陳情審査:「いくらか分からないけどとりあえず購入」では済まされない!あまりに無責任な北陸新幹線延伸計画(2019年12月23日/総務消防委・総合企画局・陳情審査での加藤あい議員の質疑メモ)

◆加藤あい議員/各地で環境影響評価方法書に基づく説明会が機構によって開かれている。参加者からいろいろご意見いただいている。まず「参加者が極めて少ない」「周知が全然されてない」と聞いている。京都市当局として、参加者が少ないことについてどうお考えか。

(→奥井・総合政策室長)事業者である鉄道運輸機構としてもホームページ等で鋭意周知するとともに、京都市としても各区役所・支所において縦覧の機会を設けさせていただいている。環境政策局ホームページでも説明会のご案内させていただいているので、引き続きそういったことにも努めてまいりたい。

◆加藤あい議員/本当に多くの住民の意見を聞くつもりがそもそもあるのか、疑念を抱かざるを得ない状況だと思う。「ホームページに載せてます」ってことでどれだけの方がそれをキャッチして参加されるのか。やはり広く周知・ご案内し参加を呼びかける方策を機構とも相談するべきだ。

「説明会の中身も極めて不十分」「十分影響が分からないのになぜ京都市が延伸を進めるのか」ということも意見として届いている。前回委員会で、「中心市街地を回避する」という表現をめぐって、説明会のやり取りについて事実確認をお願いしたが、今日は議事録も間に合っておらず、説明会のあり方について事実関係を確認する材料がないので、次の機会にこの点は議論したい。説明会の参加の問題、周知の問題は、ぜひ改善していただきたい。求めておく。

陳情者の方は、新たな駅を現京都駅付近の地下に設置することに関連し、その付近とは、歩いて乗り換えできるところと理解されている。これは正しい理解か。

(→奥井・総合政策室長)現時点においては、ルートや駅位置が具体的に絞り込まれている状況ではなく、京都駅付近の地下が具体的にどの場所になるのかが決定されるのは、環境影響評価手続きに基づく調査・予測・評価を経た後になるものと理解している。11月26日公表の方法書においては、事業者としての見解が示されるとともに、国土交通大臣や一般の方からいただいた意見などに対して、事業者としての見解が示されるとともに、これからの環境影響評価において、自然的状況・社会的状況を考慮して調査を進めていく旨が明らかにされている。環境影響評価項目についても、工事中及び工事後の影響要因の区分ごとに水環境・土壌・生態系・温室効果ガスなどの影響要素の区分が細やかに示されており、アセス調査を通して今後検討されていくものと考えている。

◆加藤あい議員/「今確たることは言えない」という答弁だったと思うが、陳情では、「12月3日の説明会で『歩いて乗り換えできるところ』という説明を機構がしている」と書いている。京都市行政として抑えている事実関係と、説明会で言われている中身が整合しない。今の説明でいったら。その点はどうなのか。

(→奥井・総合政策室長)そこは全く整合しないものではなく、機構のほうが方法書で明記している京都駅の考え方については、「京都駅については、周辺は高度に市街地化が進んでいるため、地下駅とする。また、東海道新幹線との結節や在来線や地下鉄烏丸線、観光地へ向かうための路線バス、観光バスとの乗り継ぎを考慮し、現京都駅付近の地下に設置する」と明記されている。具体の、どのあたりの場所に北陸新幹線の駅が設置されるかということについて、今後、環境アセスの評価を踏まえて、検討が進められるものと考えている。

◆加藤あい議員/せやし私が聞いたんは請願者が「歩いて乗り換えできるところ」という理解をされているので、これは正しいのかと質問した。それはどうなんですか。

(→奥井・総合政策室長)説明会におけるちょっとやり取りになるので、そのどういったやり取りがあったかは、現時点確認させてもらってないのでお答えしかねるが、今説明させていただいたように、方法書においては、「現京都駅の付近」と書いているので、そのことを説明されたのではないかと考えている。

◆加藤あい議員/この一つをめぐってもね、十分事実関係を行政が答えられないっていうね。前回委員会で議事録請求したのがまだ届いてないので、ここでこれ以上やり取りしても「確たることは言えない」という答弁は変わらないと思うが、こういう陳情が市民の方から出されて、そこに書かれてることが事実かどうかってことすら行政当局が責任もって説明できないってのは、ちょっとあまりにもお粗末だと思う。説明会の議事録この後出されるってことなので、その時に確認していきたい。

京都駅周辺での防災・環境への影響、負荷は相当大きなものになるであろうと、これも陳情に書いてある。この点は、京都市当局としても同様の認識に立ってるのかどうか、ぜひ聞かせていただきたい。具体的に言えば、京都駅の地下に駅をつくって南部方面と結ぶ、それは必然的に南区を通過する、八条口近辺は駅のすぐ近くが住宅街でもある。今回の方法書で追記された区間で言えば、現行の京都駅を含むエリアは「都市部」「トンネル区間」、つまり大深度のところにトンネルを掘っていくということが想定される。このことの影響がどうなのか。陳情者が言っておられる、相当、環境影響、負荷、大きなものになると市当局としても思っておられるのか。

(→中村・環境政策局環境企画部環境技術担当部長)周辺への影響について、鉄道運輸機構がこれからまさに、詳細な調査を実施し、数年かけて必要なデータを把握していこうとしている段階。どのような影響が予想され、それについてどういう評価をしていくかについては、そういう調査を経たうえで示されるものと認識している。方法書においては、5月に公表された配慮書に対する国土交通大臣の意見や一般の方の意見などに対する事業者見解が示されるとともに、今後、自然的状況・社会的状況を考慮して調査を進めていく旨が明らかにされており、その調査項目についても、工事中及び工事後の環境影響要因の区分ごとに水環境・土壌・生態系・温室効果ガスなどの影響要素の区分が細やかに示されている。本市としては、今後こうした詳細な調査を経た環境影響評価の結果が明らかになった際に、京都市環境影響評価審査会の意見をお聞きしながら、法律上、方法書以降の手続きにおいて、鉄道運輸機構に対する窓口となる京都府に対し、必要な意見をしっかり述べてまいりたいと考えている。

◆加藤あい議員/京都駅の付近が先ほど述べたような様相になれば、大型ダンプが何年も走り回ることが想像できる。生活や観光にも打撃を与えるのではないかと思うがどうか。

(→中村・環境政策局環境企画部環境技術担当部長)くり返しになるが、現在機構のほうが、そのようなことについてのデータを把握するためにこれから調査をしようとしている段階なので、その評価結果を見たうえで、私どもは判断して必要な意見を述べていきたいと考えている。

◆加藤あい議員/「機構のほうが」「機構のほうが」「機構のほうが」って話に尽きる。そうやって事態を進めていく中で、だいたい手続きとしては完了して、延伸ありきで対応していくと、まあお願いレベルの要望は出しますよっていうね、これで本当にいいのかと。決算の9月市会でも申し上げたが、東京の外環道のところで大深度地下トンネル、建設現場の地上を流れる川で水泡が発生し、酸素濃度が極めて薄い空気であることが判明した。他にも、愛知県春日井市、リニア建設予定地で陥没事故が発生している。こういうことについても、大深度を工事することについて、様々な影響、不具合が各地で起きていること、これも京都市行政として十分掌握されてなかった、そのことを踏まえてどう考えるのかっていうことについても具体的なお答えがいただけれなかったのが9月議会の様相だった。こういうことひっくるめて全部、市民の生活環境を守るっていうのが京都市行政の責任じゃないのか。そういう点についての影響は何ら心配されていないということか。

(→中村・環境政策局環境企画部環境技術担当部長)大深度地下については、現時点においては、「今後必要であれば利用を検討する」とされているところ。鉄道運輸機構において、利用検討されることとされた場合には、平成13年4月3日の閣議決定において「大深度地下の公共的使用に関する基本的方針」に基づき、同方針で示されている地下水施設設置による地盤変異、化学反応、掘削土の処理などの各事項踏まえ、環境影響評価が進められ、必要な方策が講じられるものと認識している。

◆加藤あい議員/まあ何聞いても同じなんでもういいですけど、もう一つこの陳情の中に書いてあるのが、「額も分からないのに契約するのは通常あり得ない」というご指摘。これは社会一般においてもそうだ。「いくらするか分からないけれどもとりあえず購入します」なんてことはない。議会でいろいろ議論していても、行政のあり方として、「コストは分からないけどやります」なんて事業はない。そういうことをいろいろ検証して、ほんとにこの事業が妥当性があるのか検討したうえで進むのか、いや引き返すのか止めるのか、っていうことを決めていくのが、当然の行政の姿だと思うが、このご指摘についての認識はいかがか。

(→奥井・総合政策室長)本市においては、京都府や国とも連携し、コストの徹底した縮減と費用負担軽減のための措置を国に対して求めてきている。国においても、運営主体となるJRが鉄道運輸機構に支払う貸付料の支払期間の延長など、費用全体にかかる議論が進められている。ここについては冒頭ご説明した通り。整備事業費や費用負担等については、環境影響評価に基づく手続きを経て、詳細計画が固まった段階で示されるものと考えているが、引き続き京都府等とも連携し、国に対して地元負担軽減のための財政措置等を講じていただくよう要望していく。

また、整備新幹線にかかる事業費負担の考え方については、必要となる環境影響評価にかかる現地調査を全て実施し、事業を進める国や鉄道運輸機構が駅の位置やルート、構造・施工方法など結果が出るというのは先ほど申した通りだが、そういう計画が定まってからでないと明らかになるものではないので、地方負担が明らかにならないと円滑な整備に向けた議論ができないというのは、新幹線の整備においてはふさわしくない態度だとは考えている。

◆加藤あい議員/一般には、事業予算総額が分かったうえで効果を検証し進むかどうかを決定するけれども、新幹線の整備においては総額が分からなくても進むのが当然という認識か。

(→奥井・総合政策室長)北陸新幹線、整備新幹線の整備については、先ほど申したように、アセス調査が終わって詳細な計画は示されてから、整備費用の全額や負担のあり方が定まってくるので、順序として、円滑な整備に向けては、その後に、整備計画が決まってからその後に費用負担等の考え方ができるという仕組みになっているということ。

◆加藤あい議員/仕組みは知ってるんですよ。もう何回も聞いてきたんで。その仕組みの下で、総額分からなくても進むっていうのが妥当だと行政は判断してるんですかって聞いてるんです。

(→奥井・総合政策室長)そこは先ほどからこれまでから申している通り、これから調査が始まろうとしているので、その中で適宜、我々も出てきた調査の結果に基づき、専門家の意見もうかがいながら、適宜必要な意見をしっかり述べていくという態度には変わりはない。

◆加藤あい議員/いやだからね、進むという方針ありきじゃないか。そのことを聞いている。

(→奥井・総合政策室長)円滑な整備に向けて進めているということを申している。

◆加藤あい議員/つまりコストは分からなくても進めるという姿勢だ。それは陳情者の方が指摘されている通り極めて無責任だと思う。環境影響評価のあり方についても陳情に書いてある。「環境影響評価とは、重大な影響が懸念され、それが払しょくされない場合、その修正や見直し、程度によっては事業計画自体の中止、撤回に及ぶ可能性も含めてのことだと思われる」と。市民の生活環境に責任を負う京都市行政として、今の法律の枠組にとどまっていてはならないというご指摘だ。単なる騒音とか振動とか狭義の環境影響評価にとどまらない、防災やまちのあり方という広義のトータルなまちづくりと暮らしそのものへの影響をとらえて、本当にいるかどうかを検証するのが京都市の役割じゃないかと、だからこの結論として、京都市行政の責任として、市長が計画の全体像を市民に明らかにする責任があるんじゃないかと、言っておられる。ここをどう考えるかだ。仕組みをくり返し説明する、法律はこうですとくり返し言われる、でもそれでは不十分じゃないかという陳情が出されている。そのことについてどうお考えか。

(→奥井・総合政策室長)北陸新幹線については、利用者の好調な推移や、沿線地域に大きな経済波及効果が表れるなど、京都の経済や社会活動が大いに活性化することが期待され、港も空港もない京都が、京田辺市付近から大阪・関西圏に向けて、また、北陸圏から首都圏に向けて、短時間に大量の人数を一度に運べて、日本全国と結ぶ高速鉄道であると考える。また、国内で自然災害が発生する今日において、東海道新幹線は建設から50年以上が経過しており、南海トラフ地震など有事の際には東海道新幹線の代替路線の機能も有するものになりうるものと考えている。

北陸新幹線の延伸については、将来世代の財産として、京都のまちの発展につながる貴重な社会資本であると認識している。一方で、その整備にあたっては、事業を進める国や鉄道運輸機構が、駅の位置やルート、構造・施工方法などの事業計画を、生活環境や自然環境への影響に十分配慮して定めることが極めて重要であると考えている。引き続き、今後の環境影響評価の各段階において、京都市環境影響評価審査会で、各分野の専門家の先生方にご意見もいただいたうえで、本市として必要な意見をしっかりと伝えていきたいと認識している。

◆加藤あい議員/北陸新幹線の延伸をめぐっての我が会派の見解はくり返し機会あるごとに述べてきたが、どこまでも「延伸ありき」、その下で全体像の明示についても必要ないというスタンスでおられることについては、絶対認めるわけにはいかないと申し上げておきたい。

2019年12月23日【総務消防委】総合企画局/陳情審査「北陸新幹線計画における全体像の明示」について

(更新日:2019年12月23日)