◆やまね智史
伏見区選出のやまね智史です。私は日本共産党京都市会議員団を代表し市長に質問致します。
1.「大学のまち・学生のまち」にふさわしい学生・若者支援を
【学生の学ぶ権利と生活を保障することは自治体の重要な責任】
まず初めに、新型コロナの影響により困窮する学生・若者に対し、「大学のまち・学生のまち京都」にふさわしい支援を行うことについてです。
8月19日、立命館大学の学生新聞が、約1400人の学生が回答したアンケート調査の結果として「約10人に1人が退学を視野に、4人に1人が休学を視野に入れている」と発表したことは、日本中に衝撃を与えました。学生団体「FREE京都」の調査でも「京都の学生の4人に1人が休学、あるいは退学を考えている」との結果であり、重大な事態です。
「バイト収入減で学費や下宿先の家賃が払えない」「オンライン授業対応のため新たな経済的負担が発生」「サークルの新歓も中止」「大学の施設が思うように利用できず卒論が進まない」「実習や留学もできず不安」「就活も思うようにできない」など、学生のみなさんはいくつもの困難に直面しています。
若者が学ぶ機会を奪われる、制限されることは、若者本人だけでなく社会にとって大きな損失です。市長は「京都の学生の4人に1人が休学、あるいは退学を視野に入れている」事態をどう受け止めておられますか。学生の学ぶ権利と生活を保障することは、国はもとより、自治体の重要な責任であると考えますがいかがですか。答弁を求めます。
【市独自の実態調査、学生への生活支援を】
この春京都で一人暮らしを始めた新入生の方は「4月から大学生活が始まる、バイトもしようと思っていました。ところが大学の授業もアルバイトも、当たり前のようにあると思っていたものがなくなってしまった。友達をつくることもできず孤独に過ごしている新入生も多いです。このような時に自治体の公的支援があれば安心できます」と語られました。
京都市内の大学で非常勤講師をされている方は「GoToキャンペーンよりもやるべきことがあるのではないか」「学生たちはバイトもできず、勉強も就活も思うようにできず、街に出れば若者が悪いように言われ、悩んでいます。下宿に閉じこもっている学生も多い。学生は自分たちが忘れられているという思いです。こういう時に京都市が具体的支援で『あなたたちのことを行政は見捨てない』というメッセージを発信してほしい。大学のまちなら、なおさらです」と語られました。そこで、以下の点について、京都市が取り組むよう強く求めます。
一点目は、困難を抱えている学生から直接声を集め、実状を把握することです。政府が「学生支援緊急給付金」で想定したのは全学生の約10人に1人でした。しかし冒頭紹介した学生団体の調査では「退学や休学を考える学生は4人に1人」という結果です。明らかにギャップがあります。今こそ適切な実態把握が必要です。新型コロナの影響による学生アルバイトのシフト削減や、内定取消など就職活動への影響調査については、すでに常任委員会で「実現に向けた検討を進めている」と答弁されています。速やかな実施を求めますがいかがですか。お答え下さい。
加えて、学生支援緊急給付金について、大学ごとに説明内容や申請状況が異なる事態が生まれました。「要件をほとんど満たしているにも関わらず受給できなかった」との声も寄せられています。京都市内の大学における学生支援緊急給付金の申請状況、支援から漏れた学生の実態等について、京都市として調査を行うべきと考えますがいかがですか。お答え下さい。
二点目は、困窮する学生生活への直接支援です。本人や保護者の収入減、オンライン対応のための臨時出費で学生の経済状況は悪化しています。「返済が不安だけど奨学金を借りることにした」という学生も生まれています。この春、京都に来た専門学校生の方からは、「実家からの仕送りは食費のみ、学費と下宿先の家賃はバイト代と奨学金で賄う予定でした。ところがコロナの影響でバイトが見つからず、このままでは家賃を払えません」との相談が寄せられています。今こそ市独自の給付型奨学金や奨学金返済を支援する制度をつくるべきではありませんか。そして、京都で学ぶ学生が、家賃を払えないために学業をあきらめることがないよう、市独自の家賃補助制度創設や市営住宅の活用などを検討すべきではありませんか。答弁を求めます。
また、収入減で満足な食事を取ることができない学生も生まれています。健康的な学生生活が送れるよう、京都市の中央卸売市場や市内の農家とも連携し、学生への食料支援を検討すべきです。食料配布や現金支給など、学生生活を独自に支援する大学や団体に対し本市が経費の一部負担を行う、あるいは、地域の飲食店や商店街が取り組む学割サービスに対し京都市が支援を行うべきではありませんか。答弁を求めます。
【国に教育予算の抜本的増額を求めよ】
学生支援に関わってもう一点重要なことは、そもそも大学の学費が高く、多くの若者と家計を苦しめてきたことです。非正規雇用の増大で国民1人当たりの可処分所得は下がり続け、さらに消費税増税が家計に重くのしかかる中でも、大学の学費は上がり続け、国立大学授業料の標準額は53万円、私立大学の授業料平均額は90万円を超え、文系で100万円、理系で150万円を超える授業料が普通となっています。
2012年、当時の外務大臣は、高等教育無償化への取り組みを国会の場で約束しました。ところが問題は未だに解決していません。もし高等教育が無償化されていたら、今回の新型コロナの影響で起こった学生の困窮は、少しでも防げていたのではないか、そのことを立ち返って考える必要があるのではないでしょうか。市長はどうお考えですか。答弁を求めます。
今こそ全ての学生を対象に「一律学費半額」が行えるよう、国に対し、京都市立芸大など公立大学への基盤的経費支援制度を復活させること、また、国立大学への運営費交付金、および私立大学への私学助成金の抜本的増額を求めるべきではありませんか。以上、まずここまでの答弁を求めます。
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(➡岡田憲和・副市長)
コロナ禍における学生支援についてでございます。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、多くの学生さんが経済的な困難や、不安を抱えている状況にあり、安心して学ぶ環境を維持・充実させることが不可欠であると、認識をしております。こうした状況への対応は、全国の学生に関わる重大な課題であり、直接的な経済支援につきましては、国において統一的に対応する必要があるものと考えております。
本市としてはこの間、市内の各大学、学生さんとの意見交換なども踏まえまして、修学にかかる経済的負担軽減策の充実などを、国に対してくり返し要望しており、国においては各大学が実施する授業料減免等に対する支援や、経済的理由により学びの継続が困難な学生に対し、各大学が推薦すべきと判断した全ての学生に支援を行き届かせるとの方針のもと、1人当たり最大20万円を支給する「学生支援緊急給付金」に取り組んでおります。
加えて、本市独自の取組として、キャンパスプラザ京都において、Wi-Fi環境が整備された学習スペースを設けますとともに、その運営の補助として学生のスタッフさんを雇用致しました。また、経済状況が悪化した学生さんを、市役所や市立学校における非常勤職員等として、直接雇用しますとともに、民間企業と連携をし、感染防止対策を明記したアルバイト情報を紹介する特設サイトを開設するなど、コロナ禍の影響を受けた学生さん等が、アルバイト探しをするうえで抱く不安を解消しつつ、学生の働く機会の創出につなげております。
コロナ禍による学生の就職活動への影響につきましては、京都府と連携をして、アンケート調査を実施を致しております。現在集計・分析作業を進めているところであり、奨学金の返済支援につきましても市・府・経済界の連携により創設をした「就労・奨学金返済一体型支援事業」の活用促進に努めております。さらには、学生を含む週20時間以上勤務の非正規雇用労働者を雇用する事業者への補助制度の創設の実施など、コロナ禍における学生支援に、様々な取組を現在進めております。
加えまして、市内39の大学、短期大学を対象とした1校当たり約500万円、総額約2億円の補助制度も創設し、メンタルケアや授業理解促進など、各大学の学生支援の取組も後押しをしているところでございます。
質問の中で、いろいろ触れていただきましたけれども、今後とも国や府、各大学、大学コンソーシアム京都等とも連携をし、コロナ禍における学生さんの支援に全力で取り組んでまいります。以上でございます。
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(➡下間健之・総合企画局長)
大学の教育費等についてでございます。学ぶ意欲のある学生のみなさんが、経済的理由により大学での学びを断念することがないよう、教育費の負担軽減を図ることは重要な課題であります。本市としては、学生が出身地を越えて進学する状況を踏まえれば、直接的な経済支援については、国において統一的に対応すべきと考えております。
本市ではこの間、国に対して、大学運営の基盤的経費の充実とともに、学生の修学にかかる経済負担軽減策、要望を重ねており、国においては今年度、給付型奨学金等の額及び対象者を大幅に拡大する「修学支援新制度」が創設され、給付型奨学金は昨年度の140億円から2354億円へと約17倍の予算措置がされるなど、充実が図られてきております。今後とも、学生が安心して学べる環境づくりに努めるとともに、国に対し、引き続き強く要望してまいります。以上でございます。
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◆やまね智史
学生支援について、市における臨時雇用や実態調査の言及はありましたが、全体としてこれまでの域を出ない答弁であったことは大変残念です。
学生のみなさんは市内人口の10%を占める、文字通り「大学のまち・学生のまち京都」を担い支える存在です。にもかかわらず、2019年度の決算を見ると、一般会計の歳出7704億9400万円のうち学生関連の主な支出は約2億9000万円、全体の0.037%にすぎないばかりか、その内容も、学生の生活を直接支援するという視点がほとんどありません。市の大学政策に学生の生活支援をしっかり位置付け、予算を確保することを強く求めます。
2.文化芸術関係者への支援を
【文化芸術活動の意義と、国の予算への認識】
次に文化芸術関係者への支援について質問します。私はこの間、コロナ危機によって様々な影響・損失を受けながら、この京都で懸命に活動されているみなさんにお話をうかがってきました。ライブハウス・クラブ・小劇場・ダンススタジオなど運営・経営されているみなさん、ダンサーや音楽家、俳優、照明・音響スタッフ、舞台監督の方々など、いずれも大変な事態に直面されています。
「2月後半からライブが無くなり、3月~6月は何もない状態だった。海外ツアーや全国ツアーは全部中止。50本以上仕事が無くなった」「照明・音響など技術スタッフが業界を離れてしまえば、劇場を再開した時も活動が困難になる」「当面の仕事がキャンセルになっただけでなく、来年以降どうなるのかが全く見通せず不安」「レッスンの再開をみんな待ってるかと思ったが、この機会にやめる人もいた。本番がないというのは、目標に向かう楽しみがなく、モチベーションを保つのが難しい」など、仕事・収入の激減とともに、将来への不安、精神面でも追いつめられる実情がうかがえました。
同時に、共通して語られたのが「文化芸術活動が持つ意義」についてです。「ホールでピアノやダンスの発表会など行うことが喜びや文化の発信になる。その表現の場が奪われることは大きな社会的損失だ」「音楽は衣食住ではない部分で生きるために必要なこと。『自粛中や仕事がつらい時に心の支えになった』との声を聞いて、自分の仕事の意味を見つめ直した」との声も寄せられました。
「『ダンスがあるからがんばれる』『レッスンがないと鬱になる』という生徒もいます。日本では子どもたちが自己表現できる場が少ない。だからこそ自分の好きな音楽を聴いたりダンスをするのがすごく大事なことなんです。感動、涙、拍手も含めて自己表現。ダンスのレッスンに来たら、自分の存在を感じられる。生きる力になる。それがエンターテインメントの力なんです」と話された方もおられました。
そこで市長にお聞きします。日本国憲法第25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と明記されています。文化芸術活動は、けして一部の人のものではない、贅沢品などではない、人間が生きるために必要不可欠なものだと考えますがいかがでしょうか。認識をお聞かせ下さい。
また、国の「文化芸術活動の継続支援事業」は、公演中止などへの補填ではないこと、今後新たに立ち上げる公演などが対象で活動費の3分の1または4分の1は自己負担が必要なこと、申請が複雑なことからあきらめるケースもあり、日本俳優連合のアンケートでは「6割が申請していない」という状況です。そもそも我が国の文化予算は、国家予算に占める割合で見れば、ドイツの4分の1、フランスの8分の1、韓国の10分の1という水準です。市長は国の文化予算が少なすぎるという認識をお持ちですか。また、国の「文化芸術活動の継続支援事業」について改善を求めるべきではありませんか。答弁を求めます。
【市独自の支援策について】
京都市による具体的支援について聞きます。一つ目に「文化芸術関係者の生活保障」についてです。京都市が実施した「芸術家等の活動状況に関するアンケート調査」の結果でも、約1400件の回答のうち「9割を超える個人、団体・事業所が、イベント等の延期・中止を経験」し、「損失額の平均は個人で約88万円、団体・事業所で約364万円」、「必要とする支援は『損失の補てん』が最も多い」ことが示されました。この実態と要望にどう応えるかが問われています。
「素晴らしい技術をつなぎとめるには、明日生きるお金が必要だ」「公演やイベントは1年2年先を見越して計画する。長期的な視点と継続した支援が必要だ」「京都市の『文化芸術活動再開への挑戦サポート交付金』の採択件数はたった11件。あまりに少なすぎる」「京都市の支援は新規事業に限られる。子どもたちのパフォーマンスの場をつくるなど長年地道に取り組んできた活動がなぜ支援してもらえないのか」などの声が寄せられています。
コロナ危機の収束が見通せない中、京都市のアンケート報告でも述べているように「継続的に文化芸術活動を支援」することが必要です。そこでお聞きします。「文化芸術関係者への実態調査」を今後も継続して行うとともに、関係者のみなさんに喜ばれた「京都市文化芸術活動緊急奨励金」を、新規事業だけでなく、これまで行われてきた取組も対象にするなど改善・発展させ、すぐにでも追加実施するべきではありませんか。
二つ目に、ライブハウス・クラブ・小劇場・ダンススタジオなど「発表・鑑賞拠点」への支援についてです。アーティストのみなさんも、市民のみなさんも、活動できる場所を切実に求めておられます。同時に、イベントを行う際、ガイドラインに従ってあらかじめ客席や入場者を減らせば、減収となることは避けられません。7月特別市会と今市会の補正予算で「発表・鑑賞拠点」への支援が一部具体化されたことは一歩前進ですが、けして十分ではありません。
例えば7月補正の「文化芸術活動再開への発表・鑑賞拠点継続支援金」は、「練習や稽古、録音・収録が目的の施設」や「専ら収蔵品等を展示する美術館・博物館等」は対象外で、予算額の上限はクラウドファンディング分を含めても2000万円、それを均等割交付、さらに交付時期は12月頃というものです。少なくない施設が存続の危機に直面するなかで、あまりに不十分と言わなければなりません。「舞台芸術はリハーサルや練習も含めて成り立つもので、練習場所が対象にならないのはおかしい」との声も寄せられています。
今議会の補正「感染拡大防止と文化芸術活動の両立支援補助金」の「施設使用料等補助」は、先着順で1回きり、これまでに行われた取組や、学芸会・発表会などは対象外です。
「文化芸術活動の発表・鑑賞拠点への支援」や「施設利用料等の補助」については、対象となる施設や事業を広げること、また、これまで行われた取組も対象とし過去にさかのぼって遡求できるようにすること、そのために予算を抜本的に拡充し実施すべきと考えますがいかがですか。答弁を求めます。
【京都こども文化会館の存続を】
文化芸術活動に関わって、もう一点重要なことは、京都市の公共施設で市民や子どもたちの文化芸術活動の場を保障することです。その点で5月14日、京都市と京都府が「京都こども文化会館を今年11月末までに閉館する」と発表したことは重大です。
京都こども文化会館は「青少年の健全育成、すぐれた文化芸術に接する機会の保障、青少年が自ら文化芸術を創造し発表できる場を提供する」ため、「京都府と京都市が協力して設置」したものであり、全国に誇るべき施設です。「建物の老朽化で安全面が確保できなくなったから閉館する」など、京都市の責任を放棄するものであり、断じて許されません。必要な設備更新や改修を行うことこそ京都市の責任ではありませんか。
京都市は「こども文化会館の改修には約10億円、建て替えには20億円かかる」としていますが、その一方、文化庁移転に伴う庁舎整備は数十億円と言われます。文化庁の庁舎整備を行いながら、子どもの文化活動のための施設を無くしたのでは、全くの本末転倒、およそ文化芸術都市の名に値しません。
コロナ危機のもと、子どもたちは様々な活動の機会をこころ待ちにしています。子どもを含む利用者や関係者、市民の声を受け止め、京都こども文化会館の閉館方針は撤回すべきです。今こそ京都府と再度協議し、必要な改修や建て替えのための検討を行うべきです。答弁を求めます。
3.呼び込み型観光政策の見直しを
【外需頼み、インバウンドをあてこむ観光政策・経済政策の転換を】
次に、呼び込み型の観光政策を今こそ見直し、市民生活最優先、地域循環型の京都経済をつくるという問題です。
先日、伏見稲荷界隈のお店を訪ねました。どこでも共通していたのは「ようやく元の伏見稲荷に戻った感じ」「京都市は海外からの観光ばかりに力を入れていていいのか。もっと市民生活に目を向けるべき」との声です。
ある老舗のご主人は「観光客であふれていた時は、伏見稲荷がお参りの場でなくただの撮影スポットになっていた」「民泊が乱立し、白タクが長時間何台も店の前に停まり、混雑と排気ガスでなじみのお客さんも離れてしまった」と話されました。
別のお店では「観光客目当てのお店が乱立し地元の人が生鮮食品や生活雑貨を買うお店がどんどんなくなりました」「うちは地元の方が買いに来てくれ、持ち家で家賃もかからず、家族経営なので何とかやっていけてます」と話されました。
昔ながらの旅館を経営されている方は「質の悪い簡易宿所の乱立で環境が悪化し、昔からのお客さんが離れてしまった」「土地を売ってくれと事業者が頻繁に訪ねてくるようになった。自分たちは昔からここに住み商売をしているのに、まるで追い出されるような気分。ここに住んでいてはいけないのかという気持ちになった」と話されました。
京都市の呼び込み一辺倒の観光政策が、観光客で賑わう地域でも深刻な矛盾、経済的影響をつくり出してきたのです。「観光」とは、外から宿泊施設や観光客を呼び込めば成り立つというものではありません。そこに暮らす人々の暮らしと住環境、地場産業、歴史的景観や文化財が守られてこそ成り立つものです。今こそ深刻な矛盾を生み出した外需頼み、海外からのインバウンドをあてこむ観光政策・経済政策を転換すべきと考えますがいかがですか。答弁を求めます。
【「宿泊施設拡充・誘致方針」は撤回し、住環境守るルールづくりこそ】
新型コロナの感染拡大が収束せず、PCR検査も十分に拡充されない中で、政府はGoToトラベルキャンペーンを始めました。読売新聞の世論調査では、GoToキャンペーンの開始時期について「適切だった」が10%、「適切でなかった」が85%との結果でした。独立行政法人・中小企業基盤整備機構が発表した全国の中小企業者等2000社へのアンケートでは、宿泊・飲食などサービス業で「プラスの効果を感じている」がわずか5.3%、「分からない・どちらとも言えない」が19.5%、「効果を感じていない」が75.1%でした。
そもそも、中小の旅館・ホテルは登録が進んでおらず、1兆円を超える巨大事業の恩恵が大手事業者に偏り、経済対策としても全く成功していません。京都市にいま求められているのは、国のGoToキャンペーンに飛びつくことではなく、「国民の大事な税金は、医療と暮らし、観光業界も含めた事業者への直接支援にあてるべき」と国に迫ることではありませんか。答弁を求めます。
今年度は京都市の次期「観光振興計画」の策定年度ですが、政府はこの期に及んでも「2030年に6000万人」、コロナ以前の倍規模という外国人観光客の誘致目標を変えていません。また、京都市観光協会が示したロードマップには、今年度末には日本人観光客がほぼ回復し、来年12月には外国人観光客もコロナ以前に回復する「目標水準」が書かれています。いずれもあまりに非現実的なものと言わなければなりません。今やインバウンドブームの継続を前提に策定された「観光振興計画」そのものが破たんし、目標としてのリアリティを失い、これまでの内容を大きく見直すべき局面にあります。
京都市の次期「観光振興計画」策定にあたっては、観光客と宿泊施設を激増させた「京都市宿泊施設拡充・誘致方針」は撤回し、市民生活と住環境、京都の歴史的景観や文化財、市内産業を守ることを最優先に位置付ける計画とすべきではありませんか。お答え下さい。そして、新景観政策の高さ規制は緩和しないこと、市民の財産である学校跡地のホテル転用はやめることも強く求めておきます。
また、コロナ収束後、再び国内外の観光客を受け入れ、「住んで良し、訪れて良し」の京都市とするためには、「全ての宿泊施設に管理者常駐を義務付ける」「路地奥・細街路・住宅密集地では宿泊施設を許可しない」「周辺住民との協議・合意を条件にする」など、今こそ国内外の都市ですでに実施されている住環境を守るルールを条例に位置付けるべきではありませんか。答弁を求めます。
【景観や住環境を破壊する宿泊施設計画は「お断り」を】
京都市の宿泊施設が過剰供給状態となっていることは、すでにコロナ以前から明らかでした。市長も昨年来「宿泊施設は数としては満たされている」「市民の安心・安全、地域文化の継承を重要視しない宿泊施設は今後お断りしたい」と発言されてきました。そこで最後に、あらためて、市民生活と住環境を守る京都市の姿勢について、具体的事例でお聞きします。
一つは、世界遺産・仁和寺の門前で、共立メンテナンスという事業者が巨大ホテルを計画している問題です。当該地域はその多くが第一種住居地域であり、建築基準法に従えば本来3000㎡以上の旅館業施設は建てられません。ところが京都市は、法的拘束力がなく要綱にすぎない「上質宿泊施設誘致制度」でお墨付きを与え、建築基準法で規制されている2倍近くの面積、延べ5800㎡、客室数約60室以上ものホテル計画を、特例で進めようと事業者へアドバイスしています。現在の計画では、仁和寺の正面・仁王門階段下からの西山への眺望は遮られ、沿道からの双ヶ岡への景観も奪われます。京都の歴史的景観を破壊し「京都が京都でなくなる」事態をつくり出しているのは、市長自身ではありませんか。
また、9月19日付京都新聞でも報じられたように、事業者が意見聴取のための書面を配布した地域を市民団体の方が訪問したところ、地域約200軒の過半数106軒の方が回答され、ホテル計画への賛成はわずか8軒、反対は50軒、合意形成の手法に納得しているのはたった2軒、納得していないが77軒と、周辺にお住まいの方の合意が形成されているとは到底言えない事実も明らかとなりました。仁和寺門前の地域では、建築基準法の特例を認めず、3000㎡以上のホテル計画は認めるべきではないと考えますがいかがですか。
もう一つは、私の地元伏見区の深草祓川町、住宅密集地・袋小路の場所で、レ・コネクションという事業者が簡易宿所を計画している問題です。これまでも周辺住民のみなさんから切実な訴えが、陳情という形で京都市会にもくり返し寄せられてきました。「20人規模の施設でありながら管理者が常駐しない」「火災や地震発生時の危機管理、コロナ禍における感染症対策について説明を求めても無回答」「住民の問い合わせを長期間無視する」「説明会では事業者が笑みを浮かべながら『その質問に答える意味あります?』と住民をバカにした態度を取る」「住民側は工事について物理的な妨害行為を一切していないにもかかわらず損害賠償請求をちらつかせる脅しめいた文書を送りつけてくる」「住民の私有地を勝手に工事車両が通り器物破損が発生する」などなどの状況で、住民のみなさんは事業者の横暴な対応に日々、驚きと恐怖を感じておられます。
市長はこの現状が市民の生活環境と調和していると思いますか。市長は「市民の安心・安全、地域文化の継承を重要視しない宿泊施設はお断り」と言いながら、周辺住民とトラブルをくり返す事業者の計画を認めるのですか。このような事業者の計画はキッパリお断りする姿勢を示していただきたい。いかがですか。
以上、今こそ京都市が市民生活と住環境を守る立場に立つことを重ねて求め、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
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(➡門川大作・市長)
やまね智史議員のご質問にお答え致します。新型コロナを受けた観光政策についてであります。京都市におきましてはこの間、地域との調和を最重点に、観光振興を通じた地域経済の活性化や雇用の創出、地域固有の文化、文化財・伝統産業・景観の継承等を重視し、市民の皆様の生活の豊かさを目指した幅広い施策に関係者とともに取り組んでまいりました。修学旅行をはじめとする国内観光の誘致にもしっかりと取り組んでおり、インバウンドに特化したということは全くありませんが、観光客数の17%であるインバウンドの消費額は、観光客全体の約3割を占めており、京都経済に与える影響は大きいものがございます。
国のGoToトラベルキャンペーンは、感染防止対策を講じている店舗等を参加条件とするとともに、観光客にも啓発を行うなどにより、安心で安全な旅のスタイルの定着と、厳しい状況にある地域の飲食店や旅館・ホテル・小売店など、関係産業の回復を図る取組であり、本市と致しましても引き続き観光関連団体と一体となって、多くの市内の事業者のみなさんがGoToトラベルキャンペーンの効果を充分に取り込めるよう支援してまいります。
合わせまして、コロナ以前から生じておりました、一部地域の混雑やマナーの問題、宿泊施設の急増に伴う課題等につきましては、今日まで50の事業について全庁あげて、また地域とともに取り組んでいるところであります。とりわけ宿泊施設につきましては、徹底した違法民泊根絶対策はもとより、カプセルホテル等を制限する地区計画の策定といった地域主体のまちづくりの支援等を行うとともに、宿泊施設設置に際して、構想段階から地域への事前説明手続きの拡充や、一般客室内部まで踏み込んだバリアフリーの義務化など、さらなる拡充に向けた取組を強力に進めております。
次期「観光振興計画」につきましては、これまでの取組を総括致しまして、多くの方がの英知を結集し、観光課題解決先進都市として、より観光が持続可能なものになることを目指しまして、京都観光の全体のあるべき方向性を示しまして、ウィズコロナ時代のモデルとなるものとなるよう、策定を進めてまいります。以下、副市長及び関係理事者がご答弁申し上げます。
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(➡村上圭子・副市長)
私からは、新型コロナを受けた、文化芸術活動の支援、及び地域と調和した宿泊施設についてお答え致します。
文化芸術活動に対する支援についてでございます。人が心豊かに生きるためには、文化芸術は必要不可欠であり、とりわけコロナ禍において、その役割は極めて重要であると認識しております。そこで、文化芸術立国の実現に向けて、機能を強化された新文化庁が移転する文化首都京都として、これまでから国に文化予算の拡充を要望しており、引き続き制度改善も含め必要な要望を行ってまいります。
本市では、本年4月、全国に先駆けて緊急奨励金制度を創設し、新規事業のみならず、制作や調査研究など幅広い取組に上限30万円の奨励金を速やかに交付し、各方面から高い評価をいただいております。5月には、自治体初となるアンケート調査を実施し、文化芸術関係者のニーズを的確にとらえ、文化芸術総合支援パッケージを7月補正予算で実施しております。
さらに、昨日の本会議でご議決いただいた「感染拡大防止と文化芸術活動の両立支援補助金」など、緊急奨励金の追加実施という形ではなく、文化芸術関係者の置かれている状況に寄り添い、切れ目のない支援策を展開しているところでございます。
また、発表・鑑賞拠点への支援や、施設使用料補助の対象につきましても、限られた財源を最大限有効に活用する観点から、文化芸術にふれる機会の創出や、文化芸術活動の継続・再開、民間も含めた施設利用の促進など、多くの関係者に支援が届くよう制度設計しているものでございます。
引き続き、文化芸術関係者の状況を的確に把握し、全国の先頭に立ち、文化芸術の灯をしっかりと灯し続けてまいります。
次に、地域と調和した宿泊施設についてでございます。本市では市民生活を最重要視し、市民の皆様と宿泊者の安心安全の確保や、京都にふさわしい良質な宿泊環境を整備するため、法律の範囲内という限界ぎりぎりまで挑戦した、全国一厳しい条例の制定をはじめとした、独自ルールを定め、全庁あげて宿泊施設の適正な運営がなされるよう取り組んでおります。
市民の生活環境を脅かす違法な民泊は断じて許さないという強い決意のもと、徹底的に指導に取り組んできた結果、平成28年4月からこれまでに、通報があった2647施設のうち、99%の施設が営業中止等に至っており、本年8月末現在、調査指導中の施設は5件となり、苦情件数も激減するなど、大きな成果をあげております。
旅館業の新規開設にあたりましては、施設が構造設備基準に適合しており、公衆衛生上適当な場所にある時は許可するものとされており、法令に反しないものを本市として恣意的に不許可とすることはできません。しかしながら、住民の理解を得ていくことは極めて重要であることから、様々な取組を本市独自に行っており、具体的には、旅館業法の許可申請の20日前までに施設の概要などを記載した標識を掲示するとともに、近隣住民への事前説明を行うことを、営業者に対し義務付けております。
さらに、地域住民と営業者との間の信頼関係を構築するため、説明会や協定書の締結について助言するほか、地域住民からの求めに応じ、民泊地域支援アドバイザーを派遣するなど、周辺住民の不安やお困りごとを具体的に解消する仕組みも設けております。
また、営業者の施設内駐在に関しても、経過措置期間が終了した本年4月から、既存施設を含めた全ての営業者に適用しており、京町家活用施設など、玄関帳場設置の例外となる場合にも、おおむね10分800m以内の場所に営業者等が駐在することを義務付けております。さらに、本市会におきまして、これを厳格に運用できる条例改正についても提案をしております。
宿泊施設の立地規制に関しましては、建築基準法に基づく用途制限や、接道規定が定められ、また、先ほど市長からも答弁致しましたように、四条繁栄会商店街振興組合の取組によりまして、いわゆるカプセルホテルの制限など、住民意思をまちづくりに直接反映させるための地区計画や、建築協定といった制度の活用も図っており、さらに本市独自となる「宿泊施設の立地に際しての構想段階からの事前説明手続きの充実」や、「宿泊施設の質の向上に向けた一般客室の内部にまで踏み込んだバリアフリー基準のさらなる充実」について、現在パブリックコメントを実施しているところであり、引き続き、本市の独自ルールが確実に守られ、地域住民の皆様と事業との調和がしっかりと確保されるよう、取組を進めてまいります。以上でございます。
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(➡糟谷範子・観光政策監)
仁和寺門前ホテル計画についてでございます。建築基準法によって宿泊施設の立地が制限されている区域においても、宿泊施設の建築は一律に禁止されているわけではありません。周辺の住居の環境を害する恐れがないことなどの一定の条件の下で、建築審査会などにおける審議など所定の手続きを経て許可を受けることで、建築が可能となるものであり、法が予定する正当な判断手法の一つであります。
「上質宿泊施設誘致制度」は、この手続きに入る前の段階で、施設の開業を望む地域や事業者から相談を受けた場合に、その橋渡しを行い、地域との調和を大前提に、地域と事業者の双方にとって、より良い施設となるよう支援するものです。当該計画地は、かつてガソリンスタンドやコンビニの建設が計画されましたが、地域住民の皆様が、景観や風情を守るため、力を合わせて阻止された経過がございます。そのような場所であるからこそ、事業者は、上質宿泊施設誘致制度を活用し、計画初期段階から約3年に渡り、周辺住民と協議を重ね、本年に入ってからも、施設の景観デザインに住民や専門家の意見を取り入れ、さらに改善を図るなど、周辺景観との調和を目指し、丁寧に検討を進められています。
また、計画地は、景観の保全について、高度地区や風致地区等の都市計画制限による厳しい形態意匠の基準が設けられており、美観風致審議会での審議や、上質宿泊施設候補選定のための有識者会議での意見聴取などを通して、専門的な視点からもしっかりと検証してまいります。引き続き、地域に受け入れられ、安全安心の向上や、文化の維持継承につながるよう、調整を進めてまいります。以上でございます。
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(➡久保敦・子ども若者はぐくみ局長)
京都こども文化会館についてでございます。会館につきましては、昭和57年以来、子どもたちの健全育成に重要な役割を果たしてまいりましたが、開設から40年近くが経過するなか、施設・設備の老朽化、近隣に多数の文化施設が整備されてきたことに伴う利用者の減少等の課題が生じておりました。
このため、学識経験者や青少年育成団体、地元関係者で構成する有識者会議でご検討いただき、平成30年9月に提出された「今後のあり方についての報告書」を受け、開館の存続・廃止、双方の観点から府市で慎重に検討を進めてまいりました。その結果、設置当時に比べ、子どもたちが文化芸術に親しむことができる環境が整ってきたなか、耐震性能の不足など、安全面のリスクの高まり、これらの修繕や建替に要する多額の費用なども考慮し、本年11月に返還するとの判断に至ったものであり、閉館を撤回する考えはございません。
また、閉館表明以降、利用者や関係者、地域の皆様には、丁寧に説明を行っており、この方針についてはおおむねご理解をいただいているものと考えております。今後会館は閉館致しますが、文化芸術に親しみながら、子どもや青少年を健やかに育んでいけるよう、府市の関係部局と連携を図り、既存施設も活用しながらソフト面に重点をおいて取り組んでまいります。以上でございます。
2020年9月30日【京都市会・本会議】代表質問
(更新日:2020年09月30日)