育て環境や生活利便性の向上」などが、これが「持続可能なまちづくりに向け必要」なんだということで言われてるんですけれども、私それを聞いた時に、それだったら、子育て世代の方が利用できるやはり公共施設を整備していくとか、そういった施設整備を例えば条件にするとかですね、あるいは、今おっしゃっていただいたように「洛西地域、西京区の活性化」だけではなくって、「京都全体の活性化に寄与する活用という考えの下」とも書いておられますので、例えばそれだったら、京都市は市民1人当たりの公園面積が大変少ないまちですので、「一定の広さを持つ公園をきちっと整備する」ことを条件にするとかですね、京都市がもう少し地域課題・社会的課題の解決のためにイニシアティブを発揮するべきではないかなあというふうにも感じています。

で、例えば過去の事例ではですね、伏見区の消防学校跡地、これは14700㎡ほどでしたけれども、これを活用する際には、「応募資格」ということで、「公益社団法人及び公益財団法人」、あるいは「特定非営利活動法人」「その他営利を目的としない法人」「公共性、公益性の高い事業を営む営利法人」という条件を付けた。あるいは「売却条件」としてですね、「周辺地域の環境と調和し、公共性・公益性が高く、公共の福祉の向上に資する施設整備及び事業を実施すること」という条件を付けました。こういうやり方も今回の場合、当然考えられたんじゃないかなと。なぜこういう形には、手法は取られなかったのかということもお聞きしたいんですがいかがでしょう。

(→大八木・イノベーション推進室長)はい、本市の所有する資産を、活用を進めるにあたりましては、それぞれ資産が持ってますその状況とか背景とかっていうのはそれぞれ異なるものでございますので、活用にあたって、どういうふうな条件を付けていくかっていうのは、それぞれ資産ごとに異なるものというふうに考えてございます。で、芸大の跡地、先生もご承知の通り、7万㎡ということで、非常に広大なところではございますけれども、一方で、見ていただいた通り、高低差があったりとか、というようなところもありまして、ま、なかなかある意味で言うと、すぐに活用しにくいという ようなところもあろうかといふうに考えてございます。で、私どもはあえて、その特定の活用の方向性を絞ることで、提案が出てくるというのが非常に絞られてくるというような可能性はできるだけ排除、下げたいというふうに考えておりまして、応募にあたっては幅広に事業者の、募集をおこなっていくと。その上で頂いた提案について、洛西、西京、京都の活性化の視点から、審査していくというような判断で、今回募集をさせていただくものでございます。

◆やまね/やはり公共性・公益性っていうのがどれだけ担保されるのかなっていうところが非常に気になるところでありまして、これも選定委員会資料によればですね、「建物はそのまま引き渡し」「地下埋設物に関する物理探査や試掘調査もしておら」「地盤に関する調査もしておらず地盤状態は不明」「アスベスト調査は実施しておらずアスベストの存在は不明」等々とあるわけですけど。今もおっしゃっていただいたように、これだけの広さの土地を、そうした問題も含めて対応できるとなれば、これはもう、かなり大きな、大手の企業しか無理なんじゃないかというふうに思ったんですけど、その点のご認識いかがでしょうか。

(→大八木・イノベーション推進室長)はい、今回の公募をさせていただくにあたりましても、例えばそういう単一の事業者さんだけが、応募していく、いただくということではなくて、複数の事業者さんからの共同提案というのも可能にさせていただいております。それと例えば、事業者さんが整備された施設に複数の方がテナントと言いますか、ということで入る、そういうことも決して否定をしてるもんではございませんので、その一部のそういう資力のある大企業だけにというようなことで活用を進めているというようなものではございません。

◆やまね/まあそれで私はやはり跡地活用についてですね、何より大切なのは地元や市民のみなさんの声だと思うんですけれども、なので、私たちは公募型プロポーザルで決めるという方法そのものに疑問を持っているわけですが、それを踏まえて改めて二つお聞きしますが。

この公募型プロポーザルの提出期間がですね、「令和6年1月15日~1月31日」ということになっておりまして、京都市長選挙の直前ということであります。新しい市長さんのですね、スタンスが違った場合、これどうするのかと。せめて今年度末くらいまでですね、この応募・公募は受け付けるというふうにはならないのか。それからもう一つがですね、「京都全体の活性化に寄与する活用」というなら、やはり改めて市民意見募集をおこなって声を聴くことも考えられるんじゃないかと。仮に今後事業者が選定された場合、地域住民のみなさん、市民のみなさん、意見を言う機会はもうないのか。どのようにそういう声、これから反映されていくのか。この点いかがでしょうか。

(→大八木・イノベーション推進室長)はい、まずあの公募型プロポーザルのスケジュールというところでございます。基本的にはこれまでから申し上げてた通りなんですけれども、芸大のほうが移転する10月、それまでには跡地活用の形が見えるような形で、というふうに思ってございましたので、今回9月中のプロポーザルを開始させていただくと。で、一定まあ大きな土地ではございますので、事業者さんのその検討期間っていうのも、十分に確保させていただく必要があるということで、必要な検討期間を取らせていただいた上で、募集の締切を1月末というふうな形でさせていただいてるものでございます。必要な期間は確保させていただきながら、できる限り早期に、活用を始めたいというふうに考えの下で、期間を設定させていただいてるものでございます。

それとあの市民の声ということでございます。これにつきましても、私どもの所管いただいてる常任委員会でも色々議論いただいてたところでございます。この間の洛西の活性化ビジョンの作成の経過、過程、もしくは、区の基本計画の策定の過程でも、様々な手法で市民・区民、地域の方々のご意見を聞いてまいりましたし、この間実施をしておりましたタウンミーティングやホームページ上でのご意見フォーム、そういった中でも広く我々の考え方についてはご説明をさせていただきながら、意見を頂戴をしてきたというようなところでございます。で、今後、事業者の選定作業に入ってまいりますけれども、その中で、選定委員の方々には地元の代表の方についても委員として参画いただくというようなことになりますので、事業者の選定にあたっても地域の声を踏まえた選定となるように、進めていくというようなところでございます。

◆やまね/まあ少なくとも門川市長は次の市長選出ないと言っておられるわけで、2月には新しい市長が、どういう立場の方かは分かりませんけれども、就任されるわけでですね、やはり私は新しい市長の下でじっくり議論を重ねたほうがいいんじゃないかなってことを改めて思いました。

それで最後にですね、もう一つお聞きしたいのは、京都新聞9月19日付で「市芸大グラウンド 球技できない?」との報道がありました。これは移転先(下京区)のキャンパスでは、新しいグラウンドが「建物の屋上」「広さは約2300㎡で現キャンパス(約8500㎡)の3分の1以下に縮小」「サッカーや野球、ラグビーといった球技が難しく、体育の授業も球技以外へ変更予定」「美術工芸高校と共有のため、大学側が使えるのは、日中は週2日、放課後は午後6時以降」という報道ですけれども。私どものところにも、この間、非常にたくさんの心配の声が、芸大関係者のみなさんから寄せられておりまして。で、これ記事を読みますと、大学側の話として「代替グラウンドなどを検討してはいるが、予算などに課題がある。学生とも話し合い、落としどころを見つけていきたい」と、市文化芸術企画課の話として「財政的にもすぐさまハード面の整備は考えにくいが、今後のグラウンド運用については大学側と検討していきたい」という中身でありました。

今議会にですね、芸大関連の議案も出てますんで、またそこでじっくり議論はしたいと思ってるんですけれども、二点だけ最後お聞きしておきたいと思います。で、一つは、移転に伴って学生の活動スペースが大幅に減ってしまう、これまでできていたことができなくなるというのは、本来あってはならないことだと私は思っております。で、現在、どのような対策を考えておられるのかということが一点。それから二つ目に、沓掛キャンパスの跡地活用の一つの方法として、陳情の中でも「大学院の一部を沓掛キャンパスに残しても良いと思う」ともあるわけですけれども、例えば、これまでのグラウンドやテニスコートなどを一定残して、地域のみなさんや芸大生のみなさんがこれからも使うことができるようにすることも一つの方法ではないかと思いますが、この点いかがでしょうか。

(→長谷・京都芸大・文化連携推進部長)まずあの1点目のご質問ですけれども、大学当局と十分話し合って、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。で、2点目のグラウンド、大学院生とか、あるいは、この提案の内容について求めて、考えてはどうかというご指摘ですけれども、あの大学移転後の下京区の地域の周辺に活動する場所が必要ということで、対応するということが必要ではないかというふうに考えておりますので、そういう形で対応を考えていきたいということと、グラウンドにつきましては、今の公募の準備を始めて、沓掛の跡地活用については進められてるところでございますので、そちらのプロポーザルの準備につきまして、しっかりと協力していきたい、このように考えております。

◆やまね/すみません、えっと、「大学と話し合って適切に対応したい」ということなんですけど、グラウンドはどこかに確保するということなんでしょうか。ちょっともう一度お聞かせいただけますか。

(→長谷・京都芸大・文化連携推進部長)あの新しいグラウンドを確保するかどうかというご質問ですけども、そういった点も含めまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

◆やまね/はい、やはりですね、これ京都新聞に載っていたのはですね、美術教育後援会の方のお話、載ってまして、「グラウンドは教育上必要な施設で、学生にしわ寄せがいくことは避けたい」と。「近隣に代替スペースを確保するなど学生目線で対応してもらいたい」というお話載ってたんですけど、私も本当にこれその通りだと思います。で、今「検討したい」ということもありましたので、これはですね、ぜひとも引き続き検討いただきたいと思いますし、このやはり芸大の跡地の問題についてもですね、ここで陳情で言われているように、やはりあの現在の芸大生、院生の方も含めてですね、現在の芸大関係者の方が、これからも使い続けられるようにするということも一つの私は魅力的なまちづくりにとって大事なことではないかなと思いますので、ぜひそういった点も今後考えていっていただきたいと思います。求めて終わりたいと思います。

2023年9月25日【文教はぐくみ委】文化市民局/陳情審査「芸術・文化の総合的なアートセンターの京都市立芸術大学跡地への設立」

(更新日:2023年09月25日)