陳情審査:向島証明書発行コーナー廃止は撤回を(2021年12月2日/文化環境委・文化市民局・やまね)

向島証明書発行コーナーの存続を求める陳情

*京都市説明

(→平賀・地域自治推進室長)陳情の要旨。令和3年度末に廃止を予定している向島証明書発行コーナーについて、マイナンバーカードの普及がまだ十分でなく、また、マイナンバーカードを持っていたとしても、高齢者等にとってコンビニでの各種証明書の発行には高い困難、トラブルが予想されることから、廃止を撤回し存続させることを求めるもの。

本市では、住民票の写しなどの各種証明書について、各区役所・支所の市民窓口課や出張所、市内9カ所の証明書発行コーナーで取り扱うとともに、近年、マイナンバーカードを活用したコンビニ交付サービスを開始するなど、市民サービス向上に努めてきた。マイナンバーカードの普及が進むなか、コンビニ交付サービスと大半の機能が重複する証明書発行コーナーを一部見直し、西院、向島、嵯峨、岩倉の4カ所について、令和3年度末を持って営業を終了することとしている。

本市の令和3年10月末時点のマイナンバーカードの交付率等については、申請率が48.6%、交付率が40.9%となっており、今後もさらなる普及が見込まれる。住民票の写しや印鑑登録証明書等の証明発行が可能なコンビニ交付サービスの利用率も、令和2年度4.86%→令和3年度上半期8.74%、毎月1万件以上発行しており、多くの方にサービスをご利用いただいている。

さらに多くの方にコンビニ交付サービスがご利用いただけるよう、現在、市内各所の商業施設等に市職員が出向き、無料での写真撮影や申請書記入のお手伝いをしながら本人確認の上、マイナンバーカードの申請を受け付けることで、マイナンバーカードセンターや区役所等の交付窓口に出向くことなく、自宅でカードが受け取れる出張申請窓口の取組を実施している。

とりわけ、営業を終了するコーナーの周辺学区の皆様に、マイナンバーカードを取得する機会を提供するため、当該学区を対象にした出張申請窓口の設置を12月中旬以降別途予定しており、向島地域については、まず12月17日(金)~19日(日)までの週末3日間、近隣の商業施設において窓口の設置を予定している。設置の際には対象地域の皆様に、周知チラシを各戸配布することによりお知らせする。

コンビニ交付サービスについては、申請用紙に記入いただく必要がなく、コンビニのマルチコピー機のタッチパネルに表示される案内に沿って簡単にご利用いただけるサービスだが、具体的な利用方法を記載したリーフレットをカードの交付時にお渡しするなど、スムーズにご利用いただけるよう取り組んでいるところ。引き続き、土曜日・日曜日も含め、早朝から夜間までご利用いただける、便利なコンビニ交付サービスの周知に努めるとともに、マイナンバーカードの普及促進にいっそう取り組んでいく。

*質疑

◆やまね/証明書発行コーナーの廃止が発表された向島地域のみなさんからの陳情。当事者の方からの訴えであり、あらためてこれは重く受け止める必要があるのではないか。この点についてまずいかがか。

(→平賀・地域自治推進室長)この度署名も添えて陳情いただいた。先ほどもご説明した通り、身近で取れる拠点が一つなくなるという、そういう受け止めをなさっていることは、当然そのように理解をしているが、一方で、証明書に関しては、コンビニ交付サービスといったご利用方法も拡充してきているので、今回マイナンバーカードの取得に向けた取組を強化している。そういったものをご利用いただくなかで、ご理解を賜れればというふうに考えている。

◆やまね/陳情文書表にもあるように、今もおっしゃっていただいたが、陳情提出時に賛同署名が281筆。陳情者の方にあらためてお話をうかがうと「その後も短期間に384筆集まって今後もまだまだ集まりそうだ」とおっしゃっていた。あらためて今もあったように、「身近で取れる拠点がなくなる」ということなので、これは重く受け止める必要がある。

9月の当委員会で報告された際に、答弁のなかで西院と向島については「やはりアクセスの問題もあったことから、出張所への設置のご要望もあったなかで開設」というお話があった。これは私は非常に重要な答弁だと思った。そして、それぞれのコーナーについても「みなさんには便利にご利用いただいているのではないか」というお話も合った。実際にこの向島では年間15000件超える利用がある。それが廃止されるということ。ターミナルなどのコーナーと比べて向島の場合は地元住民のみなさんが多く使われてるのではないかと思ったが、この点はどうか。

もう一つは、先ほどもあった「コンビニ交付ができるようになった」ということだが、しかし全ての人ができるわけではない。向島地域にお住まいでマイナンバーカードを持たない方は、今後は伏見区役所まで行く必要がある。向島地域から伏見区役所まで行くには、近鉄向島から桃山御陵前まで乗るか、京阪観月橋から中書島経由で伏見桃山まで乗りそこから歩くか、あるいは近鉄バスで24号線を北上し、桃山の御香宮近くにあるバス停から15分~20分はかかると高齢者の方おっしゃっていた。坂道もあるなかで、交通費もかかる。とりわけ高齢の方々にとっては大変な負担になると思わないのか。

(→平賀・地域自治推進室長)まず、向島については住民のご利用が中心ではないかというご指摘。向島、西院ともに、出張所設置のご要望があったことなども踏まえて、平成9年5月にそれぞれ開所している。当時例えば西院だと、右京区役所はもう少し奥のほうにあったものが、太秦天神川駅近くまで寄ってきて近くになって整備された、状況の変化がこの間ある。なので西院の証明書発行コーナーだと1km圏内になる。向島について、庁舎の関係は特段変わってないが、立地については変わってないが、やはりそのコンビニ交付サービスが可能になったということは大きな状況の変化かと思っている。出張所の設置の要望があったという経過から考えると、やはり住民さんのご利用が比較的多いのかなと考えている。定量的なデータは持ち合わせていない。

ここのコーナーがなくなると伏見区役所まで行く必要があるというご指摘だが、先ほど来申し上げているように、コンビニ交付サービスで一定対応できるものも多くある。大半の機能が重複するというご説明もさせていただいている。必ずしも、マイナンバーカードをお持ちであれば、区役所まで行っていただく必要がないというのが一点。それと、向島であれば、竹田の証明書発行コーナー、こちらのほうもご利用いただけるのかなと考えている。竹田の証明書発行コーナーまでは近鉄電車あるいは近鉄バスも運行しているので、やむを得ずコーナーのほう取りに行かれるという場合でも、公共交通を使って行っていただくと。まあ当然時間とかそういった部分は今よりはかかってしまうわけだが、そういったものをご利用いただくことになると考えている。

◆やまね/やはり向島については住民さんのご利用が多いんじゃないかということは言われた。今もあったように、とにかく「コンビニ交付サービスを利用してくれ」「マイナンバーカードを取得してくれ」ということだと思うが、これはアクセスが大変になるだけではなくて、例えば身分証明書とか、納税証明とか、自動車臨時運行許可とか、証明書発行コーナーでは発行できていたが、コンビニでは発行できないものがあるのではないか。発行できないものを全て列挙していただけるか。

(→平賀・地域自治推進室長)住民票の写しとか戸籍関係は基本的に全て対応しているが、例えば、お亡くなりになってて「古い戸籍が必要」という場合については、最新の分しかコンビニ交付サービスでは対応してないので、そういった分はちょっと取得いただけないことはある。その他、いわゆる一般行政証明と我々は呼んでいるが、身分証明書、独身証明書(最近だと婚活とかに利用されるケースがある)、こういったものは対応していない。税関係でいくと、所得課税証明は最新分については対応しているが、納税証明、評価公課証明、こういったものはコンビニ交付では対応していない。いわゆる仮ナンバーと呼ばれる自動車臨時運行許可についてもこれはコーナーのみの取り扱いとなっている。向島で申し上げると、コンビニ交付では対応できないのが、全体の発行件数の11%余りというくらいの数かと承知している。

◆やまね/なので、マイナンバーカードを持たない方はアクセスが不便になり、そして今まで発行できていたものも一部できなくなるということなので、私は明らかにこれは行政の仕事、市民サービスの後退だと思う。確認しておくが、マイナンバーカードの取得は義務ではないはずだ。いかがか。

(→平賀・地域自治推進室長)はい、義務ではない。

◆やまね/なので、「個人情報の漏洩が心配」ということで取得されていない方も多数おられる。取得しないのも一つの選択肢であり権利である。ならば、私は、このマイナンバーカードを持っていないことによって、行政サービスで不利益を被る、あるいは、今までできていたことができなくなるということがあっていいんだろうかと思うが、この点についてどんなお考えか。

(→平賀・地域自治推進室長)マイナンバーカードを取得されない方が不安に思ってらっしゃること、いくつかあると思う。取らない理由。一つには「日常生活になかなか利用できる場面がないので必要がない」と思ってらっしゃる方。この点については、我々は、利便性の向上をもって取得につなげていきたいと考えている。

ご指摘あった個人情報の関係だが、様々なセキュリティ対策は講じている。そのことがしっかり住民のみなさんに伝わっていない分も当然あろうかと考えており、市民しんぶんをはじめとするいろんな広報媒体を使い、9月市会でも補正予算ご議決いただいているが、そういったセキュリティ対策をしっかり講じているということについて周知することで、住民の皆様の不安を軽減していきたい、軽減を図っていきたいと考えている。

そのうえでぜひカードを取得いただいて、便利なサービスを使っていただきたいというのが我々の考えであり、そういった周知に注力してまいりたいと考えている。

◆やまね/もう一つ確認しておきたいのが「マイナンバーカードの交付率」。先ほども少しあったが。9月の委員会資料では京都市の現状は38.3%となっている。今はもう少し上がっているかなと思うが。ただこれは市全体の数字だと思う。先ほどもあったように、この証明書発行コーナーが交通アクセスの問題もあって設置された経過があるのであれば、私はそれぞれの地域ごとの数字をもう少し見る必要があるんじゃないかと思うのでお聞きしたいが、今回陳情が出されている向島地域(5学区)の交付率は出せないのか。あるいは、伏見区役所、深草支所、醍醐支所など、区役所や支所単位なら出せるのかどうか。もし数字が分かれば教えていただきたい。それから同様に、先ほどのコンビニ交付サービスの利用率も地域ごとの数字が出せるのかどうか。この点教えていただきたい。

(→臼山・マイナンバー業務改革推進担当部長)まずマイナンバーカードの交付率だが、こちらについては、各コーナーごとの、住所区単位での交付率はちょっとお出しするのは難しいと考えており、行政区と支所レベルでの交付率はお出しすることは可能。

もう一つ、コンビニ交付の、どこで交付したかというところになるが、コンビニ単位になると、ものすごい数になってくるので、それを持ってどの地域でのコンビニでどれくらい交付してるかという具体的な数字は今こちらのほうで把握はしていない。

◆やまね/そしたら交付率については行政区ごとというか、支所ごとには出せるということなので、伏見区役所、深草支所、醍醐支所では、いまどうなっているか。

(→臼山・マイナンバー業務改革推進担当部長)10月末現在の数字になるが、伏見区38.7%、深草支所45.2%、醍醐支所37.9%となっている。

◆やまね/そうすると同じ伏見区でも大きな差があるのかなと今思ったが、やはり地域の実情をしっかり見る必要があると思う。少なくとも向島地域を所管する伏見区役所管内は全体よりも低い数字になっていると思う。こういう状況なので、とても「普及した」とは言えないと、現状では。

そこでもう一つ不思議に思っているのが「マイナンバーカードの普及状況等を踏まえながら」とか「マイナンバーカードの普及が進む中で廃止する」という説明をされている。ところがいま言われたように、市全体でも交付率は約40%。コンビニ交付サービスの利用率も8.74%。半分にも満たない交付率、多数の人はカードを持っていない。コンビニを使っている人もまだまだ少ないのに「普及した」ということで証明書発行コーナーを廃止するのはおかしいんじゃないかと。単純な疑問だがいかがか。

(→平賀・地域自治推進室長)いまご紹介いただいのは、(平成)30年4月に「窓口サービス向上プラン」を策定し、その中で将来的な証明書発行コーナーのあり方、これをもう統合していくという方針を打ち出したことをご紹介いただいた。9月の委員会でもその旨ご紹介させていただいている。いま申し上げた通りの交付率。で、サービス向上プランを策定したのが(平成)30年4月で、その後(令和)元年の秋に、京都市も含め各自治体で「マイナンバーカードの交付円滑化計画」を策定した。「(令和)4年度末までにほとんどの住民がカードを取得していただく」こういう想定で国も自治体もそれぞれ取組を強化するということで、昨年秋にも改定をした。プラン策定後の状況の変化もあるし、昨年度特にマイナンバーカードの普及が進んだということもある。ご承知の通り国においても経済対策等の観点からマイナポイント第2弾というのも予定されている、今後もさらに普及が見込めると考えている。「100%まで何もしないで待つ」というようなことではなく、状況の変化をしっかりとらえて、今回4コーナーについて営業終了するということを表明させていただいたということ。

◆やまね/「100%待つということでなく」と今おっしゃった。そして「令和4年度末にはほとんどの方取得している」と国も自治体も今言ってると。「昨年も(カード取得が)かなり進んだ」と。しかし現状はまだ半分もいってない。この段階で廃止するのがどうかってことを私は問題にしている。我々、私たちの議員団は、そもそもマイナンバー制度に反対しているが、しかし百歩譲って「マイナンバーカードの普及状況を踏まえながら廃止する」と言うんであれば、やはり住民のほとんどのみなさんが持っている状況でなければ、その説明は成り立たないと思う。みなさんの理屈から言っても説明が成り立ってない。あらためて「証明書発行コーナーの廃止」は撤回を求めたいと思う。

もう一つだけ聞くが、先ほどもあった「区役所窓口サービス向上プラン」には、「令和5年度を目途に統合する」とある。そこから言えば、やはりせめて来年3月(令和4年3月)の廃止は「延期」するということは考えられないのか。それさえもできないのか。

(→平賀・地域自治推進室長)やはりそのコンビニ交付サービス、非常に便利なサービスで、先ほど来ご紹介させていただいているほかにも、例えば、他都市に本籍地がある方はコーナーでは取れない、あるいは区役所に行っても取れない。ただ、コンビニ交付サービスでは事前登録いただいたら取得いただける、こういったメリットも正直ある。そういったことがまだ十分浸透してないのかなというところも我々考えており、特に今回営業終了する予定の4カ所については、そういったPRも含めて出張申請窓口を設置することで交付率をしっかり上げていきたいと考えている。

当初「令和5年度を目途に」としていたが、先ほどご答弁した通り、その後の「交付円滑化計画」の策定とか、普及に向けた取組のさらなる強化、こういった状況を踏まえて、今回営業終了させていただくという判断を致している。

月間のコンビニ交付、これ単純計算だが月1万件ほど現状ある。年間に直すと12万件ということで、この12万件という数字は、今回廃止するコーナーの取扱件数を上回っている。数字で全て判断しているわけではないが、やはりそのサービスを向上させて充実をさせていくなかで、状況に応じた体制の見直しというのはこれは不可欠かと考えている。したがって今回、くり返しになるが、こういったマイナンバーカードの普及した状況、あるいはコンビニ交付の状況、こういったことを踏まえて、コーナーの体制の見直しをさせていただくものであり、ご理解賜れればと考えている。

◆やまね/あのすみません、ご理解はちょっとできないが。今おっしゃった「月1万件コンビニ交付サービスある」と。「年間12万件」ということだが、これは市全体の数字ですよね。ですからこの「コーナーの件数上回る」ってことは、ちょっと比べるのは間違ってるんじゃないかなと思う。

結局、先ほどからのお話をまとめると、マイナンバーカードを持たない人に対しては市民サービスを切り捨てるということじゃないかと。結論としては。「誰一人取り残さない」「人に優しいデジタル化」と言われるが、本当にもう言葉だけだなと。こんなに冷たい対応はないんじゃないかと思う。

最後に指摘だけして終わるが、先ほどあったマイナンバーカード、マイナポイントの話だが、国はすでに昨年度予算で、マイナンバーカード普及のため、テレビCMやウェブ広告等に約54億円を計上。しかもマイナポイントのポイント還元だけで2000億円が計上された。加えて今後1兆8000億円さらに投じると報じられている。私はもう驚くばかり。システム構築だけでなく、カードの普及、ポイント還元だけでそれだけの血税を投入しなければ浸透しないと、先ほど「浸透してない」ということもおっしゃった。これは本当に異常だと。いかに不人気なものかというのを示していると私は思う。

京都市が証明書発行コーナー廃止で「6300万円ほど節減できる」というお話もあったが(9月の委員会で)、実際はコンビニ交付サービスの年間コストが3000万円ほどかかるが、国民の税金が2兆円も実際に使われるというなら、本当に何をやってるのかなと言わざるをえない。巨額の税金をそうやって投じた結果、京都市では交通が不便な地域に住民の要望で設置された証明書発行コーナーが廃止されようとしている。「マイナンバーカードの普及に2兆円も使うなら、生活困窮者支援、事業者支援、市バス・地下鉄に対する財政措置、臨時交付金のさらなる増額、これをもっと国がやってくれなきゃ困る」と、いうことを迫ることこそ京都市の仕事ではないかと、この点だけ指摘して終わる。

2021年12月2日【文化環境委】文化市民局/陳情審査「向島証明書発行コーナーの存続」

(更新日:2021年12月02日)