「市民の血税でステマ」は許されない、京都市は「住民の福祉の増進を図る」責務に立ち返るべき(2019年11月5日/総務消防委・総合企画局・加藤あい議員の質疑メモ)

◆加藤あい議員(共産)/吉本興業グループ企業との広報に関わる契約について、新聞報道で、るる報じられている。まず確認したい。今回問題になっている件、具体的な委託契約は「国際映画祭2018に向けた取組」、つまり、「映画及び京都市の重要施策の周知・振興を目的とした委託契約」に基づくものということで間違いないか。それから、国際映画祭の主催は実行委員会だが、京都市が支援している。運営は「株式会社きょうのよしもと」。ホームページで見ると吉本興業ホールディングスのグループ企業28のうちの一つ。加えて、先ほど述べた委託契約を結んだ相手も「株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー」、これも吉本興業のグループ企業。この一連は間違いないか。

(→市長公室長)今の二点についてはおっしゃった通りで間違いない。

◆加藤議員/全国的には大阪など、かなり高額な包括協定を自治体が吉本のグループ企業と結んでいるところがあると聞く。たくさんの市民の方からも批判のご意見がうちにも来ている。今回の一連の問題で、「京都市においても吉本興業グループ企業との関係性について疑義がある」というご意見もある。今年度もクロスメディア広報を吉本のグループ企業に委託していると聞いている。いったいどうなのかということも十分に見ていく必要があると思っている。資料として、総合企画局が今年度吉本興業と結んでいる契約について、入札結果の報告書、契約書、業務完了報告書の提出を求める。

国際映画祭2018関連では、契約日が2018年9月3日、総額が420万。これと伝統産業の日2018関連、これも追加報道があり、契約日が2018年1月25日、金額が216万円。2回に渡って同種の契約があった。事前に資料をいただき委託契約書を見せてもらった。「委託する事項」は、ツイッターのことだけではなく、国際映画祭のほうは「6項目」ある。「パリの夕べに所属タレントを派遣する」「市民しんぶん、市民ニュースにタレントが登場する」など。伝統産業のほうは「4項目」。あらためて読んで思ったが、そもそもどのタレントさんを起用するのかも書いてない。京都市とよしもとクリエイティブ・エージェンシーが協議のうえで決めると。だいたい広報するときに、倉木麻衣さんとか、ああいう方を京都市の広報にっていうのはよく理解できるが、誰かを特定しないで広報にっていうこと自身もどうなのかという感想を持った。それから、よくよく見ると、国際映画祭2018関連の契約書には、「国際映画祭期間内に市に委託された業務を行う」という表記もある。これも「協議のうえで」やるんだと書かれている。何やるか分からないけどやりますってことが書いてある。何だか不透明だなあと感じる。こういう中に「20万人のSNSフォロワーを有する吉本所属のタレントがSNSで発信する」というのが入っている。何項目にもわたる委託の中の一項目。そして総額しか明記がない。全体としてこういうあり方はいかがなものか。この点について認識を聞いておきたいのと、今回の委託項目はどなたの発案なのか。京都市なのか、吉本さんなのか。

(→市長公室長)まず資料請求については、今年度の請求なのでまだ事業完了していない部分もある。その分については完了報告はないが、出せる範囲で出させていただく。

大きな点として、吉本さんとの契約においてタレントが決まってない状況で契約しているのがいかがなものかという点だが、芸人さんのスケジュールに我々がPRしていただきたい日が合うかどうか、国際映画祭への出演内容とそこに出ていただく方、伝統産業の日では花月で講演していただいているので講演に出ていただく芸人さん、それをできるだけ広報でもPRいただきたい等々、契約時以降に決まる要素もたくさんあり、こういったことから契約時に芸人さんを指定することはできないというのが実情。できるだけ効果的な芸人さん、それから広報とのマッチングをして効果的に発信できる方をということで協議しながら最適な方をお願いするというのが我々の認識。

今回の発案について、吉本の芸人さんによるSNS発信については、吉本様のほうからご提案いただいている。それも含めて、京都市と吉本のほうで協議しながら、いかに国際映画祭をPRしていくか、京都市の重要政策をそれに合わせて発信していくか、ということを考えたうえでの内容となっている。

◆加藤議員/不透明じゃないかという話について、吉本興業のグループ企業の側の事情、タレントさんをどういうふうにするのか、そのことについては詳しく説明があったが、公金を使っての広報である。京都市の広報としてどういうイメージで行くのか、どういうものがふさわしいのか考えたとき、向こうさんの事情ではなく京都市の側で本当に妥当なのか検証できるような状況で契約結ぶのが当たり前じゃないか。

大きな二つ目として聞きたいのは、今回の件が「ステルス・マーケティング」にあたるのではないかということ。いわゆる「ステマ」。ステマにあたるかどうかの判断を契約履行の前に、京都市としては十分検討されたのか。十分検討されたうえで、これはステルス・マーケティングにあたらないという判断をされ契約されたのか。

(→市長公室長)もちろん発信する前に、吉本さんと話す中で、今回の発信方法、これはハッシュタグ(#)というものに、「京都市盛り上げ隊」「市営地下鉄」「ふるさと納税」「映画祭」等々、京都市の関連する事業を列挙しており、この表記によって広告主との関連性は一定表示できるというような双方の認識のもとに行ったもの。

◆加藤議員/ステマにあたるかどうかという判断をされたということでいいか。

(→市長公室長)はい、しております。

◆加藤議員/ステルス・マーケティングとは、「消費者に気づかれずに宣伝広報行為を行うことである」と。「芸能人等影響力を持つ人が事業者から報酬を得ていることを明示せず、あるいは、事業関係者が消費者を装い、商品・サービスを高評価する方法」と言われている。これどうかなあと思う。ステマの定義については判例がある。平成27年7月28日、東京地方裁判所の判例で「消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること」、これにあたらないか。今回のことは。

(→市長公室長)できるだけそういった誤解を避けるために、今回においては、例えば、民間の広告代理店さん等が加盟されている協議会が定めておられるガイドラインなどを参考に、具体的にはハッシュタグ、アンバサダーという表示が、これを表示することで広告主との関連性を明示したというふうに認められるということから、今回「京都市盛り上げ隊」というハッシュタグ付いているが、この表記がこれに準じるものと、いうふうに考え発信したもの。

◆加藤議員/判例にあたるかどうかは答えられないのか。

(→市長公室長)判例そのものに合致するというふうには認識していない。

◆加藤議員/ステルス・マーケティングの問題、アメリカやヨーロッパでは法規制が実際にされている。アメリカ連邦取引委員会(FTC)が2009年に、依頼者と発信者の関係性を開示する義務を法整備。違反したら広告主が法的責任を負うことになっている。現在、日本の法規制は、「ステルス・マーケティング=違法」というとこまでいってないが、消費者庁のガイドライン「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の中で問題とされている例として、「口コミサイトにおけるサクラ記事など、広告主から報酬を得ていることが明示されない書き込み」というのもある。

日本弁護士連合会は2017年に「ステルス・マーケティングの規制に関する意見書」を出している。「不当景品類及び不当表示防止法の第5条第3号に基づく内閣総理大臣の指定に追加すべき項目」をあげている。法規制の対象にすべきという大きな趣旨のもとで、「事業者が第三者をして表示を行わせるにあたって、金銭の支払いその他の経済的利益を提供しているにもかかわらず、その事実を表示しないもの」、これを加えるべきと求めている。重ねて聞くが、日本弁護士連合会が言うところの「金銭の支払いその他の経済的利益を提供しているにもかかわらず、その事実を表示しないもの」に、今回の契約、事案はあたらないのか。

(→市長公室長)いまご指摘の日弁連さんの問題提起については「中立的な第三者の意見であるかのように誤認されること」そのものを問題視されているものと考えており、今回の我々のツイートについては、先ほども申し上げた通り、「盛り上げ隊」というものをもって一定のそういう関係性を示しているものと認識している。ただ、今回多くの方から、「京都市の広告であることが分からない」というようなご意見も多々、ご批判も数多く頂戴している。こうしたお声をしっかり受け止め、多くの皆様にご理解いただけるような発信の仕方を検討してまいりたい。

◆加藤議員/「京都市がやってる広告だということが分からない」という市民の意見を踏まえたいとの答弁だが、今回一連の、るる述べたような、「疑惑をまねくような行為を自治体としてやった」という自覚はあるか。

(→市長公室長)我々は先ほども申したように、一定の認識のもとに、考えて発信したというふうに考えている。

◆加藤議員/もう一点、先ほど答弁の中にあった、消費者間のコミュニケーションのマーケティングの業界が出しておられるガイドラインに関わっても確認しておきたい。いわゆるWOM、ワード・オブ・マウスの略語、つまり「口コミ」だが、それに関わる、そこを活用してビジネスをやっておられる業界が、その活用に関わるガイドラインを策定しておられる。先ほどそのガイドラインに照らしても問題ないという話だったが、私このガイドライン見て、これを物差しに見たら「アウト」だと思った。「情報発信者に対して、WOMマーケティングを目的とした重要な金銭の提供などが行われる場合は、情報発信者に関係性の明示を義務付けなければならない」と、その関係性の明示は「主体の明示と便益の明示」両方いるんだと。それが「情報受信者に容易に理解できる方法」で行われるべきだと。今回のツイート見さしてもらったが、京都市がお金を出して広報としてツイートされてるってのは、どう読んでも見れないですわ。便益の明示ってのは「金銭などの提供があることの明示」がいるとガイドラインに書いてるでしょ。つまりさっきあった「京都市盛り上げ隊」「京都国際映画祭」「コラボポスター」「京都市営地下鉄」「京都市ふるさと納税」などのハッシュタグ、これを見ても、京都市の広報だってことはわからない。ガイドラインで言えば「ステマ」になるのではないか。

(→市長公室長)ご指摘のガイドラインの読み方だが、我々としては「主体の明示」以外にも「便益の明示」も含めてこのアンバサダー表記というもので、代えることができると、いうような形で理解さしていただき、それを参考に判断さしていただいたということ。

◆加藤議員/「便益の明示」にならないですよね。今回のツイッター見て。実際にわからないですもん。「京都市の広報だ」って。先ほども言った通り、「法律違反直ちに」とはなってない、日本では。しかし、WOMガイドラインなどつくって、業界あげて自主規制が行われてる。ユーチューバーの方が所属されてる会社でも、企業として宣言され、金銭を受け取って広告するような場合はそのことをちゃんと明示していくとうたっておられる。企業倫理が問われる問題。そのことを京都市との委託契約において、京都市が「これはどうかな」との判断を働かせられていないことは重大だ。「今後のあり方は市民の意見踏まえて検討する」と言われたが、あらためて聞きたいのは、あり方の再検討を迫られるようなことに何でなったのか。京都市として何が原因でこういうことになったのか、お考えはどうか。

(→市長公室長)何分新しい分野での情報発信の方法で、我々としても様々な広報媒体を使って様々な手法で効果的に広報をしていきたいという思いのもとに、今回のこういったツイートによる広告に取り組んだ。表記方法等、注意しなければならないというご指摘、市民のみなさんからもご指摘多くいただいている。今後しっかり、そういう市民の目線、業界のみなさんの認識、自治体広報がどうあるべきか、いうようなことはしっかり踏まえた広報を展開していきたい。

◆加藤議員/心配するのは、社会的に「不適当」であろうという行為を、公金、市民の血税を使って進めるっていうことを自治体がやる、このことについて「民間のノウハウを活用する」流れの中で、そちらが優先されてるからじゃないかと。吉本さんが持っておられるノウハウを生かす、そのことが最優先になってるんじゃないか。京都市はいつも「民間にできることは民間に」と言われるが、そういう大きな流れの中で、いやいや待てよと、ちょっと考えなければならないと、いうブレーキがかからなくなってるんじゃないか。

(→市長公室長)我々の広報で民間に頼る部分もあるし、我々自身がいろいろと仕掛けていく部分もある。特に芸人さんの強力な発信力、これに一定頼る広報も一つのあり方としてやってもいいんではないかと考えている。要はバランスと経費が適正かどうか。今後ともしっかりそういった視点のもとに広報転換してまいりたい。

◆加藤議員/京都市は一般企業ではない。税金で仕事をしている。公金、市民の血税をどう使うのかということでは、あらためて厳しい判断が求められる。「住民の福祉の増進を図る」という責務にぜひとも立ち返っていただきたい。

2019年11月5日【総務消防委】総合企画局/一般質問「吉本興業タレントによる本市施策に関するツイートについて」

(更新日:2019年11月05日)