陳情審査:周辺住民の声を無視し、世界遺産の目の前にホテル建設(特例許可)など許されない(2021年3月22日/産業交通水道委での質疑文字起こし)

【産業観光局の説明】

(→北川・観光戦略担当部長)本陳情については、世界文化遺産仁和寺の環境を考える会他から提出されたもの。陳情要旨は「仁和寺門前に計画されている宿泊施設はまさに大規模な商業施設で、一帯は仁王門、西山、双ヶ丘を望む世界遺産のバッファゾーンである」「ホテル建設計画は建築基準法で本来建てられない規模の建造物である」「景観に大きな影響を与える建築物を認めることは、世界遺産保護の理念に反するものでしかない」「また、仁和寺は閑静な住宅街の中にある古寺院で、この地域にホテルそのものがなじまない。住環境の悪化も懸念される」「ついては、以下のことを願う。①世界文化遺産仁和寺門前に大規模ホテルを誘致することを直ちにやめること、②世界遺産の価値を損なわないよう開発を規制し、仁和寺門前一帯を保全すること」。本ホテルの建築により、世界遺産にふさわしい景観と閑静な住環境が悪化することを懸念されたもの。

本計画地は20年前から、騒音、粉塵、違法駐車といった迷惑行為が継続するなど、周辺住民の方々を悩ませてきた土地であり、約5年前にはガソリンスタンドやコンビニが計画され、周辺住民の皆様が結集して建設を阻止してきた経過がある。現在も不法投棄や違法駐車の懸念があることから、「仁和寺門前まちづくり協議会」を中心に、世界遺産バッファゾーンにふさわしい景観と閑静な住環境を守るため、まちづくり活動が行われている。そのような場所であるからこそ事業者は、上質宿泊施設誘致制度を活用し、計画検討の初期段階から3年以上に渡り同協議会や周辺住民の皆様と協議を重ね、景観や住環境との調和が図られた計画となるよう検討を進められている。

これまでからご説明している通り、上質宿泊施設誘致制度は、本市が宿泊施設の開業を望む地域や事業者から相談を受けた場合に、地域との調和を大前提に、地域と事業者にとってより良い施設となるよう、双方の橋渡しなどを行う要綱上の制度。本ホテル計画についても、計画地周辺の景観と住環境と調和した上質宿泊施設計画となるよう取り組んでいるところ。今後、事業者から最終計画が提出されれば、上質宿泊施設候補の選定に向けて、地域との調和が図られた計画となっているか、有識者の意見も聴取し審査していく。また、世界遺産古都京都の文化財のバッファゾーンについては、高度地区や風致地区の都市計画制限によって保全することとしており、本ホテル計画においても、これらの法規制に従って進めることにより、その価値は損なわれないものと考えている。今後計画が提出された場合は、本市の確認や美観風致審議会での審議を通して、専門的な視点から検証していく。

さらに、宿泊施設の建築は、建築基準法によって宿泊施設の立地が制限されている地域においても一律に禁止されているわけではない。周辺の住居の環境を害するおそれがないなどの一定の条件のもとで、公聴会や建築審査会における審議など、所定の手続きを経て許可を得ることで建築が可能となるものであり、この許可手続きは法が予定する正当な判断手法の一つ。仁和寺門前のホテル計画についても、今後行われる用途許可手続きの中で、住居の環境を害するおそれがないことなどの本市の確認や、建築審査会における審議を通して専門的な視点から検証していく。

現在、事業者において、計画内容の検討が行われているところだが、引き続き、地域との調和が図られ、地域文化の維持継承につながる上質宿泊施設計画となるよう、調整を努めてまいりたい。

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【質疑】

◆田中明秀議員(自民)/これももう何回も出ているが、あらためて確認という意味で、この陳情に対する本市の見解をお聞かせいただきたい。

(→北川・観光戦略担当部長)陳情で求められている「世界遺産バッファゾーンの閑静な住環境の保全」、これはまさにホテル計画でも実現を目指されているところ。このホテル計画については、約5年前の問題に一丸となって対応されたことを契機に発足された「仁和寺門前まちづくり協議会」の皆様が、「長年に渡る課題の解決につながるのであれば」と、本ホテル計画の協議に応じられスタートしたもの。事業者においてはその経過を踏まえ、仁和寺門前まちづくり協議会を中心に、計画検討の初期段階から、3年以上に渡り協議を重ね、景観や住環境の保全を図るため、セットバックとか塀の後退をはじめ様々なご意見ご要望を計画に反映させるなど協議を進めてこられたところ。

一方、空き地のままの状況では、過去と同様に不法投棄や違法駐車などにより、バッファゾーンと住環境への悪化・悪影響が将来に渡って懸念されるが、陳情においては、ホテル計画が中止されることによってこれらの課題が将来に持ち越されてしまうという点や過去の経過にはふれられていない。

現在、事業者において内容検討を進められているが、引き続き、地域との調和が図られ、地域文化の維持・継承につながる上質宿泊施設計画となるよう努めてまいりたい。

◆田中明秀議員(自民)/私も議員なるまではこの前を北とか左京とか現場に行く時よく通って、議員なってからはあまり通ってないが、長いこと空き地であったと思うが、やっぱり空き地のままではいかんやろというのがみなさんの共通認識と思うし、その中で協議も随分長い、3年以上協議してはるんですかね、その協議の状況はどのように進んでるのか説明を。

(→北川・観光戦略担当部長)事業者においては、仁和寺門前まちづくり協議会を窓口に、計画検討の初期段階から協議が重ねられており、景観と住環境の保全に向けて計画案の変更等を行われてきた。その結果、協議会からは、「長年地域や仁和寺にとって有効活用されなかった土地だが、ホテルには住民の声を取り入れていただき、地域にふさわしい計画になった」というようなお声をいただいている。また、仁和寺さんからも「観光客がゆっくり過ごせる良い施設ができると安堵している」「ホテルの利用者には、寺の歴史や文化にもふれてもらいたい」といったようなお声をいただいていると認識。

このように協議会、仁和寺とも、一定のご理解をいただいているという認識。そうした協議会の皆様との協議を経て策定された計画案については、100m範囲を目安にした周辺住民の皆様にもご説明されているところ。平成30年(2018年)と令和元年(2019年)には、住民説明会が開催され、そのたびにご意見を計画に反映させるなど、意見調整行われてきている。

また、令和2年以降については、新型コロナウイルスのため、説明資料を配布する形での意見照会だが、昨年8月と今年の1月2月と合計3回実施されている。この意見照会については、周辺住民、全280世帯を対象に実施された。8月の1回目は、37名からご意見いただき、うち23名についてはホテル計画に反対、合意していないという意見だった。この37名の方からのご意見の内容については、事業者の見解とともに一覧にして全280世帯に情報共有したほか、昨年11月には事業者のほうで新たに電話窓口を設置し、広く周辺住民の皆様から追加のご意見等々を受け付けるということで、昨年中には4名の方からお問い合わせいただいた状況。その内容は、「ホテルの建築計画」や「手続き」に関するものだった。さらに本年1月2月に実施した2回目3回目の意見照会については、合計1名の方からお問い合わせいただき、その内容は「ホテル計画に反対で協議に応じられない」というものだった。なお昨年11月からこれまでの間、京都市にも電話でのお問い合わせを8名の方からいただいており、その内容は「手続き」や「制度」に関するご質問など。現状については以上。

◆田中明秀議員(自民)/以前ここはガソリンスタンドとかコンビニとかいろいろあったと思うが、これが立ち消えになって今回の宿泊施設だが、おっしゃってたように一番大事なのは、地域の住民等、地域と業者さんとの合意形成、これはもう間違いないところと思うし、その中で意見言うのはやっぱり、何を持ってきても意見を言うのは反対の人。賛成の人はそんなにもう納得してんねやから、あえて賛成や賛成やと言わはらへんので、その中で陳情の方も出てきているが、今回のこの宿泊施設誘致制度の中で、地域との合意形成はどのように手順として確認していくことになるのか。

(→北川・観光戦略担当部長)本制度においては、事業者が計画書を本市に提出しようとする時は、あらかじめ周辺住民を対象とした説明会を開催するなど、計画内容を説明し協議し意見の調整を行ったうえで、周辺及び「合意形成状況報告書」を市に提出することを求めている。

この制度は、提案される宿泊施設の計画内容、住居地域・工業地域・調整区域など状況によって様々なケースが想定されることから、合意形成の判断について一律の基準は設けていない。このため一旦は事業者において合意形成の状況を判断したうえで、市に報告することとしており、事業者の判断にもよるが、一般論としては、住民の過半数が同意しているといった観点で報告されることもあれば、これまでに説明会を例えば何回開催してそのご意見についてどのように対応したというような、合意形成のプロセスを重視する観点で報告されることもあると考えている。

また、あくまでも一般論になるが、地域住民の合意形成の状況を確認する方法は、土地利用や建築に関わる様々な制度・手続きによって大きく二つに分かれると考えている。

その一つは、地区計画や土地区画整理事業など、その土地・建物に住む住民の方々が自ら土地・建物に関する事業を自ら計画することによって、その住民の方々同士がお互いに利害関係者となるケース。このケースでは、ある住民がその計画に対して意見を出すと、その意見についてはその住民自身の土地・建物の権利関係に直接影響するものと考えている。合意形成の際には、住民同士が合意なされているか、例えば過半数であったり4分の3など同意の数で確認されるというふうに考えている。

二つ目は、例えば集客施設の建設など、ある事業者が自らの土地・建物に関して事業を計画して、周辺住民が関係者となるケース。このケースでは、ある住民の意見については、その住民の意見の土地・建物の権利関係でなく他者である当該事業者の権利関係への意見となる。このため様々なニーズ、様々な意見が想定されることとなるため、計画説明や意見調整がしっかりなされているか、プロセスを重視した確認方法が取られるという認識。

このように合意形成の確認方法については、一般論ではあるが大きく二つのケースがあると考えているが、いずれにしても事業者から報告書が提出されれば、本市において個別案件ごとに合意形成の状況について、上質宿泊候補選定のための有識者の意見をお聞きして確認するということになる、そのような形になる。

◆田中明秀議員(自民)/いずれにしても「空き地のままではいかん」というのは反対の人もそういう認識でおられるというのは確認できているか。

(→北川・観光戦略担当部長)そのように確認している。

◆田中明秀議員(自民)/それならなおさらその前提のうえに立って、事業者のみなさん方の丁寧な計画の説明、地域との協議、意見調整、これをしっかりやっていただくということの指導も必要と思うし、その中で事業者のほうから、こういう説明、合意形成ができてきたというような報告もしっかり、その都度都度受けていただきたいと思うが、そのあたりの業者との話し合いはどのようになっているか。

(→北川・観光戦略担当部長)我々市の立場としては、橋渡しの役割ということで、普段から事業者と住民の方々を取り持つという形でやっているので、そこらへんについてはしっかりコミュニケーション図りながら、今後も進めてまいりたい。

◆田中明秀議員(自民)/それとやっぱり仁和寺さんのご意向も非常に大事やと思う。そのあたりも含めて、あらためて丁寧な説明を地域のみなさん方にしていただいて、この業者さんにもしていただいて、宿泊施設もいろいろバリエーションあったほうが京都観光のためになると思うので、あらためてこの、私らは観光道路観光道路と言っていたが、この「きぬかけの路」にあまりそぐわしくない空き地のようなもんあるより、特に仁和寺さんの前ですさかいに、仁和寺と調和したものをやはりつくっていただきたいと思うので、そのあたり説明がしっかり業者さんからできるように指導をお願いしときたいと思います。

(→北川・観光戦略担当部長)ありがとうございます。まさに仁和寺の前ということで、そういう点ついてしっかりと踏まえたうえで、より良い上質宿泊施設となるように、今後も橋渡し役として調整を行ってまいりたいと考えている。

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◆山本陽子議員(共産)/世界文化遺産に登録された仁和寺は門前一帯が1200年以上の歴史を今も漂わせる空間で、この景観を後世にも残したい、残さなければならないという思い、陳情にも記載されているように、「世界遺産は次世代に残すべき人類の共有財産である」、この覚悟でみなさんは陳情出されていると思う。現在に生きる住民の責任として何としても守りたいという思い、ぜひ受け止めていかなければならないと思う。だからこそ陳情者のみなさんは、京都市に何回も申し入れや問い合わせもし、また、周辺住民のみなさんとの話、訪問調査の結果も京都市にご報告されているとお聞きしているが、周辺住民のみなさんの思いを何千筆もの署名に託して訴えてこられた。1回目には5000筆以上、再度さらには陳情にもあるように1200筆以上もの署名になったということ。

陳情項目の二つ目には「世界遺産の価値を損なわないよう開発を規制し、仁和寺門前一帯を保全すること」とある。そもそも都市計画局の所管で策定された「仁和寺門前まちづくり協議会」による「地域景観づくり計画書」の趣旨ではなかったかと思う。計画書にも記載があるように、仁和寺門前まちづくり協議会のみなさんは、「世界文化遺産のバッファゾーンとしての公的な規制制度の確立に向けて、より一層行政等に働きかけていきます」と、明記されて活動をそもそも再開されてきた。

もっとも、上質宿泊施設誘致制度ができて、仁和寺門前ホテル建設計画について、京都市が事業者と住民を橋渡しするとされ、その住民組織として、まちづくり協議会との橋渡しをされてきたと思う。先ほどもお話があったように、2014年ガソリンスタンドの建設計画について、住民の運動で阻止されて、以後、地域環境の保全のため、まちづくり協議会立ち上げられて、空き地の活用について治安の観点からも「活用されることが望ましい」と、交渉に応じてこられたということだと思う。

しかし、協議を始めた2016年当時というのは、宿泊施設は1228施設、まだ「観光公害」という言葉も出てきていなかった。しかし住民説明会が開催されるに至る2018年はその3倍、3614施設にまでなっていたという実情がある。当初申し出を受けられた状況からは、観光や宿泊施設に対する地域住民の評価は変化をしてきているのではないか。そのことについては、仁和寺門前まちづくり協議会で検討されたのか。

(→北川・観光戦略担当部長)令和元年(2019年)11月だが、宿泊施設の急増に伴う課題への対応として、いわゆる「お断り宣言」をしているが、これについては「市民の安心安全と地域文化の継承を重視しない宿泊施設の参入をお断りする」という方針を示しているが、全ての宿泊施設の新規参入をお断りするというものではない。京都市では宿泊観光の考え方として、「地域や市民生活との調和」「市民と観光客の安心安全の確保」「多様で魅力ある宿泊施設の拡充」「宿泊施設の拡充誘致による地域活性化」「京都経済の発展、京都に伝わる日本の文化・心の継承発展」、この五つの方針をしており、これは現在も変更ない。

上質宿泊制度は、地域が持つ多様な魅力・地域特性を最大に生かすというのと、周辺地域との調和、地域の課題解決の観点からも、質の高い宿泊施設となるよう促すことを目的とした制度。本市が上質宿泊施設に期待する事項を満たすと判断した計画を上質宿泊施設候補に選定するもの。今後もこの制度の運用によって、京都市内の宿泊観光の向上、および地域の魅力の向上等々に努めてまいりたい。

◆山本陽子議員(共産)/質問した趣旨は違う。仁和寺門前まちづくり協議会での検討が、宿泊施設や観光の課題に対する変化について検討されてきたのかとお聞きした。

(→北川・観光戦略担当部長)これは事業者の方が、一定の土地において、宿泊施設を建てたいとする場合において、この上質制度を使って地域との調和を図るというものなので、この事業者の方を中心にその地域協議会と連携されながら話をしているところ。これで昨年からポスティングをしたり、その中の意見としてお受けしたりしていると認識。

◆山本陽子議員(共産)/一応聞いたが、協議会の総会自体、直近では2019年に開かれているが、構成員の多くの方が、「総会に出席したけれども、この建設計画への是非が問われたわけではない」というお声が多数聞かれている。先ほども「協議の状況」という説明の中で、「協議会からは『住民の声を入れていただきふさわしい環境になった』というようなお答えがあった」ということだが、構成員のみなさんは、このホテル建設に対する評価、「一度も聞かれたことない」「意思決定を協議会でしたことない」というようなご意見が多く聞かれている。まちづくり協議会、いろんなご尽力もされてきたが、全ての構成員の方が入った、そういう住民の意思として対応されてきたわけではないのか。

(→北川・観光戦略担当部長)我々お聞きしている状況としては、仁和寺門前まちづくり協議会では、平成30年(2018年)5月開催の第3回の定期総会において議案として承認され、あと令和元年(2019年)6月の第4回定期総会においても経過説明が行われたというふうに聞いているところ。定期総会の際は、ホテル計画が議事になることを事前にお知らせするとともに、議事録を回覧等により周知されているというふうにお聞きしている。これは評価ではなくてこのようにお聞きしているというもの。

◆山本陽子議員(共産)/平成30年(2018年)第3回協議会総会、構成員のみなさん、「ホテル計画についての概略の説明は行われたが決議などはされていない」というご認識だが、先ほど何と言われたか。もう1回お願いします。

(→北川・観光戦略担当部長)同じ内容になるが、平成30年(2018年)5月開催の第3回定期総会において議案として承認され、令和元年(2019年)6月開催の第4回定期総会においてはその経過説明がなされたというふうに聞いている。協議会の運営に関する詳細については、もちろん我々把握しているわけではないが、お聞きしている内容としては今申し上げた通り。

◆山本陽子議員(共産)/多くの構成員のみなさんは議案について承認したというような事実を私たちはお聞きしていないので、また確認すべきことかと思う。それに2019年(令和元年)度の定期総会においても、ホテル計画の是非は問われていないということで、構成員のみなさんたちは大変困惑しておられたのが実情だ。この協議会との「橋渡し」という実情がどういうことだったのか。これまで京都市は「20回以上に渡って協議してきた」と言われたが、構成員の多くの方が「そのような協議には参加もしていないし、会として決定したこともない」と、いうことを言っておられる。これで公正・公平な事業者との橋渡しと言えるのか。

(→北川・観光戦略担当部長)先ほど申し上げた「定期総会での承認」だが、我々評価してるわけではなくて、お聞きしている内容について申し上げたまで。で、そのうえで「橋渡し」についてだが、我々としては、上質宿泊施設制度の制度内容をご説明したり、周辺住民の方々と事業者の方を引き合わせたり取り持ったりとか、そういうような立場で、宿泊施設制度の上質なものを進めていければという形で「橋渡し役」ということで進めさしていただいているところ。

◆山本陽子議員(共産)/構成員の方は「賛成か反対かも聞かれたことがないのに、いったい誰がどのタイミングで建設を了承したのですか」と、逆に聞かれたそうだ。この手続きの事実については、再度確認をしていただきたいと思う。

「まちづくり協議会とは協議をしてきている」と言われているが、一方では、その他、上質宿泊誘致制度の枠内で説明すべき住民説明会の対象者の方には、このコロナ禍を理由に、再度説明会を開催されず、個別対応になっている。陳情者のみなさんから、事業者からホテル計画に関する資料が配布された地域約200軒を対象に訪問調査されたら、うちお会いできたのが84軒、そのうちの82%のお宅では、京都市に対して、「対面での説明会の開催がやっぱり必要だ」と答えておられる。いま緊急事態宣言が解除されたのだから、誠実に京都市対応するのであれば、事業者の方に「住民説明会をいま開催すべきだ」と、ご指導願いたいと思うがどうか。

(→北川・観光戦略担当部長)事業者においては昨年8月以降、意見照会、ポスティングで進められているところ。この意見照会については、周辺住民の皆様全員に計画内容をお伝えすることができ、あと、ご意見の内容を時間をかけてじっくりご検討いただけるものというふうにも考えている。その回答方法についても、郵送、ファックス、メールなど用意しており、幅広くご意見を受け付ける体制が取られているものと考えている。また、事業者のほうでは電話窓口を設置し、住民意見を受け付ける取り組みも実施されている。こういう中で事業者としては、これまでの説明会と意見照会という形で、合意形成に向けた取り組みが行われているところなので、そのような形で調整進められているのではないかなと考えている。

◆山本陽子議員(共産)/事業者の方針ということだが、それにとどまらず、住民個々の対応で済まされては、やはり地域の問題、住民自治の問題だ。住民自治の保障の場として住民説明会は開くべき。住民の方がいま思っておられるご意見の中には、「私たちへの説明もしない京都市が、かけがえのないこの静寂な環境に対し、責任持ってくれるのかは疑問だ」と、説明会を開かせようとしない京都市への不信にもなっている。これは重く受け止める必要がある。

さらに2019年、マスコミの報道で、ホテル建設計画が明らかになってからもうすぐ2年だが、未だ住民と事業者の合意形成の段階にある。陳情者のみなさんの訪問調査でお会いできた84軒のうち、73%のお宅が「ホテル建設計画に合意していない」、22%が「分からない」で、「合意している」のは5%ということだった。住民合意がないことは明らかではないか。

先ほど事業者の意見照会の結果もご説明されたが、対象280世帯の中で37件だった。そういう数になっているのは、住民のみなさんが訪問されて言われたことは、「事業者に住所・氏名を名乗って意見することは気が引ける」、その地域の中でそのお宅の意見を表明することにはやはり躊躇されている。だから出さない。事業者の方にどういう対応されるのかも分からないという思いでおられる。「しかし黙っているからといって納得してるわけではないんだ」と、そのように言われたそうだ。そういう実情もあるので、京都市先ほどご紹介されたのは、事業者の意見照会という結果ではあったが、京都市にも申し入れ時に調査結果を渡しておられるように、有志のみなさんの訪問調査の結果は、ぜひ尊重されなければならない資料であると思う。

住民の合意があるかどうかは、この選定結果の公正・公平な判断に直結する重大な事情だ。行政として、この上質宿泊施設誘致制度が、本当に公平で公正な手続きを経て、選定していくという立場なのであれば、住民のみなさんに説明をすべきだということと、事業者の方の意見照会だけではなくて、住民のみなさんの調査結果についても判断材料の基礎とされるべきだがどうか。

(→北川・観光戦略担当部長)我々これまで事業者、住民の方々、橋渡ししている中でだが、説明会等々やられた中で、京都市も同席させていただいて、そこでご説明はさせていただいている。また、最近も問い合わせ等々あるので、そういうところでしっかり制度の説明とかそういうものは我々させていただいているので、その点については回答させていただきたいというふうに考えている。

一方でこれは事実、お聞きしている話として、協議会、仁和寺とも一定ご理解をいただいているところというふうに聞いているところ。で、委員おっしゃっていた合意についての陳情署名について、これも事業者のほうにお伝えしているところ。有識者委員会等々、計画が出てきた際のことは、まだ詳細にはつめておらないところなので、どのような資料とするかなどについては、今の段階ではお答えできない、差し控えさしていただくというところ。

◆山本陽子議員(共産)/このまま住民説明会も開催しない、有識者会議の合意形成の判断にも住民のみなさんの調査結果を認定しないということであれば、この制度、上質宿泊誘致制度の公正・公平、もはやこれ崩れ去ってると言わなければならないと思う。仁和寺門前まちづくり協議会の協議でさえ、「承認決議あった」ということだが重大な疑義があることを先ほども言っているので、こういう不公正な不公平な進め方で選定される手続きなのかということが明らかになる。重く受け止めていただいて、住民説明会しっかり開催していただきたいし、合意形成の判断材料というところでも公正公平に判断していただきたいと思う。

本来、用途地域の規制というのは、都市の健全な保全のために規定されている。原則的規制を重視する、これが法律に基づく行政の使命だ。本件はさらに世界遺産のバッファゾーンにあたり、加えて規制を要請される事情がある。にもかかわらず京都市は、さらなる規制どころか、上質宿泊誘致制度によって、例外規定で大規模宿泊施設を誘致して、まるで景観を儲けのために差し出す姿勢になっている。京都にとって持続可能な観光政策というのは、1200年の歴史をいつまでも感じられる京都として、環境や景観を保全し残すことこそ京都市の大きな使命ではないか、このことについては私、政策監にご認識うかがいたい。

(→糟谷・観光政策監)仁和寺、世界遺産の門前にホテル計画ということで、やはり私たちもそういった世界遺産の前にふさわしい景観、良好な景観を創造するということは非常に重要な観点だと思っている。そういった意味では、専門的な見地から、景観のことであったり、住環境を守るという観点から、専門家の審議会もある。それに加えて上質宿泊誘致制度というのは、雇用を生んだり伝統産業を生かしたり、そういった地域の魅力を生かす、京都経済の発展に資するものということで、そういった景観、住環境にプラスして、より良い宿泊施設をつくりあげていこうというもの。そういった意味で、そういった地域住民の方にとっても事業者にとっても、より良い美しい景観を創造する、そういった施設となるように、引き続き調整に努めてまいりたい。

◆山本陽子議員(共産)/その姿勢についてはそのように述べていただいたとしても、その手続きがこれでは、不公正、不公平と言わざるをえないと思う。地域の課題の解決は、仁和寺門前まちづくり協議会の方が再度、「私には意見聞かれてない」と言われた方も入って、再度どのように空地を活用させていくのかを、別途、課題解決のために京都市はサポートすべきであって、いま多くのみなさんが長い歴史の中でこの地域をいまこそ守らなあかんと声をあげておられる、ホテル計画の建設中止というご要望はぜひ重く受け止めていただいて、上質宿泊誘致制度は廃止をして、陳情項目1にある、「大規模ホテルを誘致することは直ちにやめる」ということ、ぜひ京都市は重く受け止めていただきたい。このままの手続きでは、京都市の制度、その手続きの大きな問題が問われていくことになる。これを無視して進めることがあってはならない。このことを指摘して質疑を終わらせていただく。

(→北川・観光戦略担当部長)いま委員から協議会の合意のあり方とか、承認された、されていないというご質問いただいたが、まだ今の時点では、上質宿泊計画も出てきていないというような状況なので、その協議会の中でどのように意思決定がなされたとか、そういうものについては、我々もいまなかなか知り得ないような状況。ただ一方で、事業者については、3年以上地元と協議を進めてきたところ。そのような中で、もちろんこの上質宿泊制度以降は、建築基準法であったり美観風致審議会のような専門の見地があるが、この上質宿泊制度の中ででも、住民の方とお話しながら、例えば地域の景観を乱さないようセットバックをされたり、人通りの少ない時間や夜間の安全を守るために防犯カメラを設置されたり、また、陳情でもあるが、世界遺産バッファゾーンの保全ということで仁和寺の境内とか双ヶ丘の豊かな自然、つながりを意識するために中央部に建物を配置したり、境界側に庭を設けるなど、いうような取り組みがなされているというところは事実としてお伝えさせていただきたいと考えている。

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◆天方ひろゆき議員(民主)/私は西京区選出だから右京区については門前協議会のみなさんが議論されたことについて逐一詳細までは認識がもちろんできないが、この御室の周辺については、私もちょっと近い親戚がおり、双ヶ丘のお山の上まで登り、仁和寺や妙心寺などその景観を見渡したり、ワンちゃんの散歩もこの御室でさしていただいたり。

この地域については、仁和寺の山門通北側あたりは三叉路になっており、オリエントコーポレーションさんがお持ちのマンション風の建物があったり、1階が医院になっており、3階建てのいわゆる集合住宅がその近くにあるような地域。もちろんいわゆる一戸建ての、いわゆる閑静な住宅街の中に、それがメインではあるが、おそらくそういう集合マンションについても、建築当時はそこにふさわしいものかどうかというのは、住民のみなさんもいろいろとお思いになった結果、しかしそのマンションも一戸建てのお家と同じようにして、そこに自然に、穏やかな暮らしをしていくうえでの、一つの物件になったというような地域であるかなと思っている。

5年前の、ローソンかな、コンビニ・・・ローソンでしたね、ローソンが、そもそもローソンが、そこでローソンするために、ガソリンスタンドを引っかけて、こういう言い方をしたら失礼ですけども、複合施設でガソリンスタンドを持ってくるという計画だった。当時、大手の金融機関にもお勤めの、まあちょっと、まあいわゆるお偉い方もお住まいで、その方も大きく関わって、この協議会、当時の5年前の協議会はあり、そして「住民の暮らしを中心に考えてほしい」というような中で展開をされていたと思っている。

おそらく、何もかも反対というような主張でこの協議会がされてきたわけではないというふうな認識のもと、結果的には、先ほど住民運動の反対運動が実ってというような言い方をされたが、そのガソリンスタンドについても。そうでなくて、少し政治力がまあ発揮されてですね、そしてその経営者と特定の方の中でも、住民さんがこのようにすごくお気遣いをされているんだというようなことで、お話をされた結果、事業者が撤退をされたというようなことが事実だから、それをその経緯に基づいて、今回もこれだけ住民が反対しているんだからこれはダメだというような、そういう議論にはならないでほしいなと思っている。

確かに、事業者がポスティングに来た、説明にそれぞれ来た、その時に自分の所在地が分かるところで物を言っていくということは、なかなかしにくいことだというふうには思うが、しかしそこは、協議会をつくり、協議会の一員として、本当の意味での住民力で、そこを通して個人の意見を言っていくということが住民力だから、そういうことをもって反対運動が全体の声だというようなところで展開していただくと、そこにお住まいの、本当の意味での全体の住民の方から、なかなか理解がされにくいんじゃないかと、そういうふうに思っている。

そもそも、都市計画の上での用途規制は、ちょっとすいません、単純ですけど、基本的にどういう用途規制がかかっているか、ちょっとあらためてお尋ねしたい。

(→北川・観光戦略担当部長)この地域においては、仁和寺門前へのホテル計画の立地については、第一種低層と第一種住居地域ということで、基本的にはホテルが制限されるというところではあるが、ただ一方で、住環境を悪化させる恐れがないとか、そういう都市計画部局になるが、そういうような建築審査会等々の手続きを踏まえて通過したものについては、こういうホテルについても建てれるというような制度になっている。先生おっしゃる通り、協議会の中での議論というのもしっかり重視しないといけないと考えている。先ほどの点だが、3000㎡未満であればOKのところ。

そのうえで、協議会の意見もしっかりと重視しないといけないところだし、いままだ申請が出てきていないところだが、いまお聞きしている内容としては、やはりこのまま空き地のまま維持してしまうと、不法投棄とかも考えられるというところがあるので、そういうような形にならないように、協議会の方々も事業者もがんばっていただいているところなので、そういう点を踏まえて我々も橋渡し、調整していかないといけないと考えている。

◆天方ひろゆき議員(民主)/今も委員のみなさんから質問がある中で、「空き地のままやったら」というようなことで、景観とか住環境としては、まあそう、そのようには思うが、しかし空き地といわれるものについても、これは所有者がもちろんおられるわけだから、多数によって、住民さんが「空き地は空き地のままではダメや」ということも、これまた一方では違う話だが、しかし、しっかりと今回、ホテルを建てる共立メンテナンスさんが、こうやって3年に渡って、いろいろと、中高層条例ですねこれは基づいてお話をされていると思うが、丁寧に、住民のみなさんが何をお考えになっておられるかということについて、しっかりと把握をするということが、ホテルを建てる業者としても大変重要。つまりその計画、ホテルが建って、それ以降どういう営業をされていくか、これはこういう経緯のもとに、住民のみなさんがこういうふうに考えておられるという認識のもとに、そこのホテルのいわゆる支配人の方が、従業員さんやお客さんに、ある意味、上質に宿泊をしていただきながら、しっかりと指導も、指導って言ったら言葉に語弊あるが、こういうふうなルールでこのホテルを利用してくださいねと、やっていただくことが、大変重要やと思います。ホテルが出来上がったからあと知らんわて、そんなことはもう絶対許されませんので、このいま、京都市が中高層条例に基づいて、間に公平感をもって、間に入って、それがどういうふうに住民が考えておられるかをお伝えをするという形でしていただけたらと思っているところ。

住民説明会、事業説明会についても、必ずしも参加をいただいてそして説明するということでなく、本当に近隣にポスティングするだけをして、そして「意見があったら言ってね」だけでもこれ法令上は許されると聞いてますから、そういう方向でホテル業者がやっていくんでなくて、より丁寧にここはドンと構えて、住民のみなさんと引き続き、いろいろと丁寧にやっていくということで、お願いしたいと思っている。

共立メンテナンスさんは、阪急嵐山線の嵐山駅前についても、10年くらい前ですかね、宿泊施設をされている。あそこも周りは住宅が、必ずしも多くないけれども、景観という意味でも、その駅前からは渡月橋など、ああいうその周辺を見渡せるような位置にある中、上手に結果的にはホテルが建ったというふうに思う。ですから今回も地下1階の地上3階建てのホテルだから、出来上がった際には、山門前というが、上手に景観に溶け込んで、やっていける可能性ということを、住民のみなさんにも知らせていく、間に入って知らせていくというようなことで、京都市のほうも取り組みを進めていただけたらと思うので、よろしくお願いしますが、意見あればお聞きして終わります。

(→北川・観光戦略担当部長)ありがとうございます。ポスティングについて、意見照会について、ご意見いただいた。我々も事業者と住民の方々との間について取り持っているが、やはりいろんな合意形成の手段があると思う。その中で事業者の方は、8月には37名ほどの意見があった中で、少しずつ減らしていっているというような状況。反対される方に対しても、しっかりそのような説明を尽くして、ご理解だんだんいただいていくようなやり方っていうのは非常に有効かな、まだ出てきてないので評価ではないが、一般論として、有効ではないかなと思うし、3年来協議している中では、説明会等々も行ったので、そういう意味では、どちらも選べるような合意形成等々を進めてきたのではないかなと考えている。

委員ご指摘の中高層条例ではなくて、上質宿泊施設制度だが、これについてもしっかり、我々の制度なので、先ほどご指摘いただいたホテル建った後も、しっかりとまあいろいろ、意見交換しながら、我々の制度の中でも、状況報告等求めるものもあるので、そういうものを使いながら、建った後も指導等していきたいと、まあ法律上の拘束力はないがそういう形でできる限り良いものを維持していくというふうにしたい。

2021年3月22日【産業交通水道委】産業観光局/陳情審査「仁和寺前のホテル建設計画の中止」

(更新日:2021年03月22日)