地域コミュニティの声を無視することは許されない!京都市は世界遺産保護の責任を果たせ(2021年8月10日/文化環境委・文化市民局・やまね)

◆やまね/よろしくお願いします。えっと本日も世界遺産の保護についてあらためてお聞きしたいと思います。えー「世界遺産条約履行のための作業指針」172条にですね、このようにあります。「世界遺産委員会は、条約締約国が、資産の顕著な普遍的価値に影響する可能性のある大規模な復元又は新規工事を、条約の下に保護されている地域において実施する場合若しくは許可しようとする場合は、その旨を事務局を通じて委員会に通知するように要請する。資産の顕著な普遍的価値の十分な保存を担保するための適切な解決策の検討について委員会が支援を行うことが可能となるように、できるだけ早い段階で(例えば、具体的な事業の基本[計画、設計]書を起草する前に)、また、変更不可能な決定を行う前の段階で、通知することが求められる」とあります。

それであの、京都弁護士会がですね、本年6月25日に発表した仁和寺門前ホテル計画についての「意見書」では、この点についてですね、「京都市は、反対意見や公聴会の状況も含めて正確に世界遺産委員会に報告し、その意見を求める手続きを取るべき」ということを求めておられます。そこでお聞きしますが、京都市としてはこれまで世界遺産委員会に対して、この仁和寺門前でのホテル計画について報告や意見を求めたことはあるんでしょうか。

(→山口・文化芸術都市推進室文化財担当部長)はい、お答えします。えーこの、先生がいまご質問いただいた仁和寺の件でございますけど、京都市のほうから、えー特に、報告というものを今まで出したことはございません。

◆やまね/そうしましたら同じ場所でですね、過去に起きた事例、案件について報告したことはあるんでしょうか。例えば、コンビニとか、ガソリンスタンドの計画が一時持ち上がりましたけども、その際はどうだったんでしょうか。

(→山口・文化芸術都市推進室文化財担当部長)はい、いま正確な記録を持ち合わせているわけではございませんけれども、えー基本的には報告してないと思われます。はい。

◆やまね/私はですね、その点で、まあこういう問題報告されていないということですので、あの果たして世界遺産保護のためにですね、世界遺産条約、そしてその履行のためのこの作業指針にのっとった対応を京都市がされてるのかどうかと、いうことを非常に疑問に思っております。

これはですね、いまあの私の手元にある文書が、昨年8月3日に開催をされております文化庁の世界文化遺産部会、の資料なんですけれども、ま、ここにはですね、えー「世界遺産一覧表記載資産の保全状況の概要について(この一年間に保全状況に関連して大きな動きのあったもの)」という資料がございます。で、この中でですね、「古都京都の文化財」に関わって、次のような表記があります。「仁和寺の緩衝地帯において宿泊施設の建設計画がある。地元協議会とは対話を重ね一定の合意が得られているものの、別団体から市議会に対して計画反対の請願書が提出された」というふうにあります。

さらにですね、また別の資料なんですけれども、昨年10月12日の世界文化遺産部会、この会議資料ではですね、「資産及びその周辺の開発事業等」で「解決すべき課題」としてですね、「宿泊施設等の開発」「開発事業に対する住民反対」ということで「京都」と記載されている場所があります。でですね、さらにその時の議事録を読みますと、「資産及びその周辺の開発事業等に関しては、観光産業が活性化するに伴い、宿泊施設等の開発が幾つかの資産で起こっており、その事業に対して反対運動などが起きているところもある」「これらに対しては『遺産影響評価』を世界遺産委員会からも実施するよう強く求められている」という文脈で語られております。

であの、またこの会議資料、別の箇所にはですね、「世界遺産委員会からの報告要請(適切な対応が行われない場合、「危機遺産」登録、登録抹消の可能性)」という記載もあると。私はこれ、これらの資料を見てですね、まあ文化庁も、あの危機感を持っておられるんじゃないかなというふうに思いましたけれども。この文化庁の資料に「解決すべき課題」として「住民の反対」ということが書かれていると、この問題をそのままにして強行することが果たして許されるんでしょうか。最低限、私はこういう問題が起きているということを、世界遺産委員会へきちんと報告しなければですね、これは条約履行違反となるんじゃなないかと思ったんですがいかがでしょうか。

(→山口・文化芸術都市推進室文化財担当部長)はい、お答えします。えーと、世界遺産部会でのですね、議論というのは、ま、されてるということでございます。その、えー文化庁で、どのような判断されているか、どのように報告しているかという形が、その世界遺産部会の形だというふうに思っております。一方でその、えー、この計画につきましてはですね、すでにその様々な、制度ですね、都市計画等の、制度にのったですね、のっておこなわれてると、いうことでございまして、特にそこについては、えー、構成資産の価値を損なうというものではないと考えております。ま、この、今後もですね、文化庁とも連携を取りながらですね、今後の対応についてはよく、えー協議をしてまいりたいと、思います。

◆やまね/あのー、ま、ご承知の通り7月21日にはですね、イギリスのリヴァプールが「世界遺産登録が取り消し」になると。こういう事態も起こっております。結局再開発が止まらなかったということでそういう決定がされました。私はやはり世界遺産条約履行のための作業指針にのっとったですね、本当に京都市がきちんとされているのかどうか、非常に疑義があるということを申し上げておきたいと、いうふうに思います。

で、今年3月31日の上質宿泊施設誘致制度における有識者会議の講評でですね、「世界文化遺産・古都京都の文化財は、適切に保存しつつも、周辺住民と京都市民が独占すべきものではない」というふうにあるわけですけれども、京都弁護士会の意見書はこの点も紹介をして、「世界文化遺産について利害関係を有する者は世界中の人々であり、意見聴取の範囲は、本ホテル計画によって直接に影響を受ける具体的市民、これに限らず、世界文化遺産の維持保全に関心を有するすべての人々の意見を広く公平に聴取することが求められる」と指摘しておりますが、この点はどんなふうにお考えでしょうか。

(→山口・文化芸術都市推進室文化財担当部長)えー先生が今申し上げ、あ、おっしゃられてですね、えーその、おー、広く意見を聴取すべきだと、いうことについてはいわゆるその、えー上質宿泊施設誘致制度に行われる部分についての、えー意見だと、いうふうに承知をしてるところでございます。

一方でその世界遺産の保全と、文化財の保護という観点で申し上げますと、先ほど申し上げました通り、このホテル計画につきましてはですね、様々な規制によってバッファゾーン保全されていると、いうふうに解釈しております。えーその、そ、そういうことによって、構成資産の、おー価値を損なうものではないと、影響与えるものではないと、考えてるところでございます。えー以上のことからですね、現時点で、世界遺産の保全の観点から、周辺住民等にですね、意見を、おー、おうかがいするということは予定をしてないと考えております。

◆やまね/私はそれは大問題だと、いうふうに思うわけですね。あのいま、上質宿泊施設誘致制度の話だというお話がありましたけど、そうじゃなくってですね、弁護士会が求めておられるのは、今後おこなわれるような公聴会だとか、そういうものも含めて幅広くいろんな方から意見を聴取すべきだと。で、バッファゾーンで言えばですね、おそらく仁和寺周辺100m以外のところもバッファゾーンになってるんじゃないでしょうか。そういうところも含めて幅広く意見を聞かなければならないと。

で、これはですね、2012年の「世界遺産条約採択40周年記念最終会合」で国際社会が合意した「京都ビジョン」というものがあります。もちろんみなさんもその立場で働いておられると思うんですが、その中でですね、「世界遺産条約の履行において(中略)、地域社会と先住民を含むコミュニティが重要な役割を果たしていることを何度でも強調する」と、「コミュニティの関心と要望は、遺産の保存と管理に向けた努力の中心に据えられなくてはならない」ということを強調されておりますので、やはりこういう、この間ずっと、世界遺産をめぐっての議論では「コミュニティの参加」「コミュニティの関り」、こういうものが非常に強調されているのはご承知の通りだと思いますが、この趣旨にのっとればですね、やはり世界遺産を保護するという立場で、えー公聴会などにおいても、あるいはそれ以外においてもですね、ごく限られた範囲のみなさんだけではなくて、周辺住民のみなさん、幅広い市民のみなさん、関心を持っておられるみなさんから、声を聞いて、それを踏まえるべきだということを、文化市民局が言わなくてどうするのかと、世界遺産保護に責任を持つ部局として、責任を果たしていただきたいと、あらためて要望して終わります。以上です。

2021年8月10日【文化環境委】文化市民局/一般質問「世界遺産バッファゾーン保護について」

(更新日:2021年08月10日)